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幼なじみを追いかけて、異世界転移します  作者: お化け屋敷
プロローグ
7/8

ランクアップ試験と依頼の山

誤字脱字多いかも。一人称視点から三人称視点に急変更したので、ちょっとおかしな描写あるかもしれませんが、ご容赦を

物語はかなり早く進んで行きます


 朝一番でリュウスケは冒険者ギルドに向かった。何しろ彼は無一文だ、さっさとランクアップ試験を受けて、その後依頼をこなして金を稼がなければならない。地球と異なり、この世界には段ボールが無いから野宿は辛いのだ。


「ランクアップ試験って、どこで受けるんだ」


「ああ、昨日の人ですか。早いですね。少々お待ち下さい」


 朝早く訪れたリュウスケを見て、受付嬢が驚くが、受付嬢も朝から仕事をしている。アンジェリカといい、この世界の住人は全員ワーカホリックかもしれない。


「こちらで試験を受けて下さい」


 リュウスケが通されたのは、冒険者ギルドの奥にあるグラウンドのような場所だった。天井も無く空がよく見える。そこで彼を待っていたのは、ギルドマスター(化け物)だった。


「試験って誰かと戦うと聞いた。俺はいったい誰と喧嘩すれば良いんだ」


 まさか「ギルドマスター(化け物)が相手だ」とは言わないだろうとリュウスケは思っていたが、その予想は外れた。ギルドマスターの手には、何時の間にか巨大な剣が握られていた。刃がほとんど無いので、剣と言うよりは鈍器に近い巨大な金属の塊だ。


「素手か。そこの壁の棚から、好きな武器を使え」


「ちょっ、その声」


 ギルドマスターが喋ったと思ったら、まるで小鳥が喋っているような綺麗な声だった。ギルドマスター(化け物)の口が動いていなければ、リュウスケは彼の後ろに少女か小鳥がいるのではと思ってしまっただろう。


「うるさい。早く選べ」


 ギルドマスターが無口なのは、この声質が原因だった。ギルドマスターも自分の声が嫌いなのだろう、リュウスケが驚いている事に苛立っていた。


「分かった。だが俺が使う武器はこれだ!」


 リュウスケは愛刀を学ランの袖口から取り出した。アンジェリカとの旅で、数多くの魔物を殺してきたが、木刀には傷一つ、汚れも付いていなかった。


「何だそれは?」


 ギルドマスターは、リュウスケが愛刀を取り出した事に驚いていた。アンジェリカと同じ反応だ。


「俺の愛刀(相棒)だが」


「いや、それをどうやって取り出したのだ。もしかしてお前は収納スキル持ちか?それともその服がそうなのか?」


 旅の間にアンジェリカにも尋ねられたが、リュウスケはそんなスキルなど持っていない。


 アンジェリカの話では、この世界にはスキルと呼ばれる能力を持っている人間がいる。スキルの種類は様々だが、アンジェリカの魔法も一種のスキルだ。そのスキルという能力の中には、収納スキルという便利な能力がある。まあ青い猫型ロボットのポケットと同じように、様々な物をしまっておける能力だ。その収納スキルと同じ事が出来る魔法のアイテムもあるが、もの凄く稀少な物らしい。召喚された勇者は、その収納スキルを普通に持っている。


「俺は収納スキルなんて持っていない、それにこの学ランも普通の服だ。俺がこいつ(愛刀)を出し入れできるのは、こいつが特殊なのと、気合いで押し込んでいるからだ。だからこいつ(愛刀)しか収納できないぞ」


「…そうか。それで本当にその木刀(・・・・)で俺と戦うのか?」


「大丈夫だ、問題無い」


 ギルドマスターはリュウスケの木刀(愛刀)を見て、再度確認してきたが、リュウスケは、愛刀以外の武器を使うつもりは無かった。


「分かった、では試験を始めるぞ」


「おう、かかって来いや」


 ギルドマスターが巨大な剣を持って、リュウスケに突進して来た。ギルドマスターは見上げるほどの巨体だが、その脚力はオリンピック選手以上であった。アンジェリカも早かったが、その数倍の早さでギルドマスターはリュウスケの懐に入ってきた。これもスキルの力なのかもしれないが、恐ろしい速度だった。一瞬で近寄ったギルドマスターは、手に持った巨大な剣をリュウスケに向けて振り下ろした。その様子を見ていた受付嬢は、リュウスケがギルドマスターによって斬り殺されると思って目をつぶってしまった。


 ガキッと金属をぶつけ合うような音を立てて、巨大な剣はリュウスケの愛刀で受け止められていた。ギルドマスターの一撃は、大型バイクが時速百キロで衝突してきた程の威力だったが、その程度ではリュウスケの愛刀はビクともしなかった。


