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9 災難から逃げた先に②

 ベットから降りて、床の上に立つと裸足でいる自分の足元を見下ろし、()()()()足のほくろのある親指をひょこひょこ動かした。


 うん。間違いなく私の身体だ。

 ホッとした私は、安心して肩の力を抜くと、やっと周りに意識が行くようになる。


 何だか毛の長い敷物ね。

 足の指の間からフワフワと感じたことのない初めての触感にドキドキし始める。ベットではなくて、何ならこの敷物の上で眠るだけでも素晴らしい体験ができるような気がする。

 こんな高級な場所なんて私には場違いだし、思い当たらないのだけれど・・・。


 そうだ!まず、状況確認が大事って、孤児院の院長もおっしゃっていたじゃないの!

 そう院長先生の教えを思い出した私は、疑問詞を思い浮かべてみる。

(いつ、どこで、誰が、何をした・・・あとは・・・なぜ、どうやって・・だったかしら)

 これだけの情報を順番に、得る事に注力する。


 それを思い浮かべながら、ふと窓の外の景色が目に入る。


「・・・」

 ココドコ・・ココドコ・・

 自分の頭の中が、壊れかけの歯車のように、見たことがない景色に圧倒され、不安が掻き立てられる。なぜなら、どこまでも見通せる広大な敷地は全て庭園だからだ。しかも、空から舞い落ちる白いキラキラしたものに目が奪われる。とても美しい景色なのは、間違いないのだが、感動よりも自分のいる場所が皆目見当がつかず、気持ちを落ち着かせることができずにいる。


(フッ ひょっとしたら、私はまだ土砂の中に埋まったまま、素敵な夢を見ているのかもしれないわね)

 私は、自分にそうに違いないと言い聞かせ、頬っぺたを思いっきりつねってみる。


 痛い・・・どうやら、夢ではないようだ。つねった頬を強くつねりすぎたわねと反省しながらさすってみた。


(さて、じゃあ、ここは見たこともないどこか・・で・・次に確認することは・・・)

 気持ちを切り替えて、私は自分の足元にもう一度視線を戻してから、目線を上に移す。私は自分の衣類を見て、またしてもギョッとする。


 とてもを肌触りがよく高級でサラッとした素材でできた衣類だ。しかも深い藍色。女性らしいという言葉とは離れた、パンツスタイルをしている。


 何だか、男性のような色合いと格好をしているのね。長いこと寝込んでいたから処置と手当てがしやすい服装を着させられているのかもしれないと良い方に解釈してみる。

(は! ひょっとしたら、女性に見えなかったって可能性もあるのかしら・・・)


 ちょっとだけ残念な考えも入れながら、自分の状況確認は怠らない私を自分で褒めてあげたいくらいだ。


 ちょうど、その時。

 部屋の扉を叩く音がした。


「アーノルド殿下、お目覚めでいらっしゃいますか」


 若い男性の声が扉の外から聞こえてくる。


(アーノルド殿下・・・)

 先ほどの男性の声を頭の中で反芻してみる。


 大変! 私、いつの間にか知らない殿方の寝室に侵入した挙句、不審者として捕まるじゃないの!

 最悪の事態を一瞬にて想像して顔面蒼白になる。誰が、こんな恐ろしい場所に私を寝かして治療したのだろうと、命拾いしたことを棚にあげて、誰かの策略に嵌められたのかもしれないと考え始める。


 ひとまず、この場を何とか逃げ切ることに集中しましょう!! 兎に角、どこか隠れて身を隠さないと!! あの扉を開けられると、私の未来はお先真っ暗に違いない。


 そう考えた私は、目の前にあったクローゼットの扉を開けて、たくさんある男物の衣装を避けて奥の方に身を潜めることにした。



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