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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
4 残された者

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59話 再会

次の日もその次の日も。

そしてそのまた次の日も。

アインスの耳にピアスを開けた日以来、俺たちは毎日【不死の森】へと潜っていた。


ここに来ると心が落ち着く。

透き通った空気に紛れる衣擦れの音や、ザクッザクッと地面を踏み締める足音が良く響き、身体を自分の意思で動かしているという実感が沸々と湧いてくる。

口から出る吐息がすぐ隣の耳に入り、沈黙が自身と向き合う時間を増やす中、次々に現れる思考を巡らせてはその場に捨てていく。


本格的な冬が近づいているからだろうか。

魔物はいつも以上にその姿を見せない。

この1週間程度。

午後から行われるセーラの店でのポーション作りのため、マグガーラと入れ替わりで屋敷を出て【不死の森】を訪れていた。

毎日平均して5〜6体程の魔物しか狩ることが出来ていないというのが現状だったが、それでも、俺が半径50メートル程の気配を感じることが出来ることもあるため、その数字は他の冒険者に比べれば遥かに良いものであった。

(まぁ、ゴブリンやコボルトやらが多いがな。)


そんな中、今日は1つ試してみたいことがあった。


「ギン。

お前、強い魔物がどこに居るか分かったりしないか?」


そう。

いつも街中以外では、アインスの後ろを歩いているギン。

まだ幼いとはいえ、ギンも魔物の1匹であるには違いなく、本来であれば、親に付いて狩りを学ぶ時期なのだろうが、獲物を見つけるという点においては、森の中でも最強を誇るムーンの血を引いているのだから、そのポテンシャルの高さは相当のものだろう。

何しろ俺がギンの親と対峙した時、死を確信した程だ。



「ヴァウ!」


ギンは、元気良く吠えると目を閉じてしゃがみ込み、じっと動かなくなる。


(寝てるんじゃないだろうな?)


やがて、スッと立ち上がると再び吠えた。


「ヴァウ!ヴァウ!」


いつもとは違った顔付きで俺とアインスの方を振り返ると、すぐに吠えた方向へ走り出す。

途中で立ち止まってはこちらを振り返り、俺達が付いて来ているかを確認すると、再び森の奥へ。

何度か繰り返されるその光景を見ながら、しばらく付いて行くと、やがてゆっくりとした動きとなり、その場に座り込んだ。


(見つけたか。)


ギンのもとへ足音を消して近寄る。

目線の先に居たのは見覚えのある姿。

黄金色の毛並みとその大きな身体。


そう。

ハニーベア。


冬の前に栄養を蓄えるためか。

大きな樹から溢れる樹液を器用に舐めていた。


「でかした。」

小声でギンを褒めてその毛並みを撫でてやると、アインスに手で合図をする。

俺が狩っても良かったが、折角の機会だ。

これを逃す手は無い。

万が一アインスが仕留め損なったとしても大丈夫なように、鬼月に手を添えて、魔力を流し込む。

目の前に座るアインスの表情から、緊張した面持ちが伺える。


ハニーベアは樹液を舐めるのに夢中で、このまま行けば、背後から先制を取れそうだった。


「いけるか?」


「はい。」


草陰からアインスが静かに近づいていく。


パキっ。


踏んだ小枝が小さく鳴ると、途端に振り返ったハニーベアが両手を大きく上げる。

気付かれたのであれば仕方がない。

アインスはすぐに駆け出し、勢いそのままに地面を蹴って飛び上がり、その右手に姿を現した剣を大きく振る。

咄嗟にハニーベアが、迫る剣から自分の正中線を守ろうと両手を前に出した。


(いける!)


そう思った次の瞬間。

その真紅の剣から何かを感じ取ったのか。

軽やかに飛び上がる。


(早い!?)


飛んだ先は先ほどまで舐めていた樹の幹。

片手を回し、足の爪を引っ掛けて掴まり、そのまま宙に滞在する。


じっと。

地面に降り立ったアインスを睨み、周囲に何度か首を振る。

そして再び視線をアインスに戻すと、更に注意深く視線を向けていた。


(探っているな。)


やがて、開いた上下の口の間に糸を引かせると、樹を蹴り上げ、一瞬でアインスへと間合いを詰める。


「ガアアアアアアアア!」


ドンッ!


アインスに向けたその一撃が大量の土煙を上げさせるが、それがアインスを捉えることはない。


(俺と普段やり合ってるんだからな。)


そう思い振り返った先に、先ほどまでいたギンの姿が消えていた。


「ギン?」


再び銀色の毛並みに包まれたその姿を捉えたのは、ハニーベアの足元。

アインスに危険が迫ったと思ったのか。

小さな身体で、必死にハニーベアの足元に食らいついていた。


「ヴルルルッ」


勢い良く噛み付くギンに虚を突かれたハニーベアが、鬱陶しそうに足を振る。


(バカが。)


戦闘における一瞬の隙。

アインスはそれを見逃す程度の実力では無い。

首にスッと線が入ると、剣身と同色の飛沫があがった。


ドサッ。


「ふう。」

(分かってはいても緊張するな。)


「アインス!良くやった!」

歩み寄り声をかけると、アインスは深々と頭を下げた。


「ありがとうございました。

ギンもありがとう。」


「ヴァウ!」


終わってみれば、呆気ない幕切れ。

首から上が無くなったハニーベアの血を抜くと、ゲートの中に仕舞い込む。


アインスとギンの嬉しそうで、自信の漲った顔を見ながら、俺たちは街へと戻ることにした。



いつも読んでいただきありがとうございます。

貴重なお時間をありがとうございます。

私用で更新が減ってることお詫びします。


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