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103 幸せな夢

第二部が始まりました。

どうぞ宜しくお願い致します。


ラーン帝国でシブロン第四皇子と共に魔獣に襲われたアーノルド第三皇子が発熱して治療を受けていた間に、いつの間にか中にいたリアナ聖女の魂が消えてしまう。

リアナ聖女の魂は一体、どこに行ってしまったのだろうか。

 ぼくは、アーノルド・スラサク・ラーン。

 ラーン帝国の第三皇子で、今はベルフォン王国のリアナ聖女の身体の中にいる。


 彼女の身体の中に入ってからは、皇族として体験できなかったことがいくつもできて、それなりに充実した日々を送っていた。


 リアナ聖女だというのに、残念ながら回復魔法は現在、使えない。どうやら、アーノルドの身体と、互換性のある魔法の属性でないと使えないようだった。でも、リアナ聖女がアーノルドと同じ風魔法の属性も持ち合わせていたおかげで、リアナ聖女として回復魔法で医院の仕事は手伝えなかったけれど、風魔法を駆使した仕事をこなすことで、お給金をいただき生活することができていた。


 いつ元のアーノルドの身体に戻れるのか、しかも同じ時代ではなくて、ぼくがいた時代よりも20年前の世界に来ているとわかって、途方に暮れていたけれど、それでも楽しくリアナ聖女として生きてきていた。


 そんな聖女として身代わりに働く日常が繰り返されるようになっていた。

 いつものように仕事が終わり、リアナ聖女が使っていた部屋でベットに入り目を閉じてからどれくらい経っただろうか。


 ドクンッ


「うぅ……」


 ぼくは、さっきまで問題なかった身体に異常を感じる。

 き、気分が悪くて目がまわっているようだ……。しかも、いきなりの発熱……。


「はぁはぁはぁ」


 傍にある枕を引き寄せてうつぶせになり、顔をうずめて呼吸を整える。

 胸もムカムカしているし、頭もぐわんぐわんと鐘が鳴り響いているような感じもあり、目が開けられない。ひとまず、目をとじたまま、この気持ちの悪さがとれるようにやり過ごすことに集中する。


(こんなに、急に前触れもなく気分が悪くなるものだろうか……)

 そう思ったまま、しんどさのあまり意識を手放した。


 ■■■


 チュンチュン


 遠くで鳥が鳴いているのが聞こえる。


(なんとか……気持ちが悪いのは収まったようだな……)

 いつもの寮より、何となく明るくて眩しい気がしてゆっくりと目を開ける……


(ん……、寮じゃないな……あそこに座ってこちらを見ているのは……ライガーンみたいだ)

 ぼくは、どうやらまだ夢の中にいるようだ。

 ライガーンに会いたい気持ちが募って、夢の中に出てきてくれたらしい。


 ぼくのそばにゆっくりと近づいてくる足音も聞こえる。ん? 二人分の足音みたいだ。


 そんなことを夢の中でまどろみながら感じていると、おでこに冷たいものが置かれたようだ。


「どうやら、熱は下がったようだな」

「安心しました。あとは、解毒薬が出来上がるのを待つばかりですね」

「あぁ……そうだな」


(ん……懐かしいライガーンの声まで聴こえる。なんて……素晴らしい夢なんだ。このままずっとこの夢を見続けていたい。……それに、もう一人の男性の声も……誰だったかなぁ……聞いたことがある声なんだけれど……)


 ぼくは、もう一人の男性が誰か気になる。聞いたことがある声なのに、誰だったか思い出せない。


(ん……誰だったかなぁ……)

 

 ぼくの夢に出ていてくれた、もう一人の男性が気になって、うっすら目を開けてみる。

(……あぁ、あれは騎士団長の制服だ……あの横顔は……マヤゴン魔術騎士団長……)

 

 懐かしい二人に夢で会えて、ぼくは感極まってしまい、自然と涙がこぼれて泣いているようだ……。

 自分の頬に温かい雫が流れていくのを感じる。


「……ア、アーノルド殿下……?」

 

 涙に気が付いたライガーンが、昔と変わらない優しい声で呼びかけてくれる。

 彼に涙を見せたのは、母が亡くなった時以来だろうか……。

 夢の中のライガーンに心配をかけてはいけないから、涙を止めたいけれど……自分でコントロールできそうにない。


 何か柔らかい布で涙を拭きとってくれたようで、頬に流れる雫の感触はなくなった。


(ありがとう……ライガーン)

 

 そう心の中でライガーンにお礼を述べる。

 もう一度、彼の顔を見たらまたゆっくり眠りにつこう。

 

 ぼくはライガーンの顔が見たくて、ゆっくり瞳を開けると……

 そこには、ぼく以上に涙を流しているライガーンの顔が見えた。

 

 彼の泣き顔は初めて見た。夢の中であっても、あまり見たくはない。

 だから一言だけ声をかけよう。


「……どうして……泣いているの……? ライガーン……」

 ぼくが彼の憂いを取り除いてあげたい……そう呼びかけて、ぼくは再び重い瞼を閉じた。


(あぁ……もう少し、ライガーンと会話したかったな。

 もうライガーンは泣き止んだだろうか……。

 またこの夢の続きが見られるといいのだけれど)


 ぼくの身体は鉛のように重たかったけれど、幸せな夢を見られたことで心が満たされた気持ちになっていた。

 

お読みいただきありがとうございます。

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