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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
3 テルレ公国

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45話 第3ラウンド

目の前の男は近付いて来た途中で、不思議そうな顔を浮かべながらその歩みを止める。


「ゼロ様、、、ありがとうございました。」


俺の背後に居たミアが力強く言葉を発した。


「十分です。もう、ここからお逃げ下さい。

この国で、貴方が命を落とす必要はありません。」


ミアは笑って続ける。


「報酬を渡せないことが、心苦しいのですが、きっと私のことを知る者達が、これからのあなたに味方することでしょう、、、

私の力でしばらく時間を稼ぎます。その間にどうかお逃げ、


「ここから逃げられるとお思いですか?」


「なっ、、、なんで!?」


「この程度の力で私を止められると?」


「そんなっ!、、、。」


只でさへ一際巨大であった目の前の男の魔力が、振った炭酸飲料の様に膨れ上がると、そのまま弾け飛ぶ。

その飛沫が男を覆うと、先程までの男の姿は仮の姿であったと言わんばかりに、みるみる内に変貌を遂げていく。


コトッ。


ゲートからポーションをいくつか取り出し、一つを口に含んだ後、残りを床に置いた。


「ミア様。皆さまのポーションです。ご準備を。」


やがて、目の前の男が、体長3メートル程の姿へと形を変え、その全身を真っ黒に覆う。


ーーこれが魔族。


「人間ヨ。コノ姿ヲ目にスること。光栄に思へ。」


開いた口が閉じると、別の場所から現れた口が続けて喋る⁉︎。


「ゼロ。逃げれるものなら逃げてみろ。私に楯突いた奴を生かして置くほど、私は優しくは無いがな。」


(強いな。これは。)


「では、行く、、、

(消えた?)


ぞッ!」

ーー早っ!?


消えたと思った瞬間には、目の前に再び現れたその姿。

微かに見えた相手の右腕の動きに対し、咄嗟に上げた左腕の上から強烈な一撃と共に衝撃の波が全身を駆け抜ける。

バキッ!


「なっ!?」


ドッ!


それは、一瞬で部屋の端まで俺の身体を吹き飛ばした。

(ッ痛ぅ!折れたっ!)


急いで体制を整えるため、立ち上がって、構え直すと、何も捉えることの出来ていない視界に、鬼の手だけでもと前に出す。


(居ない?)


その瞬間には、左脇腹から再び衝撃が。


「ガッ!」


声が吹き出す。

(どこからっ!?浮いてるッ!!)


「死ネ。」


浮き上がった無抵抗の身体は、無数の光の弾が包んでいた。

(死!?)


ドンッ!


爆風の中、重力に逆らう事の無いまま、地面に転がると、既に両手足の感覚は全く無くなっていた。


倒れ込んだ床に、頭から生温い液体が流れて行く。

「ゲホッ!」

口に溜まった血を吐き出すと、芋虫の様に身体を起こし、ゴキブリの様な黒光りを放つ"それ"へ声を絞り出す。


「お、鬼火。」


最後の一滴まで振り絞り練り上げた魔力が、煌びやかに光る青白い炎となって、凄まじい音と共に放たれる。


「カハッ!」


血反吐に含まれた僅かな期待とは裏腹に、真ん中の黒い影は微動だにしない。


「魔族に魔法は効きませんよ。」


(熱っ!)


どうやら落ちていた剣を俺に投げたらしい。

痛みを熱に錯覚するくらいで、最早、声すら出なかった。

腹に突き刺さった剣を見て、意識が暗闇へと誘われていく。

(また、死ぬのか。)


周りがやけに静かだった。

その割に、心臓の音がうるさい。

自分だけがこの部屋に居るような。


考え事をしていた。


(魔族。

東の大陸でも相当な強さを誇るのだろう。

では、鬼の一族は?

かつて最強を誇った鬼の力を受け継いだ俺が、魔族にこれ程まで劣るなんてことがあるのだろうか?)


動かない身体と正反対に脳みそは回転数を上げていく。


(鬼月は発動の際に、刀に込められた魂を解き放つ。

つまり、継承した魂を解き放っている。)


「ゼロ。これでお終いだ。

この後、全てが済んだら、私はお前の大事な銀髪の娘を真っ先に殺しに行くからな。」


黒く練り上げられた魔力と共に吐いたそのセリフが俺の心を叩き起こす。

それは、回転数を上げ始めていた思考と、止まりかけていた身体を繋ぎとめ、ガソリンの様に燃えてエネルギーを生み出して行く。


「ぎ、ぎざま。誰をごろずと?」


声にならない声が喉を出て行く。

何かが、近づいてくる音がした。

匂いが、息遣いが。

懐かしい様な、そんな気配が。


ここが俺の桶狭間だと。

天の顔色さへ味方に付ける。


「オ シ マ イ ダ。」

時間の概念が変わったかの様に、スローモーションになった空間の中で得る確信。


(来い!いや、、、来る!!)


相手の魔法が全ての生命を吞み込もうと側まで迫った時。


「出て来い!ゼン!」


ズバッ!


瞬間。

突如現れた赤い鎧がモーゼの様に魔法を切り拓いた。


「拙者を呼んだか?ゼロ。」


どんな理屈かは、分からない。

ただ間違いなく、鬼の頭領であるゼンは再び俺の目の前に現れた。


「魔族か。それ程強くは無さそうだ。」


「誰ダお前?、、、ドコカラ現れた?」


「ゼロ。ここまで良くやったな。」


「お前、、、鬼ノ一族か?ゼロが、ゼロが自分の継承シタ魂ヲ解放シテイルノカ?」


「拙者は、鬼の一族の頭領がゼン。

ゼロ。拙者の闘いを良く見ておけ。

鬼の力はまだまだ底が深い。」


意識が朦朧とする中。

「ゼロ様!」

駆け寄って来たミアが俺に口移しでポーションを飲ませる。

「んっ。」


(ゼン。)


「では、魔族の者よ。参ろうぞ。」


いつも読んでいただきありがとうございます。

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