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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
3 テルレ公国

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39話 未然

ぼとっ。


箱を開いた若い執事と思わしき男の下半身だけが、膝から崩れ落ちる。


それは、重心が変わった事によるものか。途絶えた生命に対するものか。


流れていく血の行き先は、新しい生命への道筋なのか。



(間に合わなかったか。)


咄嗟に唱えて走らせたゲートが、その執事を包み込むように広がったことで、この応接室を吹き飛ばす程であっただろう爆風を全て吸い込んだ。


どうやら、被害は最小限に留められたようだ。

残念ながら、箱を持っていた若い執事の上半身は一瞬で吹き飛んでいたのだが。




「キャーッ!」


端の方に並んで立っていたメイド達が、ようやく喉を震わせる程の意識へと戻ったのか。

転がる死体を見て悲鳴を上げる。

それでも、部屋の殆どの者が腰を抜かし、目の前の光景にただただ呆然と立ち尽くしているのみであった。


ふと。視線をラダンの方にやる。

(流石と言うべきか。)


先程までの温和な顔はどこへやら。

座っていた席から微動だにせず、転がった執事の死体を恐ろしい形相で睨みつけていた。


「セバス!門を閉めて被害状況の確認を。他の者を今日は一切入れない!出て行く事も安全が確認出来るまでは一切認めない!」


「はっ!」


「護衛の者達は必ず2人1組で屋敷を見回らせろ!私の執務室も入って構わん!」


「はっ!」


「それから、この数日で届いた未開封の荷物が他にあれば、確認して開けることの無いように!この屋敷全員の安全確認だ!それを優先しろ!」


「承知致しました。」


セバスと呼ばれた男。

名前からして、執事の筆頭の様な者なのだろう。

受けた指示をこなすため、呆けている者達に次から次へと指示を出すと、歯車が動き出す様に、ゆっくりと、ゆっくりと。

だが、確実に回り始めていく。


(生半可じゃないな。)


今しがた、死が目の前に現れたばかりである。

常人には、意思を持って喉を震わせろという方が無理があるだろう。

それをこの男ラダンは、平然とやってのける。


その姿を尊敬の念も含めつつ眺めていると、その視線をラダンが捉える。


「あなた達。申し訳無いですがこの騒ぎが落ち着くまでの間、地下の牢屋に入ってもらいます。」


(仕方がないな。)


逃げようと思えば、逃げれたが、この状況を考えればどう考えても、逃げるべきでは無いだろう。

ましてや、俺たちが持ち込んだ積荷がこの原因を作っている訳だから。


「わかりました。」


一切の抵抗が無い事をアピールすると、3人の護衛に促されたまま、大人しく案内を受けて、屋敷の地下にある鉄格子の部屋に通された。


「ふー。」


「危なかったですね。」


「ああ。少なくとも鬼の力だけでは、俺達にも甚大な被害が出ただろう。」


「まさか、あの方がこんな事をするとは、、、」


「そうだな。」


(シガル。何を考えている?俺たちもまとめて殺す気だったか?、、、それでも、これを俺たちの仕業にするのは、流石に力技過ぎるぞ?)


「アインスとギンは無事か?」


「「はい!ヴォウ!」」


その質問に1人と1匹は威勢良く答える。


ローレンの魂を継承していなければどうなっていたのか。

(シガルも勝負に出たって事か。)


それにしても、商人がここまでするのだろうか。

この事がきっかけで、両国が戦争になっても不思議では無い。


銀の髪と銀の毛並みを撫でながら、自分の頭と感情を整理していく。


(こう言う時こそ、まずやるべきか。)


きっと、俺も気付いていないだけで、動揺しているのだろう。

ゲートから出来たての温かいスープを出すと、皆んなで口に含む。

こんな時だからこそ、身体を温めて、全身に走った緊張を一度ほぐしておく事にしたのだ。


「あぁ〜。美味しいですね。コボルトの肉ですか?」


「ああ。それと野菜を煮込んだものらしい。似たスープを良く騎士団の時に食べたよ。」


「それにしても、お肉がトロトロで。」


「確かにな。」


ふと立ち寄ったレストランで買ったスープだったが、正解だったようだ。

相当煮込んだのか。

野菜は全て溶け込んで、コボルトの肉もほろほろになっていた。


「ちょっと元気出ましたね!」


「そうだな。ちょっと落ち着いたよ。」



トッドの記憶から、このテルレ公国が大きく2つの派閥から成り立っているのは知っている。


1つは、この国の筆頭の貴族であるダルク家から成る中立派。

貴族を筆頭に、商人や平民等のそれぞれがそれぞれの役割を担う事で国の発展を目指している。

これまで、50数年に渡りこの国の安定に一役買ってきた派閥だ。


対するもう1つは、貴族のみを人と考える純血派。

それ程数は多く無いが、過激な思想を持つ者もいくつか混じっているという噂だ。

ただ、それに関する情報はトッドの中には余り無い。


(商人が関わる事自体が危険だからか?)


「アインス。この国の純血派について何か知っているか?」


「純血派、、、聞いた事はあります。でも、詳しい事は私も余り知りません。」


「そうか。」


「ですが、ダルク家を中心とした中立派が目を光られせている中で、大きな動きが出来るとは考えにくいですが。」


「そうか。」


確かにそうなのだろう。

しかし、あの狡猾と呼ばれるシガルが、これ程の一手を打ってきたのも事実だ。

確実に、何かが起きているのだろう。


ドンッ!


先程とは遥かに遠くの音ではあるが、にわかに緊張が走る。

恐らく、爆発音だろう。

僅かな揺れと共にこの地下牢まで届いた。


「同じ爆発か。」


「はい。恐らくは。」


(消耗戦だ。)


俺は、出来る限り心の平穏を保ったまま、これから加速していくのであろう事態に備えて、今はジッとこの部屋で、その時を待つ事にした。



貴重なお時間ありがとうございます!!

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