43話 本戦
「ひとまず、先に中を確認しますね。」
そう言うと、ミアはその大層な目隠しを取り、宝石の様に輝く瞳で扉の方を凝視する。
(透視でも出来るっていうのか。そもそも魔眼って何なんだ?)
しばらく正面を眺めた後、必要な情報が得られたからなのか。
彼女は納得した様な顔で俺の方を向く。
「何か見えましたか?」
「はい。ゼロ様、失礼ですが、お顔を近付けていただいても良いですか?」
「はい、、、
こうでしょうか?」
そう答えると、ミアの綺麗で整った顔に、自分の顔を近づける。
何だか照れそうになりながら、むず痒くなる全身の隆起を堪えて、顔を近づけた。
「もう少しです。」
「はぁ。」
(近いな。こんなに近くで見ると、、、)
「後、すこし。」
「いや、これ以上近づけますとっ
思わず目を見開く。
近づけた顔を止めた瞬間に、今度は彼女の顔がいきなり近づいて、不満を発する俺の口をその唇で塞いだのだから。
(な、なん???だ?)
疑問符が大量に湧き上がる。
混乱が頭の中を支配した時、輝く瞳と目が合うと、俺の頭の中に映像が流れ込んだ。
さながら、魂の継承の時の様な感覚は、先ほど扉を見ていた時のミアの瞳が捉えた映像を俺にもたらした。
(そういう事か。)
この行為は、魔眼で見た映像を共有するためなのだろう。
説明があれば有り難かったのだが、状況が状況だから、これも仕方が無い。
「端の方で僅かに光る3つが、父と母と、兄です。」
気付けば唇は離されていて、ミアの声が耳に入ってくる。
見せられた映像には、部屋の向こう側の者たちの魔力が可視化されて見る事が出来ていた。
「なるほど。」
「そして、部屋の周囲を囲む光。大小様々ございますが、そのどれにも既視感はございません。全て純血派の者達でしょう。」
そう言った、ミアの言葉は口惜しそうだ。
残念ながらその周囲を囲む者達が純血派であろう事は俺にもわかった。
可視化されたその魔力のどれもが、殺気をそこに交じわせながら、すぐにでも攻撃を仕掛けることが出来る雰囲気を大公達の方へと向けられていたからだ。
「そして、真ん中の床に横たわる今にも消え入りそうな光は騎士団長のゴースのものでしょう。」
恐ろしい程に冷静に語られる扉の向こうの現状が、俺の心の鋼を叩く。
「なるほど。そしてその横でドス黒く光るのが、」
「はい。恐らくこの波長。魔族でしょう。」
魔族。
東の大陸に生息する人ならざる者の一族の一つ。
魔人の力を使うことで有名だ。
「魔族。なぜこんなところに?」
「わかりません。ただ、今は純血派に加担する者の1人として、この部屋に居る事は間違いないでしょう。」
「なるほど。」
(今は、それについて考えるべきでも無いか。)
「ミア様。あなたのその振る舞いこそ、この国の希望でしょう。」
「いえ。そんなことは、、、」
「参りましょうか。」
「はい。」
再びミアの手を取ると、ゆっくりと謁見の間の扉を開く。
開いた先は、地獄か何か。
転がる死体と立つ誰か。
広がる光景は、想定通り。
視線が一気にこちらへ集まる。
恐らく、100人近くは居るだろうか。
その誰もが、ミアの姿を視界に入れた瞬間に、筋肉を強張らせたので、部屋全体が固まった。
(お前らは、考えもしていなかったか?)
緩む心を鋭利に尖らせ、中央に立つ圧倒的な存在に目を向ける。
(カン。力借りるぜ。)
右の鬼の手で"それ"を引き寄せると、手の中に入った瞬間に握り潰した。
バキバキッ!
ティッシュの様に丸めた後は、少し浮かして、ありったけの力で握りしめた真っ赤な鬼の拳がそれを捉える。
ゴッ!
拳の音が聞こえた時には、"それ"は既に部屋の奥まで吹っ飛んでいた。
ドンッ!
(手応えはあった。だが、、、)
鬼月は既に発動している。
「一人一殺!!」
背後から刀をトカレフの様に放っていく。
その数およそ、総数で数百。
「ゲート!」
それと同時に鬼の手で、可能な限りをマジックハンドで手繰り寄せ、ゲートの中に放り込んでいく。
ミアとの約束で、可能な限りを生け捕りにするとは言ったが、それだけがこの行動の理由ではない。
ざっと見渡した限り、それなりの実力を持つ者は当然多い。
放った鬼月が未だに仕留めきれず、避けたり躱し続ける者もいくつか見受けられる。
(1人でも多く。)
嫌な予感がしていた。
確実に手応えを感じた"それ"であったが、こんなにも容易い事があるのだろうか。
今出来ることは、もし、立ち上がって来る事があるならば、それまでに可能な限り敵の数を減らす事だ。
「ゼロ様!」
ミアの声が聞こえる。
ヒュッ!
何か。
何かが飛んで来た。
およそこの世のものとは思えないスピードで。
(人ッ!?)
ゲートを移動させ、飛んできたものに合わせると、それは、そのまま吸い込まれていく。
「不意打ちとは。中々、効きましたよ。」
舞い上がった土煙の中から、ローブを羽織った男が歩いて来る。
足元に叩き伏せられた刀は消え去って手元に戻る。
(そりゃ、そうだよな。)
「ゼロさんでしたね?お噂はかねがね。鬼の一族の力を継承した者。やはりお強い。素晴らしい。」
「そいつは、どうも。」
(何とか、周りは全員蹴散らした。後は、こいつだけ、、!)
「それ程の力を持つ人間は、大変珍しいと思います。」
(やけに、褒めるじゃ無いか。)
「だが、、、想像以上ではありませんがね。」
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