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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
3 テルレ公国

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37話 道中

「積荷を渡せ!さっさとしろ!!」


アインスとの甘い時間を遮る声を受けて、荷台の隙間から外を覗き込むと、刃こぼれした剣を馬車に向けながら1人の男が叫んでいる。

そして、その周りには、馬車の周囲をグルリと囲んだ無数の男達。

にやにやと浮かべる余裕の笑みが、今日の盛大な食事への期待を表していた。



それもそのはずで当然だろう。

これだけ立派な馬車が、護衛の馬車も付けずにたった1台