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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
3 テルレ公国

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46話 決着

瞬きと瞬きの合間。

それがゼンの戦闘時間であった。


俺の腰元にあった鬼月が泡の様な光となって消えると、ゼンの左手に再び姿を現わす。

ゆらりと立ったゼンが余りにも自然体で、そのまま右手を挙げた動作に対して、その場にいる誰もが只々眺めるしか無かった。


刹那。

挙げた右手の先から伸びる光の刃が、一直線に魔人の左胸を貫く。


バチッ!バチバチバチッ!


(雷?)


その強力な一刺しは、対象ごと部屋中の空気まで振動を伝えて震わすと、次の瞬間には、魔人の周囲を鬼月から出現させたのであろう刀が頭を垂れてずらりと囲む。


二転三転。

怒涛の速さで進んでいく光景は、まるで映画のクライマックスの様。


そして、脇目も振らずに一筋に走った雷光が、導かれるかの様に周囲の刀へ飛び跳ねると、それを受けた刀達はすーっと周りを回って地面へと突き刺さる。

魔人の抵抗などモノともせずに、それは一つの拘束具となって、対象を縛り上げた。


その刀達の姿はまるで、膝を着いてひれ伏すかの様な。

誰かが現れるのを迎えるかの様な。

そんな姿に映り、同時に部屋中の何かが高まっていくのを感じる。


たちこめる空気の繊維が最大限まで引っ張られた。

その時。


ズンッ!


突如、巨大な刀剣が頭上から降り、地面へと突き刺さった。

その姿は、思わず畏怖の念を抱かせる程。

あまりに荘厳で美しかったので、それが魔人を貫くための一振りだったということに後から気付く。


何物も阻むことを許さんと、言わんばかりのその光景。

その神々しさよ。


視線を心ごと引き寄せられながら。

刀剣の根元へと目を動かすと、そこには夕陽の様に真っ赤で巨大な鬼の右手が刀剣の柄を強く握りしめていた。


呆気に取られている間に、魔族を突き刺した刀剣の先から、じわりと現れた炎が燃え上がる。


その色は青から紫。

やがて黒へと。


真っ黒に姿を変えた炎が魔人を完全に覆うと、断末魔が中から飛び出した。


「ギャァ嗚呼嗚呼あゝ!!!ァァァァァア!、、ぁぁぁ、、。」



耳の鼓膜を強く叩く程の叫び声が途絶えると同時に、炎や刀剣、鬼の右手に魔人の姿まで、全てがその場から消え去る。

残ったのは、ただ崩れて焦げた黒い床のみであった。


それを確認したかの様に、小さく頷いたゼンは俺の方へと振り返って、にこりと笑った。

俺も何とか笑みを返すと、再び頷いたゼンは、その姿を虹色に輝く魂へと変え、以前と同じく俺の中へと入っていく。


そこまでを見届けると、ようやく次の瞬きを迎えて目を閉じた。

そこで俺の意識は完全に途絶えた。


✳︎


夢を見ていた。


それは、前世の頃の記憶の中。

とある一場面を切り取ったもの。


間接照明に照らされた、暖かみのあるダイニング。

そのテーブルに並ぶ四季折々の食材が使われた食事と、唐揚げやハンバーグにウインナーといった子供の大好物。

まだ少し残っているテーブルの隙間も、キッチンから漏れ聞こえる音から、間も無く新しい料理が埋めるのであろうと伺える。


既に仕事を終えて帰って来た一家の大黒柱である男が、部屋着に着替えて椅子へと座り、缶ビールをグラスに注いでいる。

溢れそうな泡を口に含みながら、嬉しそうな顔。


キッチンからは、料理を作っている女の楽し気な鼻歌。


その2人が、会話の合間にチラチラと優しそうな目線を向ける。

向けている先は、俺ではなくその隣の男の子。


そう、この日は俺が、仲の良い小学校の友人の家に泊まりに来ていたのだ。


一家で団欒するその光景に、何だかこっちまで心が暖かくなる。

そして、それと同時に、得も言えぬ感情が、心臓をチクリと刺した事を覚えている。


当時の俺の家は、俺がまだ幼い頃に父親を亡くし、既に両親の祖父母もこの世を去って、頼れる親戚も居なかったことから、母親と俺の2人きりの家族であった。


女手一つで俺を育ててくれた母親は、朝早くから晩の遅くまで毎日働いていたため、ほとんど顔を合わせる事も無く、テーブルの上に置かれたお金で買う弁当を、夕食に1人で良く食べていた。


それでも、たまの朝。

寝惚け眼で起き上がると、鍋いっぱいに作られた味噌汁から出る湯気が、既に家を出て姿の見えない母親の存在を近くに感じさせる。

そのまま掬ったお椀の一口は、寝ている間に冷えた身体と同時に、心の芯まで俺を温めてくれたのだけれども。


やはり幼かったこともあり、常に傍らには孤独感が付きまとっていた。


(今は無理だけど、、、きっといつか。)


自分が大人になったら、こんな家庭をつくろうと。

幼心ながら、友人の家で強く思ったのを覚えている。


眠る俺に脳が見せたこの光景は、そんな感情に溢れた幼少期の一幕だった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

貴重なお時間をありがとうございます。

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