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クランハウスお披露目!


 王都アルシディアは王城を中心として貴族街、平民街と別れている。別に別れているからといって貴族街に無断で入ったからしょっぴかれるなんて事は無いがたまに絡まれることはあるらしい。

 どっちにしても敷居が高いから入ろうとは思わないが。


 俺達は今クランハウスにむけて平民街の大通りを歩いている。流石に金持ちマーリンでも貴族街には作らなかったらしい。

 まぁ、確かに冒険者なんて基本荒くれ者でよく事件も起こすだろうしプライドの高い貴族が居るところでそんなの起こしたら目も当てられない。


 …よく考えたらオレ、そんな集団のリーダーになろうとしてんの?どうしよう。まだ何も始まってもないけど考えたら帰りたくなってきた。異世界だから帰る家ないんですけど(笑)


 ……ぜんっぜん笑えねー!せめてヒモは脱却したい!


 「中央通りの方は屋台も多くて賑やかね」


 マーリンの澄んだ美しい鈴を転がすような声で意識を現実に引き戻される。顔もよくてスタイルもよくて声もいいなんて反則だよね。性格?性格はまぁ、うん。この話題は終わりにしよう。なんかいい匂いも漂ってきたし。


 「確かにな。いい匂いもするし」


 「お腹空くいい香りね。ちょっと買ってくるわ」


 「あっ、おい!…いってしまった」


 即決力早いなぁ。こういう場面てホントは男の俺が行くべきなのに出遅れてしまった。


 近くの壁に背を預け大人しくマーリンの帰りを待つ事にする。


 屋台があって露店があって、人間に混じって獣人やエルフなんかの亜人種が行き交っている。初めてこの世界にきた頃は全てが未知で慣れない物だったのに今じゃこんな光景にも慣れてしまったな。


 おっ。戻ってきた。


 マーリンの左右の手にはそれぞれローストチキンのような物が1本づつ握られている。


 「はいこれ。食べながら行きましょう」


 差し出されたチキン?を受け取る。皮はパリっと焼けていていい匂いがする。


 「申し訳ないな。これくらい俺に行かせてくれればいいのに。クランハウスも用立ててもらっちゃったし」


 「別にこのくらい気にしなくもいいわよ。大した金額じゃないしそれに……ちゃんと計画通りだもの!」


 それはもう大輪が咲くようなとびっきり可愛い笑顔で彼女はそう言った。


 すれ違った人が立ち止まる程の可愛い笑顔だったが俺はそんな事はなかった。なんというか毒を持った花とかから感じる危険色のようなオーラを感じる。


 というか計画って何よ?気になるけど怖くて聞けない…


 ハハ…と何事も無いかのように流して俺はチキンにかぶりつく。


 うっっま!何コレ!超うまい!食感とかはモロにチキンだが日本のチキンより遥かにうまい!


 「なんだコレ、うまいな!なんの肉なんだ?」


 「うん。香辛料も効いてて美味しいわね。コレはペリュトン焼きよ。つまりチキンね」


 彼女もまた美味しそうに食べながら教えてくれた。


 「へぇ、ペリュトン焼きかぁ………ペリュトン⁉︎」


 ペリュトン⁉︎ペリュトンってアレか⁉︎アトランティス大陸にでてくる率先して人間を殺す雄鹿と鳥の怪物!…マジかぁ。この世界には神話の鳥もいるのかぁ。そしてオレはいまソレを食ってるのか…


 異世界にきて1年。いろいろ見たが未だに知らない事山の如し。

 今まで王都に来るまで旅してきたがそんなのがいるなんて知らなかった。もしかしたらステュムパリデスとかもいるのかな?もう2度と王都から出たくねぇ…


 でもうまいのでちゃんと美味しく頂きました。

 

 「食べ終わったならかして。骨は私が処理するから」


 「うぃ。ごちそうさまでした」


 マーリンは俺から骨を受け取ると自分の分も合わせて魔法で燃やして塵にする。


 こういう所はつくづく異世界だなぁと思う。魔法もそうだけど現代の日本で路上で歩きながらチキンの骨燃やしてたら即問題になるだろうし写真撮られてバズるかもしれないがここでは誰も気にかけることがない。


 いくら慣れてもふとした所で異世界なんだと思わされるものだ。



 「フルイチ。ついたわよ」


 「おー。ついにご対面かぁ。おお!デケェな!まるで新築みたいだ!」


 声に出したようにかなりデカい。まぁ、マーリンの要望では五階建てがいいって言ってたから五階建てなんだろう。

 しかし金があるとはいえこんな新築みたいなピカピカなクランハウスを用意するとはな。


 「新築みたいな、じゃなくて新築よ。新しい私達の住まいになるんだもの新築に決まってるじゃない」


 …は?新築?こんな活気もあり人通りもいい立地条件最高の場所でか?…アレかな?建物がデカ過ぎるとか立地条件がいいからべらぼうに高くて売れ残ってたとかかな?


 「よくこんないい所が残ってたな」


 なんと無しに言った言葉だったが予想外の返事が返ってきた。


 「そんなわけ無いじゃない。潰れかけてた建物だけ無駄にデカい店だったから高値で全て買い取ったのよ。そして建て直したの。皆高く売れたからホクホク顔で喜んで譲ってくれたわ」


 きゃー!マーリン様ステキィ!…いや、ここまで行くとちょっと怖いな。


 というか建て直したとはなんぞや?


 「なぁ、マーリン。俺達王都にきて今日で2日目だよな。でお前がクランハウス探してくるってでてったのが今朝だよな。今はまだ昼前だぜ?これ程の建物が数時間で建てれるなんて流石に冗談キツイぜ?」


 「大丈夫よ、だって冗談じゃないもの。金に物を言わせて材料を揃えて、建築を生業にする魔法師達にやらせたの。でも解体だけで大分時間かかっちゃったから建てるのは私が全部やったけど」


 パネェ。マーリンさんマジパネェッス。


 流石は大魔法使い様。俺やってけるかなぁ。不安でしょうがないんだが、これまでの旅もろくでもなかったし。


 「ほら!早く中を見にいきましょう。フルイチの部屋ももう決めてるから」


 俺は彼女に手を引かれて新築ピカピカのクランハウスに入っていく。


 もう行くとこまで行くしかない。


 俺ってば本当なら高校二年生らしく学校行ってるはずなのに物凄い大金かけられたクランハウスのリーダーになるなんて人生何があるかわかんないもんだなぁ。


 これからパーティメンバーも集めてクランに加入してくれるパーティも見つけないと行けないし想像するだけで疲れるな。


 エアコンガンガンにしてコーラとポテチ飲み食いしながらソファーに横になってテレビに映画つけてソシャゲする生活が懐かしい。


 ああ、帰りてぇ…


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