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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
4 残された者

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55話 商人ギルド

起きたベッドの傍らにアインスの姿はない。

ぼーっとした頭に、キッチンから小気味良いリズミカルな音と香りが流れ込んでくる。


(朝食、、、作ってくれてるのか。)


下着姿にさっと外套を羽織ると、屋敷の外に出て門を開ける。

今日からまたマグガーラが職人達を連れて来る予定だからだ。


「おはよう。」


「おはようございます。」


「ありがとう。」


「いえいえ。私がお腹減っちゃったので。

もうすぐ出来上がりますから、向こうで待っておいて下さい。」


「わかった。ありがとう。」


応接室のカーテンと窓を開き、朝の光とひんやりとした風を迎えると、アインスお手製の朝食が湯気をたてて現れる。


「今日は冷えますねぇ。」


「そうだな。」


早速手に取った皿の上に盛られた朝食は、焼いたパンの真ん中に、酸味のあるソースで煮込んだ野菜と、塩漬けにした後燻製したコボルトの肉を挟み込んだもの。

大きく口を開けて一口。


「美味っ。」


口の中いっぱいに広がる幸せに頬が緩む。


「燻製の香りが物足りないですね。

今度、家で作ってみますね。」


「そうか。ありがとう。」

(アインスって何気にグルメだよな。)


作ってくれたパンをペロリと2つ食べ、そのまソファに転がって、窓越しに外を眺めていると、門の方からぞろぞろと人が入って来る。

(おいおい。)


先頭を歩く男が勢いそのままに口を開いた。

「ゼロ!!居るかー!!」


職人ギルド長のマグガーラだ。


「おいおい。何人来てんだ?」


「朝からお元気ですね。」


「本当にそうだな。」


ざっと見たところ、マグガーラの後ろには、20名は優に超える屈強な男たち。


「ゼロー!!」


「おはようございます!」


「おう!そこか!!

今日からまた再開しても良いんだよな?」


「はい!よろしくお願い致します!

それにしても凄い人数ですね!!」


「お前の人望の厚さだよ。

みんな、他の仕事を一旦置いて来てくれてるんだ。」


(何かお礼しないとな。)


「おう!

また、考えておいてくれ!」


俺の考えが伝わったのか、そう言って、マグガーラがガハハと笑う。


(凄いおっさんだな。)


頬を緩ませながら、何だかんだで信頼しているこの職人達に屋敷のことは任せ、俺たちは出掛けることにした。

着替えてアインスと共に向かった先は、商人ギルド。

そう。

ラダンからの依頼の先。


「いらっしゃいませ。」


「すみません。

レックスさんはいらっしゃいますか?」


「どのようなご用件で?」


「テルレ公国の大商人ラダン様より、手紙を預かっておりまして。」


「ラダン?

では、お預かりしてお渡ししときます。」


(疑われているか?)


「私、この街の冒険者のゼロというものなのですが、これは、奴隷商のシガル様の依頼でテルレ公国に行った際にラダン様より頼まれたものなのです。

ラダン様よりくれぐれも直接渡すようにとご指示いただいておりまして。」


「うーん。

少々お待ちいただけますか?」


「はい。すみません。」


こういう時には前世の経験が役に立つ。

担当者で判断出来ないように仕向ければ、自ずと話は目的地にたどり着く。


10分程待つと、先ほどの受付が戻って来た。


「お待たせいたしました。

ギルド長がお会いになるそうです。」


「ありがとうございます。」


「こちらへどうぞ。」


案内された先は、テーブルと簡単な椅子のみの質素な部屋。

派手な飾り付けは無く、置かれたテーブルの向かい側に1人の男。

年齢は70を超えているだろうか。

綺麗な白髪を後ろに流してまとめている。


「俺に用があるんだってな?

期待のルーキー。」


「知っていただいているとは恐縮です。

こちらをテルレ公国の商人ラダン様からあなたにお渡しするようにと。」


「ラダンの小僧が。

俺に手紙を寄越すとは。」


そう言って手紙を取った手には深い皺。

そして、長く細い指に繊細さを感じとる。

だが、それとは不似合いに、レックスは封蝋をボロボロと壊して手紙を開いた。


「、、、なるほど。

あの小僧。」


(何が書かれてる?)


「ルーキー。どのくらい知ってる?」


「いえ何も。」


「元々、シガルはラダンの商会で働いていた。

と言っても、父親の下だかな。」


(シガルの話、、、)


「そうなんですね。」


「それが、独立するって言うんで、こっちで商売を始めるにあたって、俺が紹介を受けた訳だ。」


「はぁ。」


「ふん。ハッキリしないなルーキー。

欲しいんだろ?

俺の持つシガルの商会の権利が。

いや、正確には出資した分に応じた権利か。」


そう。

あの時ラダンの手元からこぼれた1枚の紙。

それは、シガルの商会の権利を持つ者の一覧だった。

連名で書かれたその紙にはラダンやレックスの名前とサイン。


「手紙の中身は聞いてるか?」


「いえ。全くです。」


「正直俺はシガルやら、ラダンやら、お前がどうなろうが興味は無い。

裏で小細工してるんだろうが、どうせシガルの商会の権利を持ってても入ってくる金は端たもんだ。

それよりも俺は毎日、新しい商売を考えるのと、若手の育成で精一杯ってことよ。」


「はい。」


「だが手紙の中で気になる話もある。

一つ頼まれてくれないか?」


「何でしょうか?」


「この街にフィーアという冒険者が居るんだが、最近全く街中に姿を見せないらしい。」


(フィーア?知らないな。)


「まぁ、色々あったようなんだが、、、

俺が少し気にかけてる奴でな。

ちょっとそいつの力になってくれないか?

上手くいけば、この件考えてやっても良い。」


そう言って手紙をひらひらさせる。


(冒険者ねぇ。)


「わかりました。

お時間を頂きありがとうございました。

失礼いたします。」


「楽しみにしてるぜ。」


片側の口角を上げた商人ギルド長のレックスに背を向けて、その場を後にした。


いつも読んでいただきありがとうございます。

引き続きよろしくおねがいいたします。

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