村を回って王都に到着
誤字脱字多いかも。一人称視点から三人称視点に急変更したので、ちょっとおかしな描写あるかもしれませんが、ご容赦を
物語はかなり早く進んで行きます
リュウスケに引きずられるようにして、アンジェリカは隣村へ向かって走り出した。
「もう、村長さんにきちんと挨拶できなかったわ。そんなに急がせないでよ」
「そんな事より先を急ごう。また村が襲われていたらどうするんだ」
「…それもそうね。早く行きましょう」
そして、アンジェリカは走るのを止めて歩き始めた。リュウスケは走り続けるつもりだったが、アンジェリカは金属鎧を着ているのだ。走り続けることは出来ない。しかし彼女は騎士と言うだけあって、歩く速度は競歩レベル(時速十六キロ)の早さであった。アンジェリカが、この速度でどの程度歩けるのか不明だが、「この早さで歩いて一月もかかるという事は、魔の森はかなり広大だ」とリュウスケには分かってしまった。
「この速度で、隣村まで何日で着く?」
「そうね。この速度なら二日かかしら」
村長から渡された水と食料は八日分だから、アンジェリカの歩く速度は常人の四倍であった。
「(隣村まで二日、大体、二百五十六キロぐらいか)悪いが、少しお前の体重を計らせてくれ」
「はあ、何を言っているのよ。女性の体重を計らせてくれとか失礼でしょ。それに、私の体重を知ってどうするのよ」
「まあ、こうするんだよ」
「きゃぁ、何するのよ」
リュウスケはアンジェリカを抱きかかえると、そのまま歩き出した。金属鎧を着ているから重いと思ったが、以外とアンジェリカは軽かった。リュウスケは祖父の実験で百キロ程の重りを持たされて歩かされた事があるが、それに比べればアンジェリカは半分ほどのだった。
「暴れるな、喋るな。今から全力で走るから、舌を噛むぞ」
「えっ、このまま走るって。リュウスケ、一体何を考えているのよ」
「隣村まで今日中に辿り着こうと思っているだけだ」
「そんなの無理に決まっているじゃ無い。体力が持たないわよ」
「そんな物気合いでどうにかなるんだよ」
アンジェリカと会話をしながら、リュウスケは歩く速度を上げて、ついには走り出してしまった。そして、リュウスケの走る速度は時速三十二キロ、マラソン競技に出場すれは、世界記録を達成できてしまう程の速度だった。しかも彼は、アンジェリカを抱えて走っているのだ、常人では不可能な力と耐久力を持っていなければ、そんな事は不可能だ。
しかしリュウスケは、自分がそんな凄い事を出来るのは、ヤンキーの気合いと根性が有るからだと思っていた。まあ、ヤンキー漫画だと、大概気合いと根性で何とかするのがお約束だ。だから彼はそう信じていた。
「うりゃー」
「きゃーっ!何で私を抱えてこんな速度で走れるのよ」
「気合いだ」
「やっぱり、貴方って人間じゃ無いわ」
お昼休憩を取るまで、リュウスケは走り続けた。途中からもう喋ること無く、走るマシーンと化していた。ゴブリンが突然出てきても、リュウスケは弾き飛ばして前に進んでいた。ゴブリンが目の前で吹き飛ばされて、アンジェリカは悲鳴を上げるが、リュウスケの足は止まらなかった。
★☆★☆
太陽が山陰に隠れ、薄暗くなる頃にリュウスケ達は隣村まで辿り着いた。後半は若干ペースが落ちたが、リュウスケは隣村まで一日で着くという偉業を達成した。全てヤンキーの気合いと根性の成せる技である。
「リュウスケ、本当に一日で隣村まで着ちゃったわ」
「ぜぇっ…やるって、ぜぇっ…言っただろ」
アンジェリカを抱えて走ってくるリュウスケを見た、隣の村人は「何事か?」と驚いていた。アンジェリカが王都からの伝令であり、村に「魔王復活とそれに伴う魔物の活性化」を伝える為に来た事を伝えると、二人は村長宅まで案内された。村はまだ魔物に襲われていなかったが、村人は魔の森の様子がおかしいことには気づいていた。
