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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
4 残された者

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66話 料理人


二階の用事はあえなく終わり、待ち合わせの時間まで、周辺で買い物でもしようかと考えていた。


(酒が欲しいな。)


屋敷にある程度の酒は置いてあるが、マグガーラを含む職人達に振る舞うには、心許なかった。


(あいつらの飲む量は凄いからな。

この宿の酒もいくらか買わせて貰うか。)


そう考えると、出かける準備で忙しいのだろう。

厨房から姿を消した宿屋の主人を待つために、食堂のテーブルに座って待っていた。


(腹が減ったな。)


食堂には、俺以外に2人が昼食を摂っていた。

先ほどまでは、かなりの人数が座っていたが、それも済んだらしい。

机に肘をつきながら、しばらくボーっと1人が食べている様子を座って眺めていると、スラッと背の高い顔立ちの良い男が俺の対面にドカッと座る。


「お前がゼロか?」


(いきなりだな。

面倒事か?)


見たところ俺と同じくらいの年齢か。

そのいきなりの態度に、良い予感は全くしなかった。


「ああ。

そうですが?」


「敬語は要らない。

俺の名前は、ベッシュ。

聞いたことあるか?」


「いえ、すみません。

あまりその辺の情報に疎くて、、、」


「もう一度言うが、敬語は要らない。」


「わかった。」


「俺がそもそも苦手だからな。

まぁ、そりゃそうか、、、

突然話しかけて悪いな。

だが、俺はお前を知っている。」


「なるほど、、、

話しかけてくれたことは別にかまわない。

それで、ベッシュ。

俺のことを知ってくれているようだが、一体俺に何の用だ?」


「いや、一度近くで顔を見てみたくてな。」


「顔ねぇ。

噂になる程のモノじゃあ無いと思うが。」


「別に俺もお前の顔を本当に見たい訳じゃあ無いよ。

お前がこの近隣諸国の冒険者の中で、今一番勢いがあるって聞いてな。」


「そうなのか?

まぁ、そうなのかな。

毎日自分の力を全て出し切っているだけだけどな。

後は、周りの人に恵まれていることは事実だろうな。」

(アインスは綺麗だし。)


「そうか。

それは確かに大切なことだな。

その点は俺も同じだ。

常に毎日が全力だ。」


「そうなんだな。」


「ああ。そうだ。

ゼロ。

これから、お前は何を目指して冒険を続けて行くんだ?」


(やけに踏み込んで聞いてくるな。)


「大したことじゃない。

ただ、自分の意思や考え方は、自分をどこまで連れて行ってくれるのか。

そのことに興味はあるな。」


「何だそれ?」


「さぁ。

俺も良く分からん。

後は、見たことの無い景色を見たいとかかな。」


そう答えると、目の前の男はフフッと笑った。

つられて俺も笑う。

不思議な空気が流れていた。

俺と目の前のそいつの僅かな間に、緊張と緩和が織り込まれた不思議な空気が回っていた。


「おい。

こんなところに居たのか。」


静寂を破ったのは宿屋の主人。


「少し話してみたかったんだよ。

親父。」


「親父?」


「既に挨拶は済ませたのか?」


「まぁ、軽くね。」


「俺からも紹介する。

こいつは、俺の息子のベッシュだ。

料理人を目指してる。」


「改めて。

よろしく頼むよ。冒険者ゼロ。」


差し出されたその手は、顔に似合わずゴツゴツとした指で、先ほどの言葉が嘘では無いことを示して、俺に積み上げている努力を容易に想像させた。


「おい。

ゆっくりしてないで準備しろ。」


「わかってるよ。

少し待ってくれ、、、

ゼロ。

俺たちの準備が待っている間に、昼飯の余り物でも食っておいてくれ。」


「悪いな。」


「今日は俺が朝から仕込んだんだ。

美味いから覚悟しておけよ。」


「期待してるよ。」


俺の言葉を背に受けたベッシュが厨房へと戻ると、底の深い皿を持って再び現れる。


「ん?」

(サラダか?)


「どうせ肉しか食ってないんだろ?

たまにはこういう物も食べときな。」


「余計なお世話だが、有り難く貰うよ。」


皿の中には、レタスの様な葉物の野菜の上に、フルーツが散りばめられ、その上に薫製の肉がコマ切れにされて載せられていた。


キラキラと艶めいて光るのは、ドレッシングのせいだろうか。

野菜は別に好きでも嫌いでも無いのだが、なぜかその皿には、異様に食欲をかき立てられた。


シャキッシャキッ!


空腹もあったことから、急いで一口。

放り込んで驚いた。

野菜の苦味とフルーツの甘味。

肉の塩味とドレッシングの酸味が絶妙なバランスで合わさっていたからだ。


「美味いだろ?」


「何してんだベッシュ!!

早く用意しろ!!」


「あいよ。

今行くよ。」


(これは、美味いな。)


「ゆっくり食べろよ。」


俺の驚いた顔を満足気に見ながら、ベッシュは父親のところへと向かって行く。


味のバランスもさることながら、かかっているドレッシング。

これがまた美味しかった。

ベースはオイルだが、香りが高く、前世のトリュフオイルを彷彿させる。

そこに加えられているのは、ブドウ酢に近い酸味。

(いくらでも入るな。)


山盛りの一皿があっという間に空になると、改めてプロの作る料理の凄さを認識した。


(まぁ、それよりも、、、)


このベッシュという男の名前が、それ以上に強く俺の中に刻まれたのは、言うまでも無いだろう。


いつと読んでいただきありがとうございます。先週すみません。

添削いただいた方ありがとうございます。

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