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第7話 現場の再現は私のお仕事です・後編

「(いつ仕込まれたのか、あるいは自ら服用したのか。どちらにしても、人外が関わっている可能性は高いまま)……状況的に密室になっただけで、ここで誰かによって殺された可能性は低い、と考えているのは騎士団の総意かしら?」

「そうだ。黒薔薇が開花しなければ、事故死で片付いていた案件だしな」


 イザークは平坦な声で答える。仕事中はあからさまな嫌味がないので、少しだけホッとしている自分がいた。


「密室。……ハッ、部屋のドアノブに鍵が掛かるタイプならトリックを使えば……。ワイヤーとか」

「ワイヤーの使った形跡もなかったし、魔法痕跡もないぞ」

(ナイトメア伯……あくまでゴーイングマイウェイなご様子! ある意味すごい!)


 ナイトメア伯の本心だだ漏れな言葉に、イザークは几帳面に答えを返す。そんなやりとりを応酬は唐突に終わった。何かに気付いたのかナイトメア伯は、イザークを見て目を輝かすではないか。


「バルツアー騎士は、真面目なバロン騎士団長みたいですね。調査もしっかりしていて、ツッコミも完璧です」

「誰だ、それは」


 ジロリと私を睨まないで欲しい。「説明しろ」と言いたげな顔である。何故私が解説しなければならないのか、と不満に思いつつも律儀な私は口を開いた。


「名探偵クロウシリーズに出てくる切れ者の騎士団長様です。ルーシーの幼馴染で、若くして団長にまで上りつめ、司書のルーシーに告白するタイミングを常に狙っている人気なキャラです」

「へぇ……(まんま俺の立ち位置じゃねぇか)」

「ちなみにルーシーを巡っての三角関係で今、良いところなのですよ!」


 言った後で、仕事に関係ない話をしてしまったと、後悔するのだが──。


「は? 何で三角関係になっているんだ? そいつは騎士団長になったくせに、何やってたんだ!」

「わぉ、思いの外感情移入している。……今度、小説貸そうか?」

「いるか! (待てよ? ここで接点が増えれば……)いや、貸せ!」

「え、どっち? (イザークもミステリーの魅力に気付いたのかな?)」

「お前の、を貸せ。参考にする」

(なんの!?)


 イザークは眉間に皺を寄せつつ、一層不機嫌そうな顔で告げた。何故、苦渋の決断みたいな反応なのだろう。


「あーうん、良いけれど? (もしかして仕事のために読むのかな? 勤勉なのは昔から変わらないな。まあ、沢山努力したから、若くして騎士団長になったのだろうけれど)」


 好きな人が夢を叶えたのは、嬉しいことだ。黙っていればイザークは騎士らしいし、寡黙で口は悪いが、将来有望株である。マイナスな点を強いて言うのなら、男爵の三男坊と実家の後ろ盾が弱いことだろうか。

 もっとも未解決事件専門の騎士団特別捜査室の騎士団長となった今、新たな爵位を得ることも容易いだろうし、婚約者に選ぶなら伯爵、侯爵令嬢だって釣り合う。


(……そう考えると、随分と遠くに行っちゃったな)


 片や騎士団長、片や歌姫だけれど借金ありの没落貴族では釣り合わない。

 寂しさと失恋の悲しみに胸が痛むが、その痛みも、慣れてきた。慣れてはいけないのだろうけれど、そうしなければ前に進めないこともあるのだ。



 ***



 老執事や遺族からの事情聴取を終えた後は、いよいよ私の出番だ。浮遊する魔力の残滓は、ここで何が行われたのかを形成するために必要不可欠なものだったりする。


 ここで何があったのか、何がキッカケで黒薔薇は開花したのか。

 謎に一歩近づくため、私は歪んだ譜面をなぞり、歌へと昇華させる。


「──LA■■■枚繧呈◆縺吶k閠◆€ょョカ譌■◇」


 出だしは力強く荘重に(グラーヴェ)。ゆっくりから少しずつ速さをつける(アレグロモデラート)

 伸びやかに、地を這う地響きにも似た激しく、苛立って(アジタート)

 おどろおどろしくも、動きをつけて(コン・モート)──。


「■■縲◆■■■■励◆諢壹°閠◆′豁サ縺ャ縲ょク梧■■■■カ譛■■■■∫・医j縺ッ蜻ェ縺◆◆↓縲ゅ■■■≠縺ゅ€∬ェ■■九€√←縺◆◆°縲ら■■■■◆◆◆諱ッ蟄舌◆縺■■■縺代※縲◆◆」


 私から紡がれた《禍歌》の歌声は、ハッキリ言って騒音レベルだ。

 某アニメのリサイタルと同等だと思ってくれていい。先に弁明しておくが、私はけっして音痴というわけではなく、《禍歌》の場合は、正しく歌うと大抵こうなる。


「ぐっ……これほどとは……」

「音程もめちゃくちゃ、リズム感ゼロで、抑揚の強弱が絶妙な酷さ。裏返るところも含めて素晴らしいですね!」


 そして最大の特徴は魔王を含め魔界の住人、と言うか人外の大半は、この《禍歌》をこよなく愛しているのだ。と言うか、たぶん作曲者全てが人外なのだと思う。

 そもそも《禍歌》の歌魔法は、魔王に捧げるために作られたと言われていたりする。真偽は不明だけれど。


 歌い終わると、奥様とご子息はへたり込んでおり、老執事は耐えていたものの額から汗が流れ落ちているではないか。

 イザークは顔色が悪そうだが、思ったほどダメージは受けていないようで少し安心した。ナイトメア伯は言わずもがな、とても幸せそうな顔をしているので大丈夫だろう。たぶん。



楽しんで頂けたなら幸いです( *・ㅅ・)*_ _))

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(*´꒳`*)


次回はお昼過ぎを予定していきます!

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