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第2話 捻くれた幼馴染みと私の関係

 ***



 ()()()ウヌス。牢と言っても、それなりに整った客室に閉じ込められて一週間が経った。


「あーーー、腹立つ!」


 事情聴取としてあてがわれた部屋に届いた新聞紙を見て、早くも後悔した。誰が『呪われた歌姫』だ!

 新聞の一面を読み終えた直後、くしゃくしゃにしてゴミ篭にポイする。それを見て「品がない」と窘めるのは、幼なじみの騎士団副長イザークだ。

 黒の騎士服はムカツクほどよく似合っている。


「そんな短慮だから付け入られるんだろうが」

「うるさいわね!」


 このイザークという男は、濃紺の長い髪を無造作に一つ結びで束ねていて、鳶色の眼光は常に怒っているか不機嫌だ。整った顔立ちなのだが、無表情だから余計にそう感じるのだろう。

 私よりも四つ上なので、上からの物言いも多い。


 無愛想だが騎士団の中では二十三歳で騎士団副長である。男爵家の三男坊だったのに、えらく出世したものだ。なぜそこまでこの男のことを知っているのかと言えば、幼なじみで、ムカツクことに初恋の相手でもある。その過去をできるだけ速やかに消し去りたい。


(よりにもよってなんで、事情聴取の相手がイザークなのよ!)

「それで、ヴァイオリンの演奏者が黒い茨を生やして《歪曲》を披露したが、お前の歌魔法で相殺されたので尻尾を巻いて逃げた──だったか」

「そうよ。あれは禁忌演奏曲の一つ。遙か昔に使われていた人外召喚の儀式曲だわ」

「だからってお前が歌魔法を披露した後、人外と対峙して勝算はあったのか?(なんでコイツはいつも無茶を……。俺の寿命をどれだけ縮めれば気が済むんだ!?)」


 イザークは片眉を吊り上げて私を睨んだ。苛立った声音にこちらもカチンとくる。

 そうやっていつも、いつも癇に障る言い方ばかりをするのだ。


「(昔はもっと心配とか、気遣ってくれたけれど……。それを期待してもしょうが無いわね。私はもう()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())……悪い? それが最適解だと思ったからやったのよ?」


 私の言葉にイザークはますます険しい顔で睨む。そんな圧には屈しないのだから。


「(俺たち騎士団の到着を待つこともせずに、何かあったらどうするんだ?)……だとしても、軽率な行動だったな。それに犯人を取り逃がしてもいるじゃないか」

「私は歌姫であって、騎士団じゃないのよ。無償でその場の浄化を優先したのだから、謝礼が出ても良いと思うけれど?」

「また金か。……本当に、歌の次は金だな(そんなに金に困っているのなら、なんでいの一番俺に相談をしないで、あのオーナーに頼るんだ!? ああー、思い出したら腹が立ってきた!)」


 軽蔑した目に胸が痛む。別に金の亡者になったわけでも、贅沢したいわけでもない。オーナーが肩代わりしている借金を少しでも減らしたいからだ。それに早く独り立ちもしたい。


 それなのに、いつからかイザークは私のことを「悪女」と罵り、「徒花だな」と目で蔑む。そりゃあ没落して、歌姫になるまでは平民だったけれども。


「お金は大事よ。金銭に余裕がある騎士団様は、その苦労なんか知らないでしょうけれどね。両親のことで大変だった時のことを知らない人間に、とやかく言われる筋合いはないわ」

「なっ!?」


 つい言葉が滑る。本当はもっとちゃんとしたいのに、イザーク相手につっけんどんな態度しかとれない。

 そんなんだから「可愛気がない」と言われるのだ。


 私たちの関係は拗れて歪んだまま──。

 しかし不穏な空気は唐突に終わりを告げる。


「おいおい、話が脱線しているじゃないか! イザーク。彼女は功労者であって、容疑者じゃない。それなのに何故、彼女を責めて、挙げ句の果てに険悪になっているんだ!?」

「団長」

「ロバート様!」


楽しんで頂けたなら幸いです( *・ㅅ・)*_ _))

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