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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
4 残された者

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71話 金糸

街の大通りを真っ直ぐに進んでいた。

時折なびく金色の髪が周囲の視線を集めるが、その髪の持ち主は脇目も振らない。

ただ数十歩進んでは振り返り、俺が付いて来ているかどうかだけを確認していた。

俺の姿を確認すると、再び首を振って、街の中を進んでいく。


(どこまで行くんだ?)


歩く速さはどんどんと早くなり、人混みもかき分けて進むと、やがて街の門へと到着する。


(街の外へ?)


予想に即して街を出ると、更にフィーアは進んで行く。

【不死の森】へと続く道から逸れた先、何もない平原へと着いたところでようやくフィーアは立ち止まり、俺の方を振り返った。

儚げな表情。

どこか泣きそうなのかも知れないと感じた次の瞬間には顔つきが険しくなる。


「ゼロ。

あなたを信じるわ。

伝えたい話があります。」


(喋った。)


初めて耳に入った声は震えていた。

そして、その言葉の後、フィーアはすぐに周囲をキョロキョロと確認する。

何事かと思ったが、俺の把握出来る範囲に特異な気配は無い。

何となくではあるが、想像はついていた。

フィーアは、あの魔人から何かしらの脅しを受けていたのでは無いだろうか。


「大丈夫ですか?」


「しっ!」


その沈黙のまま寒空の下に2人で30分程待っていたが、何の変化も起こることが無く、そこでフィーアがようやく一息ついた。


「ふう。

本当なのね、、、

本当にアレは消えたのね。」


「間違いなく本当ですよ。

あの魔人は僕の目の前で完全に消えましたから。」

(まぁ、やり残してることもあるようだがな。)


「そう、、、

そっか。

そっか、、、」


涙を零しながら何度も何度もフィーアは呟いた。

これまでの道のりを思い出していたのか。

自分を慰めるように、噛み締めるように。

繰り返し、繰り返し。


「ゼロ。

ありがとう。

私はあなたに救われたのね。」


「いえ。

意図したことではありません。

単なる成り行きですから。」


「それでも、私が助かったことは事実よ。

何か私に出来ることは無いかしら?」


「先ずは、商人ギルド長のレックスさんにご挨拶されてはいかがでしょう?

随分あなたのことを気にかけていらっしゃいましたから。」


「それもそうね。」


「後、ギルドを通して貴方に依頼したいことがあります。」


「ギルドを通して?」


「はい。

特に深い意味は無いのですが、ちょうど人手が足りてないことがあって、ギルドに頼んで冒険者を探そうと思っていたのです。」


「それなら今ここで頼めばいいじゃない?

ギルドを通せば余計なお金がかかるわよ?」


「いえ。

その辺りは個人的にきっちりとしておきたいのです。

勿論、報酬もお支払いいたしますし。」


「そう。

冒険者ギルドが好きなのね。」


「ギルド長にはお世話になってますから。

そういえば、ギルド長からの手紙には何が書いてあったんですか?」


「ふふふ。

それは内緒。

けど、今こうしてあなたと居るのはあの手紙のお陰ね。」


「そうでしたか。

とにかく、今日の帰りにでも指名依頼を出したいと思います。」


「そう。

私にとっても指名依頼をいただけるなら助かるわ。

ここのところ、全く活動をしてなかった訳だし。

ちなみにどういう内容かしら?

1人でドン・ファンクを仕留めてこいなんてのは到底無理だけれど、、、」


「食べていただきましたか。」


フィーアがニコッと笑う。


「冒険者は夢があるわよね。」


「実は今、ポーション作りを行なってまして、その手伝いをして欲しいのです。」


「なるほど。

それなら手伝えるわ。

多少経験もあるし、力になれるかも。」


「経験ですか?」


「ええ。

これでもランクBよ。

それなりの経験は積んでるわ。」


「わかりました。

では、早速明日からお願いしたいと思います。」


「ええ。

それで、かまわないわ。」


「ありがとうございます。

もう街に戻りますか?」


「まだ、もう少しここに居たいわ。

もう少しだけ。

この空を目一杯眺めたいの。」


「わかりました。

お付き合いしますよ。」


「ありがとう。」


寒空の下に吹く一陣の風、なびく金髪が透き通る空気の中によく映える。

身体が冷え始めた頃にようやく俺たちは帰路へつき、街の広場でそれぞれ別れた。


俺はその足で冒険者ギルドへ向かうと、いつも通りに受付でレミアに話しかける。


「まだギルド長は戻りませんか?」


「はい。

一度戻られたのですが、再び出かけられまして、、、」


「そうですか。」

(お礼はまたにするか。)


「ドン・ファンクの残りの取り分をいただきたいのですが?」


「それでしたら、ギルドの分も合わせてあちらにご用意しておりますので、よろしくお願いいたします。

後、こちらは直接お渡しいたしますね。」


レミアが受付の奥から持って来たのは、30センチ以上ある黄色に輝く魔石。


「ドン・ファンクですか?」


「そのとおりです。」


見た瞬間にすぐわかった。

勿論、その見た目の大きさやこのタイミングということもあったが、中に凝縮された魔力の量を感じ取ったからだ。


(これでポーションを作ることが出来れば。)


俺の取り分とギルドの取り分に分けられたドン・ファンクの肉や素材をゲートに入れると、フィーアへの指名依頼と、屋敷の掃除の依頼を出す。


「報酬はそれぞれどうしますか?」


「どれくらいが妥当でしょうか?」


「指名依頼は、フィーアさんがBランク冒険者ですのである程度の金額はギルドとしてもいただきたいですね。

もう話はついてるのですか?」


「依頼を受けていただくことは既に了承をいただいてます。」


「そうでしたか。

良かったですね。

それでは、明日改めてギルドに来ていただいた際にお話しましょうか。」


「わかりました。」


その後、街でいくつか買い物をして、俺はアインスの待つ屋敷まで戻ることにした。


いつも読んでいただきありがとうございます。

今年1年間ありがとうございました。

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