「魔の森には入らないでください。後は自衛の為に村を守る柵の強化をしてください。夜は不寝番を立てて警戒を怠らないように。もし魔物が多く村で防衛不可能な場合は、隣村へ逃げてください。隣村は、昨日ゴブリンの大群を撃退したので、しばらくは魔物も襲って来ないでしょう」
アンジェリカは騎士らしく、村長に指示を出していった。
「分かりました。ですが、隣村が襲われたのは昨日ですか。騎士様は一日でこの村まで来られたのですか。流石ですね」
「一日でこの村に着いたのは、その馬鹿のおかげよ。まあ予定が早くなる分には問題は無いから良かったけど…。それで、次の村までだけど、馬を借りられないかしら」
「騎士様、この村には牛はいますが、馬はおりません」
「…そうなの」
アンジェリカがリュウスケをチラチラ見るが、馬を欲しがったのは、リュウスケに抱きかかえられて走られるのが怖かったからだった。
「アンジェリカ、人間の方が馬より持久力有るんだぜ。何せ馬と人間で競争したら人間が勝つんだからな」
「嘘でしょ。誰が馬と競走なんてするのよ」
アンジェリカはリュウスケの言うことを信じないが、実際地球ではマラソンで人は馬に勝っていた。
「村長さん、悪いが大工道具を貸して貰えないか。あと、適当な木材とロープがあれば欲しい。作りたい物がある」
ようやく息を整えたリュウスケは、村長に大工道具と木材やロープの提供を依頼した。
「は、はい。おい、誰か村の大工を呼んでこい」
村長は、リュウスケの我が儘をそのまま聞き入れてくれた。村長は、彼をアンジェリカの従者だと勘違いしていた。
しばらく待つと、村の大工が金鎚とノコギリとノミ、そして木材とロープを持ってやって来た
「俺は工作も出来る男だぜ!」
瞬く間にリュウスケは木を削り、組み合わせると背負子を作った。釘が無くても日本人なら木材だけで立派に木工細工を作り出せる。流石にリュウスケも、アンジェリカを抱きかかえたまま走るのは疲れると学習した。だから疲れないような装備を作ったのだ。リュウスケの木だけを使った工作技術に、村の大工も唸っていた。日本の木工細工の技術は世界一と言っても良いが、それを異世界の道具で実現するリュウスケは、単なるヤンキーとは言えないだろう。
「明日から、これでお前を背負って走るからな。覚悟しておけ」
「…本気でそう言っているのですか?」
「本気だ」
リュウスケのマジ顔をみて、アンジェリカはガックリと座り込んでしまった。
「任務が早く終わるんだ。感謝しろ」
「早く終わらせる必要とか有るのかしら」
「お前は、他の村が魔獣に何の準備もなく襲われる危険性を考えているか?」
「それは、早く連絡をした方が良いけど…リュウスケに運ばれるのがいやなんですー」
「じゃあ、俺と一緒に走れ!」
「無理に決まっているじゃ無い」
アンジェリカはそう言うが、「明日になれば気も変わっているだろう」とリュウスケは考えていた。何故リュウスケがそう思ったかというと、アンジェリカは、ゴブリンの大群に襲われている村を見て、助けに向かったからだ。あの勇気があれば、リュウスケに運ばれることぐらいは、我慢するだろうと彼は思っていた。
★☆★☆
「食料と水、サンキューな」
「すいません、食料と水のお代は、税金の方で差し引くように騎士団から税務官に伝えますので…」
「いやいや、この程度の食料で、そこまでしていただかなくても。それよりも早く次の村に伝令をお願いします」
「分かりました。それでは~」
結局、アンジェリカは、リュウスケの作った背負子に乗って運ばれることを選んだ。
★☆★☆
「あれが王都か。あそこに勇者を召喚出来る王宮魔術師って奴がいるんだろ」
「…リュウスケ、あれだけ走ってばかりなのに、どうして元気なの。運ばれている私の方が体力の限界に来ているんですけど」
