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107 日記と共に

 ぼく、アーノルド・スラサク・ラーンが元に戻って体調も良くなった。


 リアナ聖女が書き残したベルフォン王国語で書かれた日記もあと少しで読み終わる。

 ぼくが、彼女が何をしてきたかと調べているのには……理由がある。


 彼女が入っていた時のアーノルド殿下と、元のぼくがあまりに極端に異なった人物だと周りが違和感を覚えるかもしれないと思ったからだ。


 日記を読んでみたところ、前回、身体が入れ替わった時には

「頭をぶつけたから記憶があまりない」

 と、説明して不可解な行動をとっても……何とかやり過ごせてきたらしい。


 それでも、いつも傍にいたライガーンには、入れ替わりを悟られているし、マヤゴン魔術騎士団長にもバレていた。


 しょっちゅう人格が入れ替わるのも、さすがにおかしいからできるだけぼくはリアナ聖女が演じてくれていたアーノルド殿下の生活を取り入れつつ、少しずつ違和感がないように馴染んでいこうと思っている。


 リアナ聖女の残した日記を手にとってから、もう一つ見つけたものがある。


「何だろう? 」


 何かメッセージとともに綺麗に折り畳まれた紙に何か入っているものを見つけた。

 ぼくは、包み紙をそっと開き、驚いた。


「これって歯だよね?」


 添えてある紙には「おめでとうございます!!」と女性らしい字で書かれている。

 覚えたてであろうラーン帝国語で。


 ぼくは、歯を手にとり思い出す。


「そういえば、リアナ聖女の身体に入っている時に、手で触るとグラグラしていた歯があったなぁ」


 ぼくは、記憶を探る。

 魂しかなくて実体がなかったから、自分で自分の歯を触れた感じでしか確認できなかったけれど、あの時。こちら世界、実体のあるこちらで歯がきちんと抜けていたのだなと理解することができた。


 ぼくは、すでに皇后陛下だった母を亡くしているから心を閉ざしてしまっていたけれど、歯が一本抜けるだけで、成長過程を喜んでくれる人がいることに気が付いた。


「なんだ……ぼくが気が付いていなかっただけで、きちんとぼくのことを見てくれている人は……いたんじゃないか……」


 今までだって、ライガーンも「おめでとうございます!」って、成長する度に一緒に喜んでくれていたのに、勝手に誰もぼくの成長を喜んでいないのではないかと思って、塞ぎこんでいた自分がいたことに気が付いた。


「リアナ聖女も……ぼくの成長を喜んでくれていたんだな」


 見守ってくれている人がいるなんて、全然、気が付いていなかった。

 こんな幸せなことなんてないはずなのに、何てもったいないことをしていたんだろうと以前の自分を責めた。


「よし。気持ちを入れ替えて、リアナ聖女の演じていたアーノルド殿下と同じような日課をしばらくはこなしていかないといけないな!!」


 ぼくは、こうしてリアナ聖女の習慣を引き続き行うことにした。



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