53話 凱旋
「さぁ、行くか。」
しばらくお世話になった部屋の中を片付けて、帰る準備をしていると部屋の扉が叩かれる。
コンコンコンッ!
「はい。」
扉の先には、最後の朝まで邪魔をしてきたいつもの侍女。
そして、その手には1枚の紙。
「大公様よりお預かりして参りました。」
(そういえば、昨日渡してたか。)
昨日の食事の際にクエストの完了報告を行った後、受領印を貰うために、ギルドで受け取った紙を渡していたことを思い出した。
「ありがとうござます。」
(とりあえずギルドに向かうか。)
お礼を言って、すぐにポケットへしまうと早速ギルドに向かうことにした。
アインスと話しながら公宮の玄関口へ向かっていると、アインスが不思議そうな顔をする。
「どなたかお探しですか?」
「えっ!?」
驚いてしまった。
そう。
自分でも知らない内にミアの姿を探していることに気付いたからだ。
「いや、俺もこんな立派な建物に将来住めたらなぁ。と思って。」
「そうですね。でも、ゼロ様ならきっとこれよりももっと大きな建物に住めますよ!」
「そうか。ありがとう。」
(上手く逸らせたか、、、?)
冷や汗を一つ流して広場のギルドへ。
「お久しぶりです。」
中に入って奥へと進むと、受付の女性が声をかけてくる。
「完了報告に参りました。」
「はい。お待ちしておりました。」
いつもの様に、受付台にクエストの紙とギルドカードを置く。
「お預かりしま、、、えっ!?」
「どうかされましたか?」
「しょ、少々お待ちください!!」
そう言うと、その女性は受付の裏へと入っていく。
(デジャビュー?)
アインスの顔を見るが、アインスも首をかしげて、何が何だかといったような表情。
しばらくして、ようやく戻って来たその女性は深くため息をついて、大きく息を吸い込んだ。
「お待たせいたしました。確認をさせていただいておりましたのでお時間をいただきました。それでは、今回のクエストの達成が確認されましたので、どうぞ報酬の受け取り口まで。」
「ありがとうございます、、、」
お礼を告げて、横の窓口に向かうと、別の担当者からまず渡されたのは、金貨10枚。
そして、返ってきたギルドカードを見て驚いた。
今期 105,000PT
累計 105,000PT
カードにこの2つが並んでいたためだ。
(Cランクだから2行になったのか。ってか、そんなことよりも、、、)
「ゼロ様。いかがでしたか?」
アインスが尋ねてくる。
「見てくれ。」
「はい。えー、、、えっ!?」
「凄いよな?」
「はい。凄いですね。
この依頼1つでBランクに上がれるんじゃないですか?」
「そうだよな。
帰って確めてみるか。」
(ここまでしてもらうと後が恐ろしいな。)
ギルドを出た後、背後に聳える公宮を振り返る。
改めて国のトップというものの凄さを実感する。
得たものは大きいが、その分しがらみも多くなりそうだ。
そして、その足でそのままラダンの屋敷へ向かった。
相変わらず、広い庭には大量の馬車と荷物が。
それを眺めていると、銀色の弾丸が一直線に走ってくる。
「ヴァウ!」
片膝ついて迎えた俺を通り過ぎて、アインスの胸元にすっぽりと入り込む。
「ギン!元気だったか?」
「ヴァウ!」
「そうか!!」
「昨日以来ですね。」
「あっ。ラダン様。
本当に色々とありがとうございました。」
「いえ。こちらこそ。
本当にありがとうございました。
ギン殿にもこの庭で目を光らせていただいておりました。
ところで、もう戻られるのですか?」
「ええ。今から街を出ようと思っています。」
「そうですか。
この国の者。そして今回の件に関わった者はきっと貴方のことを忘れない。
どうか本当の故郷だと思って、いつでも頼ってください。」
「ありがとうございます。」
「シガルの事は私の方からも色々と探りを入れつつこの屈辱を返してやりたいと思います。
ただ、国境を挟めば別の国。
動きづらいというのも正直なところです。
一度殺されかけた身。
しかし、実際に今私が動けば戦争にもなりかねない。
それは、避けたい。」
庭の馬車や積荷を見ながらラダンが喋る。
(そりゃそうだ。)
「戻った時にきっとシガルは何かを企てているでしょう。
しかし、あなたが今回生き残っているということを考えれば、すぐに手を出してくるということも考えにくい。
ゼロ殿。しばらくの猶予がございます。どうかご無事で。」
そう言って手渡されたのは大量の金貨が入った巾着袋。
「お金はどれだけあっても困りませんから。」
「いえ、こんな大金、、、受け取れません。」
「いいのです。私にすれば大した金額でもありませんから。どうぞ。」
俺の掌に強く握りしめさせた時にひらりと紙が一枚落ちる。
「おっと。」
(ん?何だ?)
「これは失礼いたしました。
それでは、旅のご武運をお祈りします。」
「こちらこそ、本当に良いのですか?」
「良いのです。これは、投資なのですから。
そういえば!」
ラダンが思い出したかのように手を打つ。
(下手な芝居だな。)
「良ければこちらの手紙も一緒に運んでやっていただけませんか?」
「もちろんです。どちらへ?」
「セルカ王国のグランに住む商人レックスのもとへ。」
(そういうことか。)
「ちなみにその方は、ラダン様とはどの様なご関係なのですか?」
「我が商会の先代。
つまり私の父親が随分と仲が良かったようです。
一緒に商売を何度もしたと聞いております。」
「そうなんですね、、、わかりました。
間違いなくお届けすることお約束いたします。」
「そうですか。それは安心です。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。」
「ええ。それでは。」
別れを告げると、ラダンの屋敷を去り、いよいよ街を去ろうという時。
門の近くで威勢のいい声が聞こえる。
「おいおい!
今日は広場で重大ニュースがあるらしいぜ!」
「行こう行こう!!」
貴族の子達か何かだろうか。
恐らく純血派の処刑の話だろう。
それが民衆の活力になるのだ。
この世界ではそうなのだ。
目の前の些細な会話は、自分が前世に住んでいたところとの違いを改めて実感する。
遥か遠くまで来たのだと。
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