「木の棒で、俺の一撃を受け止めるか。お前はそんなスキルを持っているのか」


 ギルドマスターが驚くのも当然だ。誰もが先ほどの一撃でリュウスケの木刀が折れると思っていただろう。だからギルドマスターは手加減をして打ち込んでいた。もし、リュウスケの木刀が折れたなら、彼の体の一歩手前で剣を止めるつもりだった。それだけの技量をギルドマスターは持っていた。


「そんな便利なスキルとか、俺は持っちゃいない。俺が持っているのは気合いと根性だ。そして俺の愛刀(相棒)をそこらの木の棒と一緒にするなよ!」


 リュウスケは、ギルドマスターの剣を受け止めている状態だ。つまり、巨大な剣とギルドマスターの上半身の重量が、木刀にのし掛かっている。リュウスケは、両手に力を込めると、ギルドマスターの上半身ごとその巨大な剣を押し返した。ギルドマスターは、剣を押し返されて、よろめいてしまった。リュウスケから見たら隙だらけだ。


「ボティががら空きだぜ!」


 リュウスケはその隙を突いて、ギルドマスターの胴体を木刀で殴りつけた。もちろん全力では無い。だが、あばらの何本かは折れるぐらいの力で殴った。


 カキン


 ギルドマスターの胴体を殴ったはずなのに、まるで金属の塊でも殴ったような手応えがリュウスケの手に感じられた。予想外の手応えに、リュウスケは驚き、そこで動きが止まった。


「金剛身スキルも知らないのか。しかし、想定以上の力強さだ」


 ギルドマスターは、木刀で殴られたダメージが無いかのように、再び剣を振り下ろした。いや振り下ろすと言うより、振り回すと言った方が正しい。巨大な剣を縦横無尽に振り回して迫ってくるギルドマスターから、リュウスケは跳び下がって距離をとった。


この世界(・・・・)の人間は化け物揃いだな」


 巨大な剣を縦横無尽に振り回すギルドマスターに、リュウスケは呆れた。体格と得物によるリーチの差が違いすぎて、リュウスケはギルドマスターの間合いに入れなかった。


「逃げまわるだけか」


 縦横無尽に剣を振り回しながら、ギルドマスターは喋る余裕さえ有った。確かにリュウスケは逃げていたが、それはタイミングを計っていただけだった。


「その剣技は、ワンパターンだな」


「何だと」


 リュウスケは愛刀を一振りすると、ギルドマスターの剣を叩いた。するとギルドマスターの体が剣に引っ張られるように流れてしまった。ギルドマスターが縦横無尽に剣を振るっていたのは、彼の力では無く、剣技のスキルを使った物だった。だから喋る余裕があり、剣が振るわれる軌跡も一定のパターンだった。リュウスケはそれを見切って、剣を叩き、その軌道を変えるだけで、ギルドマスターに大きな隙を作り出した。


「胴体は硬くても、手は硬く出来ないだろ」


 ギルドマスターが体勢をなおす前に、リュウスケは、ギルドマスターの手を愛刀で叩いた。ギルドマスターは、金剛身スキルを使っていなかったのか、それともスキルは同時に使用できないのか、今度は普通に人間の肉体を叩いた感触が、リュウスケには伝わってきた。手を叩かれたギルドマスターは剣を手放してしまった。勢いよく地面を転がった剣は、壁にめり込んで止まった。


「(あんな重量物を、振り回していたのか。やはり、この世界の連中はとんでもなく強いな。そんな連中でも魔王には勝てないのか)」


 壁にめり込んだ剣を見て、リュウスケはそう思っていた。

 一方、ギルドマスターは、壁にめり込んだ剣を見てため息をついていた。


「これで試験は合格か?」


「ああ、合格だ」


 リュウスケが打ち据えた手を押さえながら、ギルドマスターは彼に「合格」と言った。


 ★☆★☆


「リュウスケ様、これが貴方の新しい札になります」


 昨日のお役所対応から百八十度変わり、丁寧な態度の受付嬢からリュウスケが貰ったのは、銀色のタグだった。まるで兵士の認識票のようなタグには、リュウスケの名前とランクが書かれていた。


「<シルバー>ランクか」


「はい、昨日までの木の札は、冒険者見習い(ウッドランク)の物です。今リュウスケ様に渡した札は、シルバーランクを示す札となります。シルバーより上のランクは、ゴールドとプラチナのランクしか有りません…」


