84話 チームワーク
真っ直ぐと進む道の先。
水平線へと消えて行く太陽の光を眺めていた。
パチパチッ。
ジュー!!
肉を焼く薪の火が、燃えるような夕陽に照らされて、より一層の輝きを放っては、心地良い音を周囲に響かせる。
「寒い〜。」
「ちょっと待ってくれ。」
ゲートの中から毛皮を1枚取り出して、隣の椅子に座るフィーアに渡す。
「ありがとう。」
「アインスは大丈夫か?」
「はい。
私は火のそばに居ますので。」
「そうか。
焼き加減はどうだ?」
「もうすぐ出来そうです。
どこにおきましょうか?」
「ああ。
ちょっと待ってくれ。」
ゲートの中からテーブルと皿を取り出す。
「本当に便利な魔法よね、、、
それにしてもまさか、ゴブリンとサイクロプスが一緒に出て来るなんてね。」
「珍しいよな?」
「私は知りませんでした。」
「違う魔物同士が一緒に行動してること?
偶にあるわね、、、
何か引かれ合うものでもあるんでしょうね。」
借りた馬車に乗り込んだ1日目。
御者はフィーアに任せて、順調なスピードで道中を進んでいた。
適度に馬を休ませては、目的地へと進み続ける昼も過ぎた頃。
突如姿を現したのは、全長5メートルはあるサイクロプスと、その周りを歩くゴブリンの群れ。
明確にこちらを目標として迫って来るのが伺えた。
サイクロプスの肩には、1匹だけ服装の違うゴブリンが。
(あいつが指示を出しているのか?)
「ゴブリンとサイクロプス、、?
いいわ。私に任せて。」
フィーアは集中するためなのか。
そっと目をつむると、身体の周囲を分厚い魔力が覆う。
(これがフィーアの補助魔法か?)
「行くわよ!」
その掛け声と共に勢い良く飛び出すと、驚くべきことに、ひとっ飛びで一気に相手との距離を詰め、もうひとっ飛びで高く浮かび上がった。
同時にフィーアが懐から取り出したのは小さな杖。
その尖った先端を、サイクロプスの肩に向けると、乗っていたリーダーと思わしきゴブリンが燃える。
「ギャーッ!」
対象が醜く汚い声を上げた。
空中に浮かぶフィーアは勢いそのままに、サイクロプスの一つ目を蹴り上げる。
その大きな巨体に似合わず、両手で顔を押さえてしゃがみ込んだサイクロプスの無様な姿。
フィーアはそのまま自由落下に身を任せ、下で騒いでいるゴブリン達目掛けて水の魔法をショットガンの様に放つ。
「「ギアアアァァ!」」
蛆虫のように這いずり回るゴブリン共。
フィーアが地面に到着すると、息のある奴にトドメのナイフを突き刺していく。
「ウガッ!」
膝を着いていたサイクロプスがようやく立ち上がると、フィーアにその手を伸ばした。
(遅いな。知能は低いのか。)
ヒュッ!
ローブに手を入れ取り出したものは、今度は小さな手斧。
それを勢い良く投げつける。
同時に、宙を舞うそれに杖の先端を向けると、手斧が一気に巨大化した。
ザクッ!
巨大な斧が突き刺さった先は、サイクロプスの上半身。
その身体の奥深くにまで刃を届かせると、そのまま背中から倒れて一匹の魔物の命が終わりを告げる。
フィーアがピョンっと跳び、サイクロプスの上に乗ると、引き抜いた斧はもとの大きさに戻っていた。
(魔法も武器も扱えるわけだ。
やるなぁ。)
「魔石を抜くわ!
手伝ってちょうだい!!」
「ああ!
すぐ行くよ!」
フィーアの華麗な動きを眺めていた俺とアインスも加わり、全ての魔石を回収すると、ゴブリンの死体とサイクロプスの内臓は土魔法で掘った穴に入れてすぐに燃やした。
(ゴブリンは大して美味くもないしな。)
右腕を切り落とすと、残りはゲートの中へ入れる。
皮を剥いで、肉を削ぎ、骨を取り出す。
(折角だし、これは焼肉だな。)
「今日のところはここまでにして、野営の準備を始めるか。」
「はい。」
「少し早いけど、それも有りね。」
買ったばかりの広い天幕と、その中に設置したベッドや毛皮等の寝具。
仕上げは土の魔法で、周囲の土を盛り上げて壁を作った。
これで寝ている間も、簡単な防壁に覆われることとなり、多少は安心感が増す。
「流石ね、、、」
「フィーアの戦闘も凄かったぞ?」
「ありがとう。
中々やるでしょ?」
「ああ。
本当に勉強になるよ。」
フィーアの戦いっぷりは、自分自身の得手、不得手。
それを良く知っていることの強さを改めて実感した。
「出来ましたよ。」
焼かれた肉の匂いが、食欲をそそる。
買っていた焼き立てのパンと熱々のスープをゲートから取り出すと、皆でホッとしたひと時を楽しんだ。
日が完全に沈んだら、沸いたお湯に布を浸して身体を拭き、早めに寝床へとつく。
(これは、快適だな。)
ふかふかのベッドに寝転がって思案する。
結局、今日は思ったよりも進まなかったため、このペースで行けば、ミライに着いてトンボ帰りのような日程になりそうだと予想した。
しかしながら、今日のことを踏まえると、今回はこの道中を楽しむことをメインにしようと考えていた。
本当に最悪の場合には、馬車をゲートに入れた上で、全員を鬼の手に抱え込んだ俺が全速力で走れば良い。
(今の俺なら、1日あれば往復出来るんじゃないか?)
気付けば深い眠りへと誘われていた。
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