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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
4 残された者

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57話 飛び込み

ぐ〜


「お腹減ったよな?」


「すみません。

鳴ってしまいまして。」


アインスのお腹が昼時を告げると、再び広場まで戻って来た俺たちは、教えてもらった宿屋のドン・ファンクへと向かった。


「いらっしゃい!」


受付の快活な中年女性の声。


「こんにちは!

冒険者のフィーアさんがこちらに泊まってるとお聞きしまして。」


「フィーア?

あぁ。確かに泊まってるねぇ。フィーアに何の用だい?」


「伝言を頼まれているので、それをお伝えしたくて。」


「そうかい。

でも、食事以外は出てこないからね。

それも、人目を避けて。

今も隣の食堂は昼飯時だけど、もうちょっと後で降りて来るんじゃないかね?」


「わかりました。

ちなみに、我々もお昼御飯をいただくことは出来ますか?」


「あぁ。もちろんさ。毎度あり。

旦那に言っとくよ。

そのかわり1人銅貨10枚づつ貰うよ。」


「はい!

分かりました。」


受付で20枚の銅貨を支払い、しばらく待っていると、隣の食堂へと案内される。


「食べながらゆっくり待たせてもらうか。」


「そうですね。」


座ってすぐに運ばれて来たのは、ライスの横にゴーニャの肉をサイコロ状に細かくカットしたもの。

それとサラダがワンプレートに乗っている料理。

ゴーニャはヤギの様な見た目で、畜産もされている。

やはり人間が住める環境だからか。

前世と名前こそ違うものの、似た食材は多い。


スプーンで頬張った肉の旨味が口いっぱいに広がると、たまらずライスを追いかけさせる。

(バターライス?)

ひと粒ひと粒がコーティングされたパラパラとしたお米が、さらに口の中の旨味を押し上げる。

一緒に付いて来たドリンクはヨーグルトのような酸味のある飲み物。


(トルコ料理みたいだな。)


シンプルな味付けが、食材の旨味を引き出し、素朴だが味わい深いその食事。

時折挟むドリンクの酸味が口をリセットしてくれる。

ペロリと食事を楽しんだ後、追加で果物のフレッシュジュースを銅貨6枚で頼み、アインスと会話をしながら待つこと1時間。

食堂には俺とアインスだけになっていた。


(今日は出てこないか?)


そう思った矢先に聞こえてきたのは、階段を降りてくる音。


トンっ、トンっ、トンっ、トンっ。


(来たか?)


白い肌に金色の髪。

フードの中には整った顔立ち

ローブを纏ったその姿から想像出来るのは、魔法を得意とする者なのだろうか。

俺たちから離れたテーブルに座ると、運ばれて来た食事を無言で口に運ぶ。

これだけ美味しいにも関わらず、"こなす"と言う表現が適当であると感じる程に、淡々と食事を口に運び続ける。


俺の視線が廊下を挟んで、受付の女性の視線と交差させると、女性は小さく頷いた。


(やっぱりこいつか。)


「フィーアさんですか。」


ピタッと手を止め、俺を見上げる。


「冒険者のゼロと申します。

言伝を頼まれておりまして。」


みるみる内に青ざめる顔。


(何か不味かったか?)


「実は、商人ギルド長のレックスさんが、最近のあなたを心配しているようで。」


その瞬間。

露骨にホッとした顔をした彼女は、首を小さく横に振って、スプーンを置いた。

そして、そのまま立ち上がると、部屋の方へと戻ろうとする。


(何だ?戻るのか?)


「ちょっと待って下さい!

もう一つだけお伝えしないといけない事が。」


そう言うと、振り返った彼女は哀しげな顔で俺を見つめる。

何も喋らないでくれ。その表情が俺にそう訴えかけているような。

しかし、俺の方も簡単に諦める訳にはいかない。


「あの魔族なら死にましたよ?」


独り言の様に聞こえるか聞こえないかで呟くと、先ほどの顔が驚愕の顔へと変わる。

「う、、、っ!?」


何かを言おうとしたのか、すかさず手で口を抑えて左右に首を振る。


「詳しくは話せませんが、私は確かにあの魔族が死ぬところを見ました。」


そう言うと、思いつめたような顔で、何かを訴えかけるように口を開くが、声は出さない。


再度、首を横に振ると、踵を返して再び部屋へと戻って行く。


「アイツに何か脅されてるんですか?

でも、もうアイツはこの世に居ませんよ?」


言葉を投げかけても、それは届かず。

フィーアはそのまま部屋へと戻った。


「また、来ます。」


俺は去って行くその背中に投げかけた。

(気長にやるしかないか。)


「俺にミアの能力でもあればなぁ。」


「難しいですね。」


帰り道。

思わずアインスに一言ボヤく。

その時、視界に入ったのは本日最後の目的地。

老婆のセーラがやっているあのポーション屋。

店の前で作業をしているセーラに声をかける。


「セーラさん。お久しぶりです。」


「あら、ゼロさん。久しぶりね。」


「最近はどうですか?

薬草はまだ足りてますか?」


「そういえば、少なくなってきてたわね。」


「僕の方も、この前作ったポーションを殆ど使ってしまって。

明日から、また作りに行っても良いですか?」


「それは、勿論ですよ。」


「ありがとうございます。

一つ伺いたいのですが、心の傷を治すようなポーションってあるんですか?」


「心の傷ですか。

私は聞いたことが無いねぇ。

でも、きっと時間をかけて本人が治していくしか無いんじゃないかねぇ。」


(流石にそれは無いか。あるとすれば、薬物の類になってくるか。)


「それでもその傷が埋まらないなら、他の事で薄めるしか無いかねぇ。」


「薄めるかぁ、、、」


「ごめんね。

年寄りのつまらん言葉で。」


「いえいえ。

ありがとうございます。

また、行かせていただきます。」


「お待ちしております。」


そうしてこの日の用事を全て済ませると、俺たちはようやく屋敷へと戻って行った。



いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマークありがとうございます。

引き続きよろしくお願いいたします。

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