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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
3 テルレ公国

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51話 晩餐

商人ギルドと職人ギルドに運び込まれたその日の資材や物資を、街中に配っては廃材などを回収する。

それが終われば個別の依頼。

日が傾き出すと、公宮に用意された部屋へと寝に帰る。

そんな生活があっという間に過ぎて行き、クエスト当初から既に三週間近くが過ぎようとしていた。


深まる冬と共に、ゆっくりと。

少しずつではあるが、街にポコポコポコ。

活気が泡みたいに湧き始めていた。

どうやら、再開する店なども出てきているらしい。

これから何度も湧いては消える泡が、やがて街中を覆い尽くさんとなることを今は祈るばかりである。


「ゼロさーん。こっち!こっちです!」

「ゼロ!後で寄ってくれ!」

「ゼロさん。これを南にある実家へ届けていただけないかしら?」


街中を歩いていると次々に声をかけられる程、このミライという街では有名となっていた。


「冒険者が皆、あなたの様なお人ならね。」


そう言いながら、渡される差し入れも数え切れない程で。

手助けとなるつもりが、何かこっちの方が胸を温かくさせられるような。


ちなみに、ミアは時々顔を出しては俺と共に街の中を周った。

相変わらず、街中に出ると凄い人気だ。

(他の公務もあるだろうに。)


そして、そんな今日は寒空が広がる中で、ミアと共に街中をまわりながら、そろそろグランの街へ一度戻ろうかと考えていた。


「一旦グランへ帰るか。」


「そうですね。」


まだまだ復興には時間がかかりそうだったが、グランの街でリフォーム中の屋敷も気になっていた。

ミアにその旨を伝えると、残念そうな顔をしていたが、すぐに「わかりました。」とだけ言って公宮へと戻って行った。


いつもの様に依頼を済ませて夕方頃に公宮へと戻る。

出会った者には、明日一旦帰ることを伝えた。

どの人、どの人も、深い感謝と残念な思いを伝えてくれた。


部屋に戻ってお互いがそれぞれお湯で身体を拭く。

風呂もあるそうだが、時が時だけに今は使われていないそうだ。

さっぱりした後、アインスと良い雰囲気になると、扉の向こうから声がする。


「ゼロ様。

本日は最後の夕食となりますので、このお部屋ではなく宴席の間へとご案内致します。

どうぞこちらへ。」


「はい。」


俺とアインスの情事が行われようとする度に邪魔をする見慣れた侍女の案内を受けて、公宮の中を進む。

案内されたのは謁見の間と同じく厳かな扉。


「どうぞ。」


開かれる扉。

その向こう側には。


豪華絢爛。

荘厳華麗。


奥まで伸びる長いテーブルに純白のクロス。

あちこちに施された金の刺繍。

両サイドに並んだ華美な服装。

その端の中央に座るのは、テルレ公国の最高位であるムー大公。


一斉に集まる視線と余りに場違いな俺たちの服装。


「こちらへ。」


引き継いだ侍女に案内を受けたのは、大公の正面の末席ではなく、すぐ横の席。


(おいおい。良いのか?)


全員に見送られながら、席へと着くと、周りに立つ執事達が歌を歌い出す。

(あの戦闘には巻き込まれなかった者達か。)


国歌か何かなのだろう。

皆が口ずさむ。

同時に、塩や胡椒といったスパイスがそれぞれの目の前に置かれると、その後もワインや今日のコースの説明。

栓を開けての毒味など、様々な儀礼が行われ、ようやく乾杯の運びとなる。



「冒険者ゼロ。

先ずは、我が娘ミアの依頼により、公宮へ侵入を行った者達を退けたこと改めて感謝する。

そして、その力を見込んで私が復興のための指名依頼を出したが、想像以上の力を発揮してくれた。

まだまだこの街に居て欲しいというのが本音だが、また戻って来るという話も聞いている。

今日は大いに楽しんでくれ。


テルレ公国に。

復興に。

そして、冒険者ゼロに。」


全員がグラスを小さく上げると、いよいよ絢爛な料理が運ばれ出す。

早速楽しもうと思ったのも束の間。


大公がテーブルを囲む者達を1人づつ紹介していく。

公族は大公の他にはミアしか座っておらず、騎士団長のゴースやその他国の貴族や有力者達。

ラダンを始めとする大商人やギルド長など。

様々な者がその場に呼ばれていた。


(牽制、、、かな?)


