93話 戦
アインスが目覚めた日から、3日が過ぎた。
ドゥーエの傷は完全に癒え、アインスも傷跡こそ残ったが、すっかり元気になっていた。
公宮の中を出歩くことは禁止されていたため、客室でくつろいでいると、その時はやって来る。
コンコンコンッ
「失礼いたします。」
入って来たのは、1人の執事。
「皆さま、謁見の間へとご案内いたします。
どうぞご準備を。」
「ふー。」
「鬼が出るか、邪が出るか。」
「緊張するわね。」
謁見の間。
かつて俺とアノニムが対峙した場所。
着いた扉の先は、煌びやかに光る部屋。
一直線上には、大公と、公妃。
そして、その横には騎士団長のゴース。
更には、他の公族やこの国の有力者と思わしき面々がずらり並び、その他、従者や関係者と思わしき者達が部屋の両側に座っている。
何人かは、見た覚えのある者もいた。
そして、俺たちより先に、大公に向かって立つ翠色の髪の女性。
「よく来た冒険者ゼロ。
ここに並ぶは、我がテルレ公国の執行部にあたる面々である。」
「あれが、、、」
「何と見すぼらしい格好だ。」
「秘宝のポーションをこのような者たちに無断で使うなどあってはならない。」
横のヒソヒソ話が良く聞こえる。
「静粛に。
それでは、先ずミアよりこの度の全貌を述べよ。」
「はい。
私、皇位継承権第4位。
ダルク家のミアが述べます。
最初に。
いま私の横に立つ冒険者ゼロ。
この者は、近々私の夫となる予定の者であります。」
空気が固まった音がした。
「無論私が嫁ぐ形ではありますが。
既に大公の承諾は得ております。」
この一言に、せき止められていた動揺が一斉に走り出す。
「どこかの家柄か?」
「ゼロ?聞いたことは無いぞ?」
「彼はこの街に尽力した。」
(これが、ミアの言っていた、、、)
「静粛に。
それについては事実である。
ミア、続きを。」
「はい。
今回、ポーションを使った相手は隣に立つアインスという者。
この者もまた、冒険者ゼロの妻であります。」
追い討ちの一言に動揺は止まらない。
「つまり、その者も我がダルク家の一族にあたるため、今回テルレ公国のポーションを使用いたしました。」
「何と。」
「あの様な者がミア様の夫に?」
「どのようなメリットがあるというのだ。」
「私の夫となる冒険者のゼロは、貴族や何かの出自ではありません。
しかしながら、この街の復旧に大いに尽力し、街の者であれば、誰もが尊敬の念を抱く存在です。
また、隣国においても、最速でランクB冒険者にまで駆け上がった存在。」
「聞いたことはあるな。」
「公族が平民と?」
「ランクBなどいくらでも居るではないか。」
「静粛に。
今回の件、ミアより説明があったとおりだ。
この者をミアの夫とすることは、既に私が承知している。
なぜなら、その者の実力は、この騎士団長ゴースも認める程であるからな?」
大公がチラッと目線を移すと、ゴースは頭を下げた。
「しかしながら、今回ミアが無断でポーションを使用したことは紛れもない事実。
そして、何よりこの者。
ゼロの実力を知らぬ者が多いというのも事実であろう。」
ここに来て、ミアがどのような行動を取ったのか思い知らされる。
最上級のポーション。
使用するには、幾重かの承認を得る必要があったのだろう。
例え自分の立場が悪くなるとわかっていても、この決断をしてくれたのだ。
「既に、耳の早い者には届いているかと思うが、セルカ王国のグラン。
その街の領主、グラーム・ロンダが自ら挙兵を行い、我が国へ開戦の申し入れをして来た。
ブランデ。
説明を。」
「はっ!」
長い外套を羽織った男が一歩前に出る。
「グランの街には、既に数千を超える兵が集まっております。
さらに現在、冒険者へも積極的な勧誘が行なわれているため、この数は更に増えるかと思われます。
また、他の街からも有力な貴族達が集まっていることから、最終的には数万を優に越し、早ければ来週にも進軍を開始することでしょう。」
「早すぎる!」
「それだけの数の挙兵。
隣国が黙っておるまい!
すぐに帰るハメになる!」
「いえ。
セルカ王国の進軍の間、他国が関与することはございません。
なぜなら今回の挙兵が、そこの冒険者ゼロとグラーム・ロンダの側近ドゥーエが、領主の暗殺未遂を企てたことに起因するものであるからです。
つまり、今回の戦は相手に大義名分がある。」
再び視線は俺たちに集中する。
「そんな奴とミア様が!?」
「まぁ、聞け。
ミアよ。」
「はい。
再び私が説明を。
既に、ゼロ及びドゥーエの記憶を探り、それに関して2人が無実であることは確認出来ております。
疑われる方は、その光景をこの魔眼によってお見せいたしましょう。」
「既に我々は見ており、納得している。」
大公が放った言葉に全員が押し黙る。
「むしろ、既に領主グラーム・ロンダは殺され、現在、領主の姿形をした者こそが、その起因であり、我がテルレ公国の純血派を焚き付けた存在との関わりも確認出来ている。」
「何と!?」
「既に領主は死んでいると!?」
「しかしながら、今の事実を相手国に伝えたところで、誰が信じようか?
つまり、今回のこの進軍。
民に被害を出さないためにも、国境付近で退ける必要がある。」
「誰がそんな役を!」
「我が国のどこにそんな余裕が、、、」
「ふむ。
では、どうだろうか?
この冒険者ゼロが、それを退けたのなら?
各筆頭貴族より100名づつ兵を出させる。
それに、我が私兵を加えた計3,000名。
この兵をもって、見事敵の進軍を阻止することが出来たのなら、皆も納得がいくのでは無かろうか!」
「お父様!
それは、あまりにも。」
「黙れミア!
冒険者ゼロよ。
お主の存在意義。
その力で示してみよ、、、」
「承知しました。」
「大公。
もし彼が出来ない場合には?」
ブランデと呼ばれた男が口を開く。
「この者達の首と、我が娘ミアの首。
それを持って、この戦を終わらせよう。」
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