表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
5 奴隷商人シガル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/106

95話 幾千

森の中に広がる光景は、それはそれは綺麗なものであった。

周囲を覆う木が作り出す薄暗闇を、大量に飛び交う虹色の魂が照らし出すと、都会のネオン街を彷彿させる。

そして、その魂の一つ一つが、お前も早くこっちへ来いと。

まるで手招きしているような。


そう感じさせるのは、色が入り乱れる視界とは対照的に、恐ろしく静かであったからか。

植物達が息すらしていないと感じるほどで、周囲の空気は、一歩進む毎にどんどんと張り詰める。

そうして、幸運なことに。

いや、ムーンの言葉のとおり。

俺は誰と出会すことも無く、山の頂きへと辿り着いた。


「誰じゃおのれは。」


虹色の手招きに誘われつつ、辿り着いた頂きで俺を待っていたのは、1匹の象。

両手は腕組み、足は胡座。

地面から少し浮いたところに佇んで、全長は10メートルを優に超える。

かつて、西の大陸に突如現れ、その全てを破壊し尽くした存在。


「冒険者のゼロと言う。」


「人間か。

ここまで来る奴は何年ぶりや。

なんや、、、目線も合っとるな。

それに、1人で無傷。

あいつが通したんか、、、」


「色々と考え中のところ申し訳ないが、あんたがボス・ルチアーノか?」


「俺のことをボスと呼べるのは、ファミリーだけじゃ!

今回は見えとるし、聞こえとるって訳や。

しかもお前、薄いけど若干混じっとるなー。

それが儂に何の用じゃ?」


目を細め、値踏みするように視線が注がれる。


(何が混ざってる?)


「死地に染まろうかと。

それに、あわよくば、あんたの力を借りたいと思っている。」


この言葉が正解では無かったことはすぐに分かった。

なぜなら、空気が異様に重くなったからだ。

いや、空気だけでは無い。

身体そのものの重さが。

一気に増していく。


「ぁあ?

何やと?

自分の力で何にも出来ん奴が、、、

俺の力をやと?

そんな奴、、、

唸るほど殺して来たわ!」


「そうか。

だが、こちらも折れない事情があってね。」


「人間風情が。

懲りずに何度も何度も。

傷の一つでも付けたら、考えたるわ。

ゴタゴタ言わんとかかって来んかい!」


その瞬間。

刀が飛んだ来たのかと。

そう思わせる程の鋭利な殺気が全身に。


「傷の一つでも付けたら、、、

ゆめゆめ忘れるな。」


「これに耐えるとは、なかなか。

先ずは及第点。

それか、よっぽどの阿呆か?」


(全部出す。

今の俺のありったけを。)


内臓をひっくり返すように。

身体の奥底から、自分の一部となりつつあるものを引きちぎり、遠くへ飛びそうになる意識と共に、俺の内側から解き放つ。

目の前に現れるは、瓜二つの顔を持った2人の男。

そう。

鬼の一族、歴代最強と呼び声高いゼンとジン。


「んあ〜。

久しぶりの外か。」


「ジン。強いぞ。

ゼロ。

分かっているな?

集中しろ。」


魂を解放したからだろう。

俺の身体能力がガクッと下がったのを感じた。

それでもやることは一つ。

後ろに飛んで下がり、全ての意識を抜いた鬼月に集中させていく。


「お前ら鬼の一族か?

久々に見るなぁ、、、

もう一回死にたく無かったら、さっさと鬼の姿にならんかい。」


「気に食わねぇなぁ。」


「ジン。

しっかりコントロールしろよ?」


「同じ誤ちは踏まねぇよ、、、

刮目しやがれ!」


赤と黒。

2匹の巨大な鬼がその場に姿を現すと、即座にそれぞれの豪腕が、青い炎を纏って目標へと向かう。

振った腕の勢いで、周囲の草葉が揺れ動くほどの一撃。

が、それはボス・ルチアーノの手前で宙を切る。

切り返してもう一撃。

相手が動いていないにも関わらず、ゼンとジンの拳は当たらない。


「つまらんのぉ。」


次の瞬間。

ゼンが口から放った光線が、一直線に伸び、SFのような光景を生み出すも、それは目標の僅か斜め上へと逸れていく。


(攻撃をずらしている?)


