10 アーノルド殿下との出会い
静かに息を潜めて、どれくらい経ったのだろう。
どうやら、先ほど扉の外で声をかけていた若い男性は、私が寝ていた寝室に入ってきたようだ。
「殿下~。どこですか」
どうやら、まだ殿下を探しまわっているようで、室内を歩き回っている足音が聞こえる。
私は、早くこの男性が探している殿下とやらが現れて、2人そろって退出した後、一刻も早くこの逃げ場のない狭いクローゼットから脱出したいと考えている。
「ここかなぁ~」
歩き回りながら、声を出して探す男性の声が近づいてくる。
アーノルド殿下とやら、早く姿を出しなさい! と不敬に当たる声にならない感情を心の中で叫ぶ。ここで不審者として、私が捕縛され、罰として処刑されようものなら、それこそ顔も知らない殿下を恨んでしまうに違いない。
私は、クローゼットの角にできるだけ小さく足を折り曲げたその瞬間。
ガチャ ガチャ
両開きのクローゼットが開け放たれる。
「誰だ!」
ついに若い男性に見つかり、泣きそうになりながらクローゼットの衣類をかき分けて、うつ向きながら出てくる。
(くっ、どうしてアーノルド殿下は出てきてくれなかったのかしら。そうすれば、私が見つかることも無かったのに・・・)
「なーんてね。かくれんぼはお仕舞いですか?」
すぐに不審者の私を捕らえないどころか、眩しすぎるみたこともないくらいの美丈夫が私に微笑みかけている。不審者にかくれんぼなどと表現するなんて、私のような非力な小娘は、簡単に捕らえることができるから、笑顔で対応してくれるような心の広い人なのだろうか。
「さぁ、早く身支度を整えて下さい」
美しい男性は、私の背中を押し言葉を続けた。
「さぁ、殿下」
(・・・殿下って言わなかった? この人)
いくらなんでも妙齢の女性を男性に見立てる冗談は好きではない。捕らえるなら、さっさと捕らえてちょうだい! と意気込んで、クローゼット横にある鏡を見た。
「ひぃ!」
私の声に反応した、男性が私の背中に手を当てたまま、下から顔を覗き込む。この男性の笑顔も破壊力が素晴らしいが、今はそれどころではない。
だって、鏡に映る私はどこからどう見ても少年で・・・あるべきはずの私の面影は全くどこにも見当たらない。
(コレダレ・・コレダレ・・コレダレ・・)
私は、またしても壊れた歯車のようにガタガタと脳が考えを放棄しようとするのを感じとった。
でも、1つの違和感に気がつく。さっき身体の状態を確認した時は、間違いなく私の手の指であり、足の指だったはずだ。
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