50話 復興支援
寒空の下、朝陽が昇る。
季節の移ろいの影響もあるのか。
昨晩からぐっと気温が下がり始めた。
街にはあちこちに純血派の爪痕があり、まだまだ復興には時間がかかりそうな時である。
天候が崩れていないことだけが幸いなのかも知れないが。
今日はいよいよ、朝から街の中心の広場にあるギルドへ向かった。
(この辺りはそれほど被害が出ていないのか。)
「ご用件は?」
建物の中へ入り、受付まで行くと、綺麗な女性が尋ねてくる。
「グランの冒険者のゼロと申します。」
名乗りと同時にギルドカードを差し出すと、途端に受付の女性の顔色が変わる。
「ゼロ様ですね。しょ、少々お待ちください!」
そう言って慌ただしく受付の裏に入った後、1枚の紙を携えて戻って来た。
〜Quest(指名)
依頼名:復興支援
難易度:★★★
指名:ゼロ
依頼者:ダルク家
場所:テルレ公国ミライ
期間:定めない
報酬:金貨10枚
達成証明方法:受領印
ギルドポイント:???PT
〜
「Cランク冒険者のゼロ様。ダルク家のムー大公よりこちらの指名依頼が届いております。勿論お受けになられますよね?」
「うん?
獲得出来るギルドポイントが提示されていないんですが?」
「は、はい。それについては、ギルド長より、完了報告をムー大公に行った際に判明すると伺っております。」
(人参をぶら下げられる訳ね。)
「わかりました。そのクエストを受けさせて貰います。」
「ありがとうございます。」
明からさまにホッとした顔をした受付の女性が、受領印を押したその紙を受け取ると、ミアとの待ち合わせ場所である広場の中心へと再び戻る。
アインスには公宮で待ってても良いと言ったが、付いて来ると聞かなかった。
「もう二度とあんな思いはしたくありませんから離れません。
それに、あんな人と2人になんてさせられません!」
ということだそうだ。
「お待たせ致しました。」
しばらく待つと、護衛の騎士を2人だけ引き連れて、ミアは歩いてやって来た。
「いえ。待ってません。
それよりも、たった3人で来られたのですか?」
「はい!」
「しかも歩いてですか?」
「普段は外に出歩くことなど出来ませんし、私にはこの眼がありますからね。」
「では、ラダン様のところで
そこまで言うと、スッとミアが自分の唇に人差し指を添える。
(なるほど。ラダンの屋敷で会った時はお忍びか何かか。)
その時ギンのことが頭をよぎる。
(後でラダンの屋敷も行かないとな。)
「参りましょうか。」
「そうですね。」
そう答えると、広場を中心に俺のクエストが始まっていく。
まずは、職人ギルドと商人ギルドを訪れ、ひとしきりの資材や物資を全てゲートの中に放り込む。
それを指定された場所へと運び込むと、運び込んだ先のゴミや瓦礫を鬼の手でゲートの中に入れて撤去する。
ミアも一緒に付いて来てたので、行く先々で労いや悼みの言葉をかけると、誰もが涙を流して感謝した。
(人気があるんだろうな。)
俺の方も、テルレ公国に来る前に買い込んだ食事を子供たちに。
自作のポーションを、怪我人を中心に可能な限り配った。
「無料で配るんですか?」
ミアが不思議そうに聞く。
「はい。別に良いんです。」
自分自身も前世の時には、これ程ではないが、被災した経験がある。
あの時のささいな優しさには、どれ程救われたことか。
今度は自分の番。
ただそれだけの気持ちである。
結局、午前中でその日の積荷の分はほとんど終わってしまったため、ミアと話し合った結果、広場の中心の時計台に簡単な机と椅子を置いて、人々の依頼を聞くことになった。
それは、どこか見覚えのある光景だ。
「なんだか懐かしい気がするな。」
「はい。幸せです。」
アインスが嬉しそうに答える。
最初にミアが歩いてる者に呼びかけると、そこからは直ぐに長蛇の列。
簡単な街の地図に場所と要望を書いていく。
ミアはその光景をニコニコと見ながら、公宮へ戻って行った。
ひとしきり聞き終えた後は、街の中を縦横無尽。
右に左に駆けて行き、鬼の手やゲートを駆使して回る。
途中でラダンの敷地の近くを通ったので、ちょうどいいかと寄って行く。
門番に伝えると、前とは違ってすぐに中へ通された。
広大な庭には、大量の馬車と積荷。
(凄いな、、、)
「どうですか?」
呆気にとられていると、声をかけられる。
「凄いですね。」
「こういう時こそ商人の力の見せ所です。他の国の商人が稼ぎ時だと乗り込んで来て高額で物を売り込もうとしますが、そんな事はさせません。」
そう言うとテルレ公国の大商人ラダンはニヤリと笑う。
「それよりも今日はどのようなご用件で?」
「いえ。銀色の狼を預かっていただいているかと。」
「あぁ。ギン殿でしたら丁重に預からせていただいております。」
「ありがとうございます。すみません。」
「いえいえ。私としても非常に珍しい体験をさせていただいてます。
そもそも普通は会う事すら出来ませんからね。
良ければこの街を出られるまで預からせていただいても?」
「あれの正体をご存知で?」
「はい。すぐにわかりましたよ。何しろ均衡を司る者ですから。商人にとっても特別な存在です。
私などは憧れもありましたね。」
「そうでしたか。」
「それに、均衡者であるムーンを見ればこの街で悪さをしようなどと思う者も居ないでしょう。」
「なるほど。それではしばらくの間、よろしくお願い致します。」
そう言って頭を下げると、再び依頼先へと急ぎ足で戻った。
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