乾杯の挨拶や呼ばれている者たちから察するに、俺は既にダルク家が従えていると示すことがこの場の意味なのかもしれない。

あの戦場から生き残った者も複数名居るそうだ。

いくら騎士団長ゴースの手柄としても、どこから話が広がるかは分からない。

(人の噂に戸は立てられないしな。)


純血派との戦いを、ゴースを褒め称えながら、俺の能力なども交えて大公が大声で語る。

料理もそっちのけで、身体を乗り出して皆が聞いていた。


俺はというと、照れくささも相まって、途中から目の前の食事だけに集中することにした。

特にメイン料理のギングニーラビットのステーキは絶品であり、レアに焼かれた肉の血がジューシーで、酸味が口を引き締める赤のワインと堪らないくらいに合った。

(本当に全部美味い。)


振る舞われた料理に大満足していると、あちこちで盛り上がるこのテーブルの横から耳打ちされる。


「少し話そう。」


「はい。喜んで、、、」


「聞きたいのだが、隣のアインス?だったか。その者との関係は?」


「俺が彼女を雇ってます。」


「奴隷ではないようだが?」


「俺の足りないところを補ってもらってますので、対等な関係ですね。

つまり奴隷契約を結ぶ必要性が無いということです。」


「ふむ。

妻ではないのか?」


踏み込んだ質問だが、臆せず目を見て答える。

この時初めて大公の顔をしっかりと見れた気がした。

眼鏡の奥の鋭い眼光。

幾千もの経験によって引き締められたその顔がもたらす強烈な重圧が、今までそれを避けさせていたのだ。


「今はまだ違います。」


「今は、、、か。」


「はい。」


アインスが服の端を掴んだ。。


「そうか。

この国の冒険者ギルドに所属せんか?」


「有難いお言葉ですが、私はまだしばらく【不死の森】で活動したいのです。」


「勿論今すぐとは言わん。

考えておいてくれ。」


「はい。」


「まぁ、質問はここまでだ。

それより、こっちはどうかね?」


そう言って執事を呼ぶと、差し出されたのは葉巻。


「葉巻ですか?」


「ああ。中でもこれは私の特注でね。

試してみるか?」


「是非。」


前世でもシガーバーは良く行った。

そんなことを懐かしみ、葉巻を含んで、口から鼻を抜けて薫せる。

その香りの深さ。

鼻腔が押し広げられる程。

最後にフワッと鼻を抜けた後、キューッと香りが締められる。

(これにブランデーは要らないな。)


「凄いだろう?」

俺の驚いた顔に、満足気に聞いてくる。

そのまま無言で頷いた。


「ロトリーフを混ぜているのだよ。」


「ロトリーフ?」


「知ってると思うが、フォレストロトが発見された場合には、特殊な木も同時に発見される。

その木の葉っぱを我々愛好家の間では、ロトリーフと呼んでいるのだよ。」


「そうなんですね。」


相槌とともにもう一口。

その後も大公の雑学は止まらなかったが、適当に相槌を打って聞き流していた。

アメリカのインディアンが神との交信と考えるこの煙に、今はアルコールに浸した脳を委ねていたかった。


「まぁ、お前がこの国所属の冒険者にでもなれば、いつでも楽しめるがな。」


「はぁ。」

(良く言うよ。)


気持ちが見透かされたのか話が続く。

「今この国には、希望が必要なのだよ。」


「なるほど。」


「だから、お前が去っていく明日。純血派の者を広場で処刑する。

街の者達の気持ちが沈むことは避けたいからな。」


それについては、黙るしか無かった。


それも政治だ。

そして、俺に伝えたことも政治なのだ。


その後しばらくで、夕食会はお開きとなった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

過去の話の誤字脱字、てにをは、修正しております。(一応の報告です。)

貴重なお時間をありがとうございます。

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