「そりゃ、鍛え方が足りないな。いいか、俺の故郷じゃ三日や四日も徹夜で仕事をする連中もいるんだ。それに比べりゃ、寝床も食料もあるんだ、余裕だろ」
リュウスケの言う、三日や四日も徹夜で仕事をする様な人は、締め切り間際の漫画家ぐらいであった。いや彼の祖父もそれぐらい研究に打ち込んでいた。まあ、日本は「二十四時間戦えますか~」とCMを流すエナジードリンクが売られている世界なのだ。リュウスケは、常人が出来るのにヤンキーができないわけが無いと思っていた。
アンジェリカの足で一月かかるという任務を、リュウスケが走ることで十日で終えて、二人は王都に辿り着いた。途中で魔物に襲われている村を助けるといった事が少なければ、もっと早く王都に着いていただろう。
「さっさと王都に入ろうぜ。それで俺にその王宮魔術師を紹介してくれ」
「ちょっと、リュウスケ、本気でそんな事思っているの。王宮魔術師様は、私みたいな下っ端の騎士じゃ話も聞いて貰えないわよ」
「じゃあ、お前の知り合いで、相手にして貰えそうな奴を紹介してくれ。其奴に頼むわ」
「本当に、何処からその元気が出てくるのか知りたい。貴方やっぱり人間じゃ無いでしょ」
「失礼な、何処からどう見ても普通の人間だろ」
「腕から変な木の棒を取り出すし、それにとても人とも思え無い力と早さで動ける。うん、リュウスケはやっぱり、人間じゃあ無いわね」
「いや、木の棒ぐらい気合いさえあれば、誰だって袖から出し入れできるだろ。それにこいつはただの木の棒じゃ無い。木刀っていう聖剣だ」
「木の棒を聖剣って、リュウスケの常識はおかしいわよ」
王都の門に入る順番を待つ間、リュウスケとアンジェリカは、そんな会話をしていた。二人の話している内容は、出鱈目な事であり、おかげで周囲から注目されてしまった。アンジェリカは騎士の鎧を着ており、リュウスケはこの世界では誰も見たことが無い学ランを着ている。つまり二人はもの凄く目立ったのだ。
「おい、騒ぐな…って、お前はアンジェリカか。お前の任務は、魔の森の村を回る伝令だったはずだろ。どうしてこんなに早く帰ってきた。まさか途中で任務を放りだしてきたのか?」
「ジャック、今日は貴方が門番だったのね。任務は終わらせてきたわよ。貴方じゃあるまいし、任務を放りだすわけないでしょ」
王都の門を警備している兵士の中に、アンジェリカの知り合いがいた。お陰で、リュウスケとアンジェリカは長い列から解放され、早く王都に入る事が許可された。
しかし、リュウスケが門をくぐろうとすると、ジャックが立ち塞がった。
「おい、アンジェリカ、俺を王都に入れるようにこいつに言ってくれ」
「誰だ、こいつは。奇妙な服を着ているが、アンジェリカの知り合いか?」
ジャックと呼ばれた兵士が、リュウスケを指さして怒鳴った。学ランを馬鹿にされて、リュウスケは少し苛立ったが、「中世世界の人間には、学ランの良さが分からないのだ」と思って、学ランの素晴らしさを説明することにした。
「これは学ランっていってな、冠婚葬祭はもちろん、大人になっても着ることが出来る便利な服装だ。それに戦う時にも着ることが出来る万能の服なんだぞ」
「お、おう。そんな便利な服なのか」
リュウスケに学ランの便利さを教えられて、ジャックは若干引いていた。
「こいつは、リュウスケ。知り合いというか、私の命の恩人というか、強いて言うなら馬の代わりかな?」
「馬とか失礼なことを言うな」
「それで、アンジェリカは通して良いが、こいつはどうするんだ。このまま通して良いのか?」
「…まあ、隊長に任務完了の報告をするのに、リュウスケが居ないと任務放棄を疑われるのよ。だから私が保証人になるから通してほしいの」
「お前が保証人ね~。まあ騎士なら大丈夫だよな。それじゃお前、ここに名前を書け」
