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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
5 奴隷商人シガル

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91話 恩返し

「ゼロ様。

またこの国に何か御用がお有りで?」


門番の1人が驚いた声を出す。


「ええ。そうなんです、、、

実は、公女のミア様に取り次いでいただきたいのですが。」


「こんな時間にですか?」


「申し訳ございません。

無理や失礼は、重々承知の上です。」


「確かにゼロ様がいらっしゃった際には、すぐにミア様まで報告するように言われておりますが、、、」


そこまで喋ると、その男はしまったという顔をしたが、俺は聞こえていないフリをして続ける。


「とにかく急いでおりまして。」


「か、かしこまりました!

すぐに手配いたします。

どうぞこちらでお待ち下さい。」


俺たちは、テルレ公国の首都ミライへと再び辿り着いいていた。

道中目立つことを避けたかったため、日中は茂みに隠れ、日が沈んだ後に、俺が2人とギンを鬼の手で抱えて駆け抜けた。

結局、領主グラーム・ロンダの館を出た日の晩と、その翌日の晩に全速力で駆け抜け、この街へはまだ夜も明けない内に到着することが出来た。


「落ち着きなさい。

ゼロ。」


待っている間。

膝が小刻みに揺れる俺をフィーアがたしなめる。


「まぁ、焦るな。

お前は能力と経験に乖離があり過ぎる。

なるようにしかならん。

何かあれば、またその時に考えれば良いだけだ。」


ドゥーエの言葉。

経験の差なのだろうか。

俺とは対称的に、落ち着いた2人の言葉がはやる気持ちをやわらげる。

やがて、馬の蹄の音がこれでもかと響くと、ミアがその姿を表した。


「ゼロ様!」


寝巻きに外套を羽織っただけの格好。

俺が着いたという報せを受けて、急いでここへ来る準備をしたのだろう。

護衛の騎士達が遅れて馬車から降りて来ると、すぐに周囲の警戒を始める。


「ミア様。

すみません。こんな時間に。」


「いえ。

それより、、、急なことですね?」


その言葉に黙って頷く。


「どうぞ。

詳細は、馬車の中で。」


促された馬車の中。

全員が腰掛けると、待ち切れなかった俺が口を開く。


「ミア様。

いきなりで申し訳ございません。

実は、お願いしたいことがございまして。」


その言葉に呼応するかのように、ミアが口に人差し指をあてた。

そして、そっと目隠しを取る。


(そうだったな。)


「それではゼロ様から。」


目隠しの下から現れた宝石のような瞳。

魔眼。

目を合わせると、自分の中に何かが入り込む感覚。

優しくて。温かくて。

その目の中に吸い込まれていく。


「なるほど、、、

そちらの方がドゥーエですね?」


「はい。

私は、ドゥーエと申します。

グランの街の領主。

グラーム・ロンダの側近をしておりました。」


「見させていただいても?」


「お噂はかねがね。

もちろん結構です。」


ミアがドゥーエの瞳を覗き込み、一息つくと、口を開いた。


「そうでしたか。

グラーム・ロンダ様は亡くなられたのですね。

そして、ゼロ様。

あなた様の姿そっくりの者が、それを行ったと。」


俺がドゥーエの方を見ると、ドゥーエは小さく頷いていた。


「まずはゼロ様。

アインス様の件ですが、ご安心ください。

アインス様に例のポーションを分け与えましょう。

但し、、、

それ相応の覚悟はおありですか?」


「本当ですか!?

ええ。私に出来ることであれば!!」


「そうですか、、、

ならば、大公には私から説明を。

他の重役の者には大公より説明をしていただきます。」


「あ、ありがとうございます!」


感謝しかなかった。

俺の不安を取り除くためか。

すぐに結論をくれたこと。

その言葉に、俺の心は一気に救われた。


「良かった!」


フィーアも喜ぶ。


「良かったな。」


ドゥーエの口から出る言葉には、違和感しか感じられず、思わずその顔を覗き込む。


「何だ?

俺が言えばおかしいか?」


「いや、意外だなと。」


「ふふっ。

俺にとってこの時間は、幾ばくかの余生みたいなもんさ。」


その言葉の真意は測りかねたが、やがて馬車が公宮へと到着すると、そのままミヤに案内を受けた。


「こちらへどうぞ。

申し訳ございませんが、ここからはゼロ様だけでお願いいたします。

他の方はすぐに使用人が参りますので、このままここでお待ち下さい。

客室へご案内いたします。」


そう言われて入った部屋には、更に頑丈な扉が一枚。

ミアが鍵を開けると、中には突如現れる天井の高い部屋。

ビルの3階分はあるだろうか。

そこから氷柱のように透明な結晶が下に降りる。

そして、その先端からわずかに一滴づつ。

滴が落ちていることに気が付いた。


(まるで鍾乳洞だ。)


その滴を受けるのは、大きな杯。

四隅から伸びる鎖に繋がれて、ちょうど頭の上のところに浮いている。


ピチョンッ!


一滴落ちる毎に。

そこから溢れた液体が杯を伝うと、下のガラスの瓶でそれを受ける。


「ちょうど1人分くらいはありそうですね。」


部屋の隅に並べられたいくつかのガラスの瓶。

ミアが手に取ると、その横のバスタブの様な容器。

人1人が足を屈めて、ぎりぎり入れる程度の大きさの中に次々と注いでいく。


「アインス様はポーションを自力で飲むことは不可能でしょう。

ですので、一気にポーションの中へ沈めます。」


(そういう使い方もあるのか。)


「良いのですか?

これ程大量のポーションを。」


「ええ、、、

良いのです。」


「ありがとうございます!」


「いえ、、、

ゼロ様、それでは。」


その言葉を受け、ゲートからアインスを出すと、即座にその液体の中へとアインスを押し込む。

その僅かな時間の間に吹き出した鮮血が、金色のポーションへと混ざるが、すぐにそれは止まり、アインスの傷口が完全に塞がったことを示していた。


「これでひとまずは大事ないでしょう。」


「ありがとうございます、、、

本当に、、、ありがとうございました。」


「いえ。

それよりもゼロ様。

今後私に向けて、一切の敬語をおやめください。」


「それは今回の件と何か関係が?」


「じきにわかります。

よろしいですね?」


「わかりまし、、、

いや、分かった。」


「結構です。

それでは、アインス様をベッドまで運びましょうか。」


「ミアは俺への敬語は続けるのか?」


「はい。

当然です。」


「当然か、、、」


「ゼロ様は、私の命の恩人ですから。」


「そうか。

でも、今回の件で十分返してもらった。

ミアも俺に敬語を使う必要は無いさ。」


「とんでもございません。

この御恩は、一生を懸けて返させていただきます。」


大げさだな。と思ったが、その真っ直ぐな心持ちに心は揺さぶられる。

これ程の感謝の気持ち。

かつて抱いたことがあっただろうか。


いつもありがとうございます!

引き続きよろしくお願いします!!

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