 受付嬢の説明では、ゴールド以上のランクになるには、冒険者ギルドを含め、各国に認められるような偉業を成し遂げないとなれない。つまり、冒険者ギルドだけで出せる最高のランクがシルバーだった。シルバーの下には、ブロンズ、アイアン、カッパー、ウッドとランクが有り、リュウスケが昨日貰ったのは、ウッドの札だった。昨日リュウスケが聞いた話では、試験に合格したら二つランクが上がるという話だったが、何故か一気に四段階もランクが上がってしまった。


「ギルドマスターがリュウスケ様の腕前を確かめ、アイアンでは無くシルバーランクにすると決められました」


「なんか、怪しいな。それでシルバーランクになると、どんな良い(・・)ことがあるんだ?」


 「うまい話には裏があるのがお約束だ」と、リュウスケは警戒しながら受付嬢に尋ねた。


「はい、シルバーランクになると、魔物討伐を含め、全ての依頼を受けることが可能となります。また、ギルドから指名依頼(・・・・)が出されることがあります」


「そう来たか」


「はい、今ゴールドやプラチナランクの冒険者の皆様は、対魔王連合軍に参加されており、シルバーランクの方も大半が魔王復活の対応に追われています。つまり、冒険者ギルドには、高ランクの依頼がたまっている状態なのです」


「それを俺に受けろと…そう言うことだな」


「はい。その通りです。これがその依頼になります」


 受付嬢が最高の笑顔で、大量の木の板をリュウスケに渡してきた。


「こんなにあるのか…」


 目の前に積み重ねられた依頼の木の板を見て、リュウスケの顔が引きつった。


「何でも、馬車馬より頑丈だとお聞きしております」


「それは勘違いだ、俺は人間だ。限界もある。それに、俺は普通の依頼なんて興味が無い。俺が望むのは、この国の王様に会えるような依頼だ」


「王様では無く、王宮魔術師との面会をお望みでは?其方に関しては、リュウスケ様が冒険者ギルドの依頼を数多くこなしてくだされば、冒険者ギルドにて面会の約束を取り付ける手はずになっております」


「できれば数をこなすんじゃ無くて、一回で会えるような任務が良いんだが」


「そんな依頼は、リュウスケ様では無く、ゴールドやプラチナランクの冒険者か、今なら勇者様にお願いします」


「そうなるのか。つまり、冒険者ギルドは、俺が王宮魔術師と会いたい理由も知っているのか。そして、俺はこの依頼を受けなければ、王宮魔術師に会えないと言うことで会っているか?」


 リュウスケの信条だと、女性に凄むのはNGだったが、今はそれを撤回して受付嬢を睨んでいた。


「はい、よろしくお願いします」


 しかし、受付嬢はそんなリュウスケの圧力など気にしていなかった。魔王の復活で王都の冒険者ギルドは閑古鳥が鳴いているが、通常はリュウスケなどより強面の冒険者と受付嬢は交渉している。だから高校生のヤンキーレベルの威圧に気圧されるわけも無かった。


「チッ」


 リュウスケは舌打ちすると、大量の依頼の板をテーブルに持ち帰った。そして依頼内容を仕分ける作業に取りかかった。彼が依頼を分けているのは、依頼の場所と時期を組み合わせて、最短で終わらせるためだった。塩漬けになっていた依頼なので、達成時期的な条件は無かった。しかし、魔物の退治は早急に片付けないと人が死ぬ。実際、リュウスケはアンジェリカと旅をして、そのような場面を見てきた。リュウスケは、討伐依頼を軸に、それと同時に受けることが可能な依頼で、木の板の山を分けていった。最短で終わらせると決めたなら、一回の旅で、複数の依頼をこなすとリュウスケは考えていた。


「王国の地図はこれか。しかし王国の地図とか冒険者に公開して問題ないのかね~。普通は軍事情報だろ。まあ、俺に取っちゃ助かるけどな」


 シルバーランクで出されている依頼は、厄介な魔物の退治と、採取が難しい(厄介な場所や採取方法が特殊な)素材の確保がほとんどだった。魔物は冒険者ギルドの魔物図鑑で調べれば、姿や能力を知ることができた。後は地図を見て、魔物がいる場所に向かえば出会えるはずと、そして実際に魔物を倒す手段については、「愛刀と気合いさえ有れば何とかなる」とまさに脳筋な考えであった。


 リュウスケが悩んだのは、素材の採取依頼だった。昨日冒険者になったばかりのリュウスケには、異世界の素材が何処に在り、どうやって採取するかも分からない。そしてそんな事を知っている人物も知らないのだ。試しに受付嬢に採取依頼について聞いてみたのだが、「調べてください」と、断られてしまった。冒険者ギルドは、本当にリュウスケに依頼をこなすつもりがあるのか、彼は、疑ってしまった。