「おう、任せろ」
リュウスケは差し出された帳面に名前を書き込んだ。もちろん日本語ではなく、彼はこの世界の文字で名前を書き込んだ。
「リュウスケ、いつの間に文字を覚えたのよ」
「あれだけ村を回ったんだ。その時、村長の家で文字を習ったんだよ。お前は寝てたから知らないだけだ」
この世界を脱出して早く日本に帰るために、リュウスケは努力を惜しまなかった。「読み書きが出来なければ、日本に帰る手段も見つけられないだろう」と、必死に勉強したのだ。この世界の文字は、アルファベットもどきだったので、記憶力の良いリュウスケは簡単に覚えられた。
「…信じられない。村じゃ読み書きできない人も大勢いるのよ」
「数は数えられるのに、読み書きできない方がおかしいんだけどな。とにかくこれで良いんだな。じゃあ通らせて貰うぞ」
「まあ、問題だけは起こさないでくれよ」
ジャックは門をくぐるリュウスケにそう言ってきた。
「考えておく。それよりアンジェリカ、早く行くぞ」
「いまリュウスケを王都に入れる為の保証人に、私の名前を書くまで待ちなさい」
こうして、リュウスケはアンジェリカを保証人として王都に潜入…もとい、入ることが出来た。王都は半径五キロもある巨大な城塞都市で、中央には某テーマパークのような巨大な城がある。騎士団はその城の側にある建物に常駐しているとアンジェリカは説明してくれた。
リュウスケには、王都の地理は分からないので、アンジェリカの後を黙ってついていく。歩いて行く間に、彼は周囲を観察して、この世界の情報を入手していた。何が彼を日本に帰す為に必要なのか分からないのだ、露天市場に並べられている物や魔法道具とか錬金術道具を撃っている店の位置をリュウスケは記憶していった。
アーランド王国では、騎士団を大きく三つに分けていた。王家を守る親衛隊のゴールド騎士団、王都を守るシルバー騎士団。そして、地方の貴族と連携して王国全体を守るブロンズ騎士団である。アンジェリカは村を回っていた事から分かるように、ブロンズ騎士団員である。
王都の門をくぐってから、小一時間ほど歩いて、アンジェリカの所属する騎士団…ブロンズ騎士団の建物に辿り着いた。この建物の中にアンジェリカの上司であるブロンズ騎士団の団長が居る。
建物の入り口には歩哨らしい騎士が槍を構えて立っていた。彼は、アンジェリカの顔を見て首をかしげていた。歩哨の騎士は、アンジェリカが予定より早く帰ってきた事を疑問に思っていた。
「アンジェリカ、任務を完了し、ただいま戻りました」
「お、おう。ずいぶん早かったな。本当に任務を完了したのか?」
歩哨に立っていたのは、中年の騎士だった。やはり、アンジェリカが早く戻ってきた事に疑問を感じていた。
「はい。全ての村を回ってきました。それで団長に任務完了の報告をしたいのですが、今団長は、何処におられるでしょうか?」
「今の時間は、訓練場で若手に稽古を付けているはずだ。それで、その後ろの変な格好の男は誰だ?」
「今回の任務が早く終わった原因です。団長にリュウスケの非常識な力を見せないと、私が依頼を放棄したと言われかねないので、王都まで連れてきました」
「…そうか。この男が何かやらかしたのか?どうする、捕縛しておくのか?」
「いえ、任務には協力してくれたので、捕縛する必要は有りません。とにかく団長に会いに行きますので、通してください」
「ふむ。お前がそう言うなら通すが、問題は起こすなよ」
「分かってます」
歩哨の騎士と別れて、アンジェリカはリュウスケについてこいと、目で合図して建物内に入って行った。
「しつれいしまーす」
リュウスケは、歩哨の騎士にわざとらしく挨拶をして、アンジェリカの後を追った。
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