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109 リアナ聖女の置き土産

 ライガーンは、ぼくの走り込みをやってみた感想に耳を傾けてくれる。


「騎士団員の人に聞いたらさ、リアナ聖女、まぁ姿はぼくなんだけど最初は全然走るのも遅いし、体力がなかったんだって。今日、ぼくが走ったら、『あれ? また体力落ちましたね、以前よりかはマシですけど魔力植物調査会で怪我してまだ体力回復していないかもしれせんね』って言うんだ。今日、結構、調子良かったと思うんだけど、意外とリアナ聖女は定期的に走って、ぼくの筋力が落ちないように努力してくれていたんだなって実感したよ」


「そうなのですね。実は、私もアーノルド殿下ではない別の人物が殿下の身体の中にいるとわかって、彼女を一人で走らせるよりか顔見知りでもいた方がいいかと思い、騎士団員の方にこっそり走り込みの並走にお付き合いいただけるようにベン騎士団長にお願いをしていたんですよ」


「なんだ! そうだったんだね! ラーン帝国に来たばかりで馴染めずに一人で寂しく走っていたのかなと少し思っていたよ」


 ぼくは、ライガーンがきちんとリアナ聖女のフォローをしていてくれていたことを嬉しく思った。


「次に驚いたのはね、騎士団員たちがすごく気さくに話かけてきてくれるんだよ。以前のぼくには……立場上のこともあって騎士団長以外が話かけてくることなんてなかったのにさぁ……不思議だよね。どうやって、リアナ聖女は騎士団員と仲良くなったのか知ってる?」


「えぇ、彼女は王族ではありませんでしたので、もともとの自分らしく挨拶をされる前に自分から騎士団員に挨拶をしていたみたいですね。あとは騎士団員に並走をお願いしたのもあって、騎士団員も殿下と会話しようと努力してくれていたんだと思います」


 そうか。以前のぼくなら挨拶はしていたけれど、無表情だったし……自分からどんどん積極的に挨拶をするということはしたことがなかった。


「これは……リアナ聖女がぼくに残してくれた、置き土産だね」


 昔のぼくなら、淡々と訓練をするだけだったけれど、今日は走り込みがとても楽しかった。騎士団員が話しかけてきてくれるし、ぼくの怪我のことも心配してくれていた。人との心の距離は遠ざけることもできるし、近づけることもできるのだとリアナ聖女が残してくれた環境で、体験することができた。


「ライガーン、しかもね。走り込みの後の雑談がすごいんだよ。城下町のレストランの新作メニューとか、生まれてくる子供の名前が決まらなくて迷っているとかさ……すごくしょうもないと思っていた情報なんだけど、みんなが『アーノルド殿下、聞いてくださいよ~』って言いながら、話してくるんだ」


 ライガーンは、ぼくの目を見ながら嬉しそうに話す内容を聞いていてくれる。


「ぼくね……気が付いたんだ。彼らの話す情報の中にも貴重な情報が混じっているって。例えば、レストランのメニューでも鶏肉と卵を扱ったメニューだけが価格が上がっているとかさ」


「鶏肉と卵ですか?……それは、私も存じませんでした。何かあったのでしょうか。一度、調査してみます」


 ライガーンは、ぼくの話を聞きながらメモを取ってくれている。

 すぐに調査依頼をしてくれるとても頼りになる側近だと、ぼくは再びライガーンの能力の高さに感謝した。


「だからね、傍にいる人ともっと会話をすることで、今まで見えてきていなかった世界が広がるんだなってリアナ聖女に教えてもらうことができたよ。彼女の人柄もあったんだったんだろうね」


「そうですね。よく笑いよくしゃべる女性でしたね。見た目はアーノルド殿下でしたがね」

「ははははは。リアナ聖女がたくさん笑って、顔の表情筋をほぐしてくれたみたい。今はね、すごく自然に笑えるんだ」


 ぼくと、ライガーンは20年前の時代からやってきたリアナ聖女が、ぼくに残してくれた素晴らしい人間関係と環境を引き続き、大事にしたいと思うようになっていた。



お読みいただきありがとうございます。

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