「ホロオメニア草の根っこを一束ね…。そんな草、一体何処に在るんだよ」


「ホロオメニア草は、魔の森の北の外れに生えているわよ」


 リュウスケが採取依頼の仕分けに苦戦していると、後ろから声を掛けてくる奴がいた。


「アンジェリカか、どうしてお前が冒険者ギルドにいるんだ」


 リュウスケの後ろから声をかけてきたのは、アンジェリカだった。今は騎士団の仕事中なのか鎧を着ていた。


「お前って…私がいたらおかしいの?」


「いや、問題無い…んだな」


 リュウスケがギルドマスターに視線を向けると、彼は頷いていたので、アンジェリカが依頼内容を見る事は問題ないとリュウスケは理解した。


「それで、俺に何か用でもあるのか?見ての通り、俺は今忙しいんだが」


「リュウスケが忙しいのは見てて分かったわ。それでだけど、団長が任務を手伝ってくれたお礼に、リュウスケを手伝ってやれってね。ほら、一月かかる任務が十日で終わったでしょ、だから私も暇だから、リュウスケを手伝おうかなと思って」


 このアンジェリカの話、実は嘘であった。リュウスケが異世界人であることを知ったブロンズ騎士団の団長は、アンジェリカにリュウスケの監視を命じたのだ。勇者のように(・・・・・)スキルや魔法が使えなくても、リュウスケの身体能力は異状である。監視すべき対象と団長は判断したのだ。そしてその任務に最適な人物は、一緒に旅をしてきたアンジェリカしかいない。この国では国王、団長の命令は絶対である。パワハラが成り立つ世界なのだ。だからアンジェリカは命令を断れなかった。


 正直者なアンジェリカは、嘘をついてまでリュウスケの監視をすることは嫌だったが、任務は断れないし、団長が出す報償が必要だった。だからリュウスケに嘘をついてまで、彼の監視を引き受けたのだ。


「なるほど、それは助かるぜ。俺はこの世界の事が良く分からない。アンジェリカが手伝ってくれるなら百人力だな」


「百人力なのは、リュウスケの方でしょ。それで、リュウスケが見ている依頼だけど…これ全部シルバーランクの依頼だよね。どうしてそんな依頼を見ているの?貴方じゃこんな依頼、受けられないでしょ」


「いや、俺は今シルバーランクの冒険者だぞ」


「ええっ、昨日冒険者登録したばかりで、今日ランクアップ試験を受けたんだよね。どうしてシルバーランクになっているのよ」


 リュウスケが銀色の札を見せると、アンジェリカは驚いた。まあ普通に考えて、たった二日でウッドからシルバーランクにランクアップする人間など、存在したとしても勇者ぐらいだ。そして勇者は、召喚されて一定以上の力を持っていることを確認されると、自動的にプラチナクラスの冒険者として扱われる。


「知らん。俺が聞きたいぐらいだ。とにかく今冒険者ギルドは人手が足りないらしい。だからこの依頼をこなさなきゃいけない。そしてえ俺はこの依頼をこなせば、『王宮魔術師に会わせてくれる』と言われたんだ。だから、依頼をさっさと片付けようと仕分けてるんだよ」


「…なるほどね。もうリュウスケは、シルバーランクなのね。分かったわ、じゃあ、私は仕分けの手伝いをすれば良いのね」


「おう、助かるぜ。魔物は倒せば良いけど、採取依頼が全然分からないんだ」


「採取依頼ね。それは専門の知識と道具が必要だけど、リュウスケは…持ってないわね」


「そんな知識と道具が必要なのか。そりゃ困ったな。採取の方法とか誰に聞けば良いんだ?あと道具が必要って、俺、昨日宿に泊まったから今は無一文だぞ」


「金を持ってないって…良くそれで平然としてられるわね。…シルバーランクなら、冒険者ギルドから道具を借りられるわ。それに採取方法については、確か二階に本があったはず。それを見れば分かるわ」


「おう、それは助かるな。…アンジェリカは騎士のくせに、冒険者ギルドのことよく知っているな」


「私、騎士団が休みの時、冒険者として活動しているのよ」


 騎士団が休みの間もアンジェリカは冒険者として活動して金を稼いでいた。だから彼女は、冒険者ギルド、そして冒険者の依頼について詳しかったのだ。


「(アンジェリカは旅の間も金のことを結構気にしていたな。彼奴、金を必要としている事情があるのか?)」


 リュウスケは、依頼を手伝ってくれるアンジェリカに、何か事情が有ると感じていた。


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