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第二話 魔王とこの世界

 翌日、僕はリートとマルタリーザと共に魔王討伐に強制的に行く事になった。

「勇者様。楽しみですね」

 やたらと露出度の高いピッタリとした服を着たリートは嬉しそうにそう言った。よく見ると手にはゴツいナックルをつけていた。

 いや、遠足じゃないから。ていうか、格闘家タイプかよ。

「しかし、遅いなぁ…マルタリーザ」

 僕らはマルタリーザを待っていた。

「仕方ないですよ。勇者様。気長に待ちましょう?」

 と、言いつつすでに五時間半。流石に遅くないか?

「待たせたな…」

 マルタリーザの声がした。

「あ、やっと来たッ!」

 振り向くと昨日よりも露出度が高い赤い鎧に身を包んだマルタリーザが立っていた。

「すまんな。待たせてしまって。ドラゴンメイルを作るのに鱗が足りなくてな。狩ってきたら遅くなってしまった」

 え?なに、その、ちょっとコンビニに買い物に行くみたいなノリは…。

「ところで、春彦。お前、その格好で行くのか?」

「悪いか?」

「いや、陛下から勇者の装備をいただかなかったのかと思ってな」

 勇者の装備って、まさか、あの金色の葉っぱと金色のサンダルと金色の竹竿の事かッ⁉︎いや、まさかな…。

「勇者様は断られたんです。こんな物が無くても魔王は倒せるって…」

 まさかの勇者の装備だったーッ!

 ちなみにリートは、恋する女の子の様にキラキラした目で僕を見ていた。

「そうか、流石は勇者だ」

 マルタリーザは頷きながらそう言った。

「と、いうわけで勇者様。冒険に出ましょうッ!」

 僕は、どういうわけだよッ!と心の中で突っ込みながら彼女達と共に冒険の旅に出発した。


 城を出てからしばらく歩いていると何故か、ドラゴンが襲いかかってきた。

「勇者様、スライムですッ!」

 リートはそう言った。

 いや、スライムじゃないから。ドラゴンだから。いや、待って、あの頭になんか付いてるんだけど…?

 よく見るとドラゴンの頭の上には数字とアルファベットが付いていた。

「えっと…Lv.45…ッ⁉︎」

 僕は思わず声を上げた。いや、おかしくない?なんで、えっ⁉︎レベル…⁉︎僕は混乱した。

「先手必勝ッ!てやーッ」


 ザシュッ!ズバッ!


 マルタリーザがそう叫ぶや否やドラゴンは一瞬で物言わぬ肉塊となった。

「ふん、他愛もない…」

 マルタリーザはそう言うと、剣にこびりついた血をピッと軽く振り払った。

 彼女の活躍を見ていた僕の頭の中に突然、謎の音が響いた。


 ジャジャシャーーンッ!オーケストラの様な感じだった。


 僕は、思わず、うるせぇッ!と心の中で叫んだ。


 ……チャララ、ラーラ、ジャジャンッ!ダッダッダッ…。

 しかも、続くのかよ…。

『何もしなかった春彦は、レベルが一九上がった』

 唐突に頭の中にそう響いてきた。いや、レベルって何よ?

 ていうか、何もしなかったって…。出来ねえんだよッ!強すぎてッ!

「ここは魔物が出やすいからな。春彦、気をつけるんだぞ?」

「出やすいって、どのくらいなんだ?」

 突然、茂みが動き、魔王のような禍々しい見た目の魔物が姿を表した。

「ま、ま、……」

 僕は思わず腰を抜かしてしまった。そりゃそうだ。ラスボスが目の前にいるんだ。

「あれは、ゴブリンですね」

「は?いや、ゴブリン要素何処にもねえからッ!」

 僕は思わず叫んだッ!

「ぐふふ、魔王様に逆らう愚か者達よ。このゴブリン様がお前達をあの世に送ってやるゴブ……」

 自称ゴブリンは、そう言った。僕はそのあまりの痛々しさに涙した。ふと、自称ゴブリンの頭の上にあるパラメータに目を止めた。

 は?Lv.89⁉︎いや、無理無理ッ!死ぬってッ!