「ゼロ!

集中しろ!」


息つく暇も無いほど繰り返される2人の強力な攻撃。

それに対する驚きも相当なものであったが、それが一度も当たらないということの驚きの方が遙かに大きかった。


「くっ!」


生まれた焦りに、練り上げた魔力が乱される。


「俺とやった時を思い出せ!」


ジンが叫ぶ。

頭を巡るのは、初めて鬼月を使った時。

あの時は、その全ての力が解放された。

必要なものは魔力だけでは無い。


「おいおい。

他に無いんか?

もう見飽きてきたがな。」


ゴゴゴゴゴゴッ!


地面が。

いや、この山自体が浮き上がり出した。


「終わらすで。

空から皆んなで落っこちようかぁ。」


「そうはさせませんよ。」


聞こえたアノニムの声。

右方に隠していた姿を現し、魔力の吸収を行うと、大量の魔力がアノニムを通じて俺に流れ込んで来る。


「じれったいのぉ!」


その言葉のとおり。

更に爆発的に高まるボス・ルチアーノの魔力。


「これだけあればいけるじゃろ。」


今度は、俺のもう一歩後ろから。

聞こえた声はローレン。


カチッ


「5秒じゃ。」


目の前のボス・ルチアーノの動きが完全に停止した。


「ジン!

戻れ!」


ゼンの一声でジンが魂に戻ると、再び俺の中へ。


「早くしろ!」


アノニムとローレンも続いて俺の中へと戻ると、最後に残ったゼンが叫ぶ。


「ゼロ!

俺たちの一族は、想いに応える!」


その言葉と共に、ゼンも俺の中へ戻ると、脳内を駆け巡るこれまでの走馬灯に思いを馳せた。

数多くの散っていった生命に祈りを捧げ、全ての鬼の魂を1つに束ねる。

皆の思いに乗せる自分の思い。


(二度と誰も傷付けさせない。)


鬼月が真っ白に輝き、その上を、赤と黒の模様が緻密に踊る。

刀身の周囲が虹色に包まれると、一瞬だがそこに刻まれる銀色の文字を確かに見た。


魕憑


この一振りには神すら宿る。


「詰めが甘いんとちゃうか!」


時間は再び時を刻み出す。


ズバッ!


目の前の空間ごと全てを切り裂いて、その一撃は真っ直ぐに振り下ろされた。


ドンッ!


浮いていた山が地面に着地すると、その衝撃がビリビリと伝わり、振った刀の重さに引っ張られて、その場に膝をつく。


(全て、出し尽くした。)



「ふっはーはっはっはっ!

ええやんけ!

惜しかったなぁ。」


先ほどと変わらない姿が、目の前で大きな口を開いて笑う。


「大したもんや。

それだけあっても、まだ力を求めるんか?」


「俺の周りにいる奴を守りたいんだ。」


「そうか。

まぁ、でも約束は約束や。

確かにこの腕についた傷。

お前の勝ちということでええやろ。

俺が本気出したら、1秒もかからんとあの世行きやったけどなぁ。

久々に外の世界でも見に行くか。」


その一言に。

ついた膝を更に曲げ、正座へと変えると、背筋を伸ばして向き合った。


「最悪の災厄と呼ばれた生涯。

殺された後は、この山を依り代にして幾千年。

約束しろ。

面白いもんを見せると。」


「飽きさせはしないさ。

約束しよう。」


「よっしゃ。

ほな、継承は3割くらいにしとこか。

いきなり5割は耐えられへんやろ。

まぁ、それ以上必要になったらまた呼べや。」


「3割?呼ぶ?」


「お前、シャーマンの力を持っとるんやろ?

そんで、俺のことはこれからボスと呼べ。

ファミリーの面倒も見たってくれや。」


ボス・ルチアーノが言ったことに更に質問を重ねたかったが、今は止めた。


「じゃあ、依り代にさせてもらうで。

たまには、外に出せよ。」


そう言うと、ボスは巨大な虹色の魂へと変わり、俺の方へと向かって来る。

それに連れられるように。

周囲を漂っていた大量の虹色の魂達もまた、同時に迫る。


(そういうことか。)


俺の意識は、かつてないほど遥か遠くにまで吹き飛んでいったのであった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