第14話 覚醒、エンジェルフォーム
ーーアースクエイク。
その魔法の言葉は、どう聞いても大地を揺らすあの魔法。
男の声など気にせず俺は叫ぶ。
「イシス!その魔法は駄目だ!」
正直、ダンジョン入り口に入って直ぐの所で騎士に絡まれたのでここがダンジョンだと言う事を俺ですら忘れていた事だ。そんな事を寝起きのアホ女神が覚えている筈もない。
「アースクエイクだと!」
騎士が身構えると同時に小さな振動が足を伝う。
「この揺れは!君はそんな魔法を使えると言うのか!」
女騎士も驚きの声を、上げる。
「「…………………」」
そして震度1未満のその揺れは静かに収まった。
「イシス?」
「なんか人間の魔力って貯まるのに時間が係るんですねーーパタン」
「…………お騒がせしましたぁ」
その場で寝だしたイシスを俺とヨッちゃんはいそいそと回収する。
「チッ、驚かせよって。おい、そこの女騎士!貴様のその剣筋は我が国のものであろう!名を名乗れ!」
「貴様に名乗る名などない!」
再び立ち上がり剣を構える女騎士。
「フッ、だが大体の事情は理解できたぞ?」
「なんの話だ」
「ヘンドリクセンの配下にあるサマリを魔物に襲わせ、人員をここへ割いた隙に王家が公爵家を滅亡へと追いやるこの作戦。漏れていたとは思えぬが……女騎士団、そんなものも過去にあったなと思ったまでよ。なぁ、女騎士団長キャサリン=ヘンドリクセン」
「!!」
「ほぉ、反論もせぬか。なら教えてやる、お前が王家に謀反の意思を見せねばこの様な事を我ら第三騎士団がせずとも良かったのだぞ?」
「私は謀反など……」
「己がキャサリンだと認めたな?だがもう遅い!」
「なにが遅いものか!お前達が差し向けたゴールドサーペントは既に殺されているぞ!」
「なに?!」
「はははは、お前達の悪事は潰えた!大人しくお縄につけ!」
「ーーふふっ、ははっ、あははははは!何を言うかと思えば。ゴールドサーペントが倒せるはずなかろう!それにヘンドリクセン家は既に我らファンダリア王家の敵であろうが!」
「いや、本当に倒されていたぞ」
「まだ言うか!」
騎士は再び剣を女騎士へ振るうが。
ーーゴゴゴゴゴゴッ
再び地面が揺れ出す。
「(まずいな)」
「(……大介さん、この揺れ)」
「(あぁ、さっきのイシスの魔法でこの辺りの断層を刺激したんだろ。兎に角ダンジョンから出るぞ)」
「(はい)」
俺達がダンジョンへ飛び出すと。遅れて女騎士、騎士、兵士達と飛び出してくる。
「全員無事か!」
騎士の声に兵士達が反応するが、地震の揺れはまだ収まらない。
「大介さん!この揺れ長過ぎませんか」
「確かにこんなに長い揺れは日本でも経験した事がないな」
揺れはまだ続き、遂にその揺れが最大にまで達すると。爆発音と共にダンジョンがあった場所が大爆発を起こす、それと同時に、夕日の差すダンジョンの残骸から巨大な影が砂煙と共に現れた。
「……そんなまさか」
騎士の呟きと同じくして女騎士も。
「まさか……エンシェントサーペント」
砂煙から顔を出すその蛇の顔は既に蛇ではなく、ドラゴンと言われても疑わない程凶悪な顔をしている。
身体は虹色に薄く輝き、そいつの牙1本がゴールデンサーペント一匹の太さに匹敵する程のデカさだ。
「デカイ」
俺もその言葉しか出なかった。
「ぜ、全員退却!退却せよ!」
騎士の言葉に兵士は尻もちを付きながらも後退を始めた。
「そこの騎士!エンシェントサーペントを放置してどうする!これ一匹で国が滅ぶぞ!」
女騎士の言葉に撤退する足を止めた騎士。
「ならばどうする、女騎士。いや、キャサリン=ヘンドリクセン騎士団長」
