105 ライガーンからの報告
体調がこんなにも悪い状況について、ライガーンはぼくの枕元で何が起こっていたのかと時系列にそって延々と説明をしてくれている。
リアナ聖女がシブロン第四皇子をかばい、命を助けようと必死に身体で守ってくれた時に、額の傷口から有毒な水を体内に取り入れてしまったということをライガーンが教えてくれる。
あと、ぼくとリアナ聖女の入れ替わりに気が付いていたのはライガーンとマヤゴン魔術騎士団長の二人だけだと思われる……ということも。
リアナ聖女は、ぼく、アーノルド殿下の身体にいるからと、風魔法やら剣術、馬術、弓など何でも身に着けようと努力していてくれたらしい。彼女の人並ならぬ努力があったからこそ、弟のシブロンもアーノルドのぼく自身の身体も死ぬことがないように最大限尽くしてくれていたのだと聞いて、直接、彼女にお礼を言えないことを残念に思う。
でも、今回の魔力植物調査でシブロンもぼくもどちらとも命を狙われたということは間違いない。魔物による被害で、重傷者が多数出てしまっていることにも胸が痛んだ。
「殿下。今、誰が仕組んだことなのか調べておりますが……シブロン殿下の聞き取りにより、魔物を呼び寄せる鉱石をシブロン殿下に渡した者がいることがわかりました。シブロン殿下に渡した騎士には接触できたのですが、その者の記憶が定かではなく、誰から渡されたのか記憶が不鮮明で特定できません」
「それは、誰かが記憶を操作する魔術か、魔法かそういったものを使用したということなのかな?」
「そうですね。悪意のある者が意図的にシブロン殿下が狙われやすい状況を作りあげたのだと考えられます。それ以外にも、シブロン殿下が配置されていた第四区域にも魔物が興奮状態になっておびき寄せる魔石が仕掛けてありました」
「そうなんだ。第四区域にいた騎士がみんな助かるといいのだけれど」
「そうですね。救護所にいた者で回復魔法を使える者を第四区域に多数送りましたので、助けられる命も多いと思います」
ぼくは、魔物に襲われながらもシブロンをかばって、生き延びようと必死になってくれたリアナ聖女のことを考える。
ちゃんと戻れただろうか……。二十年前のベルフォン王国に……。
ぼくから確かめることはできないけれど、今はそう強く願っている。
もし、入れ替わることができているのなら、目覚める場所は……恐らく自室のベットの上のはずだ。
魔物に襲われた恐怖と、疲労で精神的にまいっていると思われるけれど、今のぼくには手を貸すことができない。
シャーリー聖女たちがいるなら……大丈夫かな。
アーノルドとして生きていく人生は窮屈だったに違いない。少しは穏やかな生活を送れるようになるといいなと思う。リアナは聖女だから、怪我をして発熱したぼくとシブロンの安否をずっと心配し続けてしまうような気もするけれど、双方の無事は確認できないから……考えるのは、やめておくことにした。
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その後、負傷した騎士たちの治療と、ぼくを運んでも問題ないと判断したライガーンたちと共に、ぼくは帰城した。




