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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
5 奴隷商人シガル

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87話 七つ目

冬の太陽は高くは登らない。


「そろそろ着くな。」


テルレ公国のミライを出て4日目。

俺たちはグランの街に戻ろうとしていた。

最初はミアのことで機嫌の悪かったアインスも、食事を重ねる毎に徐々に戻し、いつもの穏やかなアインスがそこには居た。


(美味しい食べ物って大切だな。)


「最後の昼食は何を食べさせてもらえるのかしら?」


「そうだな、、、

ハニーベアにしようか。」


「大賛成です!」


「それはまた、ご馳走ね。」


ゲートから取り出したのは、テルレ公国に行く前にギルドで受け取ったハニーベアの肉。

1キロ程の塊を取り出すと、4等分にカットする。

それから、直火でサッと表面を焼き上げて、余分な脂を落とすと、テーブルの上で薄く丁寧にスライスしていった。

全てを切り終えたら、溢れ出る肉汁と血を滴らせながら、買っていたサラダが取り分けられた、それぞれの皿の上へと肉をのせる。


「美味しそうね。」


続いて、鍋の中に果実をカットしたものを入れて煮詰めると、酸味の強いワインを加えてアルコールを飛ばす。


「ソース?」


「ああ。」


さっと沸騰をさせて、出来上がったソースを肉の一枚一枚に、一滴づつ垂らしていく。


「さぁ、食べようか!」


「はい!」


口の中に広がる肉の旨味。

何もしなくても充分に美味しいのだが、その味を、ソースの中の果物の甘味とワインの酸味がより重厚にする。


「はぁ〜。

美味しいです。」


「本当に食に関してだけはたまらないわね。」


何度食べても美味い物は美味い。

広がる幸せに全員の頬も緩む。


「やっぱり美味しいですね。」


「アインスは自分で獲ったから格別じゃないか?」


「アインスが1人で?

凄いわね。」


「ギンにも手伝ってもらいました。

それに、ゼロ様に稽古もつけていただいてますしね。」


「ふーん。

ハニーベアを1人でしょ?

元々、才能があったんじゃない?」


「どうでしょう?

最近どんどん力がみなぎる感覚があるんですよね。」


食べながら会話を重ねる。

ギンが珍しくお代わりを何度もせがんだので、俺の分を半分あげた。


(自分も手伝った獲物だから、美味いのかな?)


早めの昼食を終えた後、乗り込んだ馬車に揺られながら更に1時間。

ようやく街を囲む壁が目に映る。


「帰って来ましたね。」


「ああ。」


街に戻って借りていた馬車を返却し、前払いで払った銀貨30枚から15枚が返却されると、フィーアが口を開く。


「さぁ、行きましょうか。」



✳︎



舞台は再び【不死の森】。

今日は、天気も良いからか。

ランクが低いであろう冒険者が入り口付近を多く歩いていた。

そして、そこへ俺が来たものだから、話しかけて来る奴も多く、正直、鬱陶しかった。


(ジェンももう少し奥に居てくれたら。)


適当に会釈だけをして、ジェンの宿り木の前に着くと、一気に土の魔法で周囲を覆う。


(見られてると面倒だしな。)


「ジェン。

居るのか?」


「ああ。」


ふわっと目の前に変わらないその姿が現れる。


「約束どおりだ。」


そう言って、金貨30枚を確かに受け取ったとサインの書かれた紙を見せる。


「そうか、、、

間違いない。

彼女の字だ。

本当にありがとう。」


「まぁ、約束だからな。」


「それで。

どうだった?

どんな様子だった?」


その質問に俺は困った。

全て伝えるべきなのか。

それとも。


「様子ねぇ。

そうだなぁ。

何を伝えるべきか。」


「そう?

伝えるべきことは1つじゃないかしら?」


フィーアが口を挟む。


「ああ。

そうかな?」

(ここは、フィーアに。)


「ええ。

ジェン。そこに居るのね?

あなたの奥さんと息子は、今でも貴方の帰りを待ち続けていたわ。

あのボロボロの家で。」


目の前のジェンが今にも泣き出しそうな顔に変わる。


「でも、それもお終い。

私達が、貴方はもう死んでしまったことを伝えたし、金貨を30枚も渡したのだから、今よりはずっと良い暮らしをして、きっと新しい幸せを見つけるんじゃないかしら?」


そこまで言うと、フィーアは小さく息を吐いた。

(頑張ったな。)


「そういうことだ。

当然、良い暮らしとは呼べない現状だったが、お前からということで金貨を渡したんだ。

当然喜んでいたさ。」


ジェンは上を見上げたまま目を瞑る。


「そうか、、、

ありがとうな。

これでもう、悔いは無いな。」


「そうか。

これからどうするんだ?」

(ギルド長の件も聞きたいんだがな。)


「そうだな。

色々考えていたが、今結論が出たよ。

フィーア。

本当にありがとう。」


そう言うと、ジェンは右手を差し出した。


「フィーア。

ジェンがお前に御礼を言って、手を差し出してる。」


「そう。

そこにいるのね?」


「ああ。

ここに立ってる。」


俺がジェンの横に立って、フィーアに示すと、一歩前に出たフィーアが、その空間を優しく抱きしめた。


「お疲れ様。

もう、貴方の心配事は無いわ。」


その言葉の瞬間。

ジェンが笑って消えると、フィーアが膝から崩れ落ちる。


「フィーアさん!」


慌てて俺が支えると、アインスが寄ってくる。


「魂の継承ですか?」


「恐らく、、、」


俺はジェンの最後の晴れやかな笑顔を思い出す。


「いや、間違いない。」


「どうしましょうか?」


不安気なアインスの顔に、思わず胸が痛くなった。

(俺はいつもこんな思いをさせていた訳だ。)


「ひとまず全て済ませてしまおう。」


そう言って、フィーアをゲートの中に入れる。

(悪いな。フィーア。)


そして、木を切り倒し、土を隆起させると、想定していたとおり7つ目のフォレストロトを手に入れた。

大きさは1メートルも無い程度か。

それでも金貨100枚は超えそうな気がした。


「よし。

屋敷に戻ろう。」


「はい。」


(ギルド長の件は起きたフィーアから聞くとして)


「いよいよだな。」




引き続き楽しんでいただけると幸いです。

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