「フッ、知れた事。命懸けで守るまで!」
女騎士はエンシェントサーペントへ向け下段の構えをとった。
「……命懸けで国を守るか、私は君に対していらぬ知恵を擦り込まれていた様だ。私も共に戦おう」
そして二人の騎士が国を守ると言う共通の思いでエンシェントサーペントへ立ち塞がった。
「大介さんどう思います?」
「どうもこうも絶対死ぬよねあの二人」
「ですよね……どうします?」
「どうするったって、イシスはこれだしヨッちゃんに頼るしかーー」
「私はやですよ?」
「え?」
「だって気合入れる時に声出るじゃないですかぁ」
「そういや出てたね。色っぽいやつ」
そう、彼女は命懸けで全力を出して魔力を全身へ巡らす。その際発する声が余りにもエロ……魅力的なため、今後の課題にしようとゴールデンサーペントを倒した時に話をしていたのだ。
「この姿であの声他人に聞かせても?」
「……よし、俺がやってみよう」
即答だった。
俺はイシスをヨッちゃんに預けると、一度気合を入れて立ち上がる。
異世界で初めての戦闘はスライムかゴブリンだろうと考えていた時期が俺にもあった。だが現実はどうだ?魔物が現れたと思ったらイノシシで、しかもそれをヨッちゃんに助けられ、ゴールデンサーペントに至っても俺は見ていただけ。騎士から二人を守ろうとしても蹴られて転がっただけ。こんな情けない異世界転移があっていい筈が無い。
ーー憧れたコスプレ装備を身に着けているのにこのままカッコイイ所見せないでどうするよ、俺。
俺は歩き二人の騎士の肩に手を置く。
「なっ!まだ居たのか君は」
「半裸にした部下の比例は詫たはずだ。早く逃げたまえ」
俺は肩に置いた両手に力を込める。
「何をしてーー」
女騎士の言葉を最後まで聞かず、二人を後方へと投げ飛ばす。
「なっ!!」
驚きの声が聞こえるが、今は集中。
イシスは魔法は基礎が大切だと言ったが、ヨッちゃんはそれを命懸けで魔法を使うに至った。
それに……俺にも少しあった魔力。ステータスを弄っていたと言うなら、俺にも出来るはず。
要は命懸けのイメージ。
ーー信じるぞ、女神イシス!
「う、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
地面を這うような俺の低い唸り声が、地大地と大気を振動させる。
念ずるは勝利!欲するは無敵の力!!
ヨッちゃんの叫び声が遠く聞こえる気がする。ありがとう応援してくれて!
ーーそしてーー来た!俺のイメージ!
「ビキニアーマーエンジェルフォーーーム!!」
そして俺は光に包まれた。
「キャーーーーー!」
ヨッちゃんの悲鳴と共に。
ーーーー
ーー
「なんで?なんで変身してしまったの!私やめてっていいましたよね!」
ヨッちゃんが俺の遥か後方から叫んでいた。
そして俺の姿をみて驚嘆する女騎士。
「な、なんだあの神々しい方は!」
そして騎士は狂信的視線を向ける。
「まて!あの羽根、あれは……まさか天使様!」
一体皆の瞳に俺はどう写っているのだろう。
それはそれとして、彼らの表情から俺の変身は成功したと言って間違いないようだ。
イメージしたのは天使。
コス用仮面はフルフェイスタイプから顔が出る戦乙女タイプへ。ビキニアーマーは形はそのままで、黒から輝く純白にシルバーのラインが入る。
そしてマントは天使の大羽根へ。
だが、一番俺が欲っしたのはコレ。
右手には全てを滅ぼす禍々しい破滅の剣『ディアボロス』
左手には全てを守る神々しい守護の剣『ワールドガーディアン』
イメージ通り俺は武器を得た。
俺は剣をエンシェントサーペントへ向ける。
ーー「さぁ蹂躙の時間だ」