 僕は逃げようとぐるんと後ろを向いて逃げようとした。と、同時に断末魔が聞こえ、頭の中に音楽がなった。


 チャラリー、チャラ……。


 変わってるじゃんっ!ていうか、チャルメラかよッ!ラーメンじゃないんだからさ。


 チャラリー、チャラ、残念。美味しい美味しい焼き芋だよ……。


 知るかッ!


『春彦はレベルが二五になった。レベルがMAXになったので、春彦は焼き芋売りにジョブチェンジした』


 うおーいッ!焼き芋売りってなんなんだよッ!


「勇者様、早く行きましょう」

「ごめんごめ、」

 振り向いて僕は絶句した。そこには血塗れのリートと自称ゴブリンの残骸があった。

 いや、君、お姫様だよね?

「さあ、早く行くぞ?次の町までは一一〇キロ程あるからな。今から歩いていけば、まあ……、夕方ぐらいには着くだろう」

 遠ッ!なんで、そんなに遠いんだよッ!ていうか、夕方になんて着かねえよッ!

「次の町、遠くねえか?近場になんかないの?村とかさ」

「いや、ここら辺に町はあったんだがな。魔王に滅ぼされてしまったんだ」

 な、なんだってー⁉魔王、許すまじッ⁉︎

 僕は激怒した。そして、必ずや暴虐の限りを尽くす魔王を討たねばならぬと決意した。しかし、ふと、思った。魔王ってどんな奴なんだ?、と。

「なあ、魔王ってどんな奴なんだ?」

「む、まさか、知らないのか?」

「ああ、そう言えば、まだ勇者様には教えてませんでしたね」

 うおーいッ!それ大事な事だよッ⁉︎聞かなかった俺も悪いけどさ、教えてよッ⁉︎

「まず、この世界に魔王は二人いる」

「は?」

 マルタリーザの言葉に僕は、思わずそうつぶやいた。え、二人いるの?魔王が?

「一人は世界を支配せんとする元祖魔王ツブアン」

 なんか、まんじゅうみたいな言い方だな……。ていうか、名前。

「そして、もう一人は世界を滅ぼさんとする総本家魔王カワムキアンだ」

 うおーいッ!完全にまんじゅうじゃねえかよッ!婆ちゃん家、近くにあったわッ!なんなんだよ、総本家魔王カワムキアンってッ!元祖魔王ツブアンってッ!単なるまんじゅうじゃねえかよッ!

「えーと、それで、僕はどっちの魔王を倒せば良んだ?」

「総本家魔王だ。元祖魔王はついでだな」

 ついで⁉︎魔王って、ついでに倒していいのか⁉︎

「総本家魔王はサ終という禁呪を使い街を次々と滅ぼしているんです」

 リートはそう言った。ん?サ終?なんか、サービス終了みたいな……。

「サ終は、サービス終了という名前でな、ありとあらゆるものを一瞬で消すという恐ろしい禁呪だ」

 サービス終了の事だった!いや、でも……。

「えっと、なんかゲームみたいな……」

 僕は乾いた笑みを浮かべた。まさか、ここがゲームの中の世界だなんて、そんな馬鹿な話あるわけ……。

「何を言ってもいる?春彦。ここは、魔法世界のエトランゼというゲームの世界だぞ?」

 あるわけあったッ‼︎

 しかも、魔法世界のエトランゼって言えば、バグだらけで、クソつまらなくて運営の態度が悪い上に課金が超エグくてリリース僅か三日でサービス終了になったっていうあの悪名高い広告詐欺ゲー、クソゲーオブクソゲーじゃねえかよッ!

「えっと、それって……」

「はい、あまりにもつまらなくてサービス終了になったあのクソゲーです」

 おいッ!なんで、ゲームの中の住人がそんな事言うんだよッ!おかしいだろッ!

「ちなみに私は、一〇万課金して一枚排出されるピックアップキャラだ」マルタリーザはそう言った。「ちなみにレベルはMAX。もし、リアルでここまでするには五〇万はかかるな」

 超エグッ!じゃなくて、メタ発言やめろッ!

「つまり、僕は運営を倒して、サービス終了をやめされば良いのか?」

「はいッ!」

 リートはそう言った。

 なんてこった……。僕は愕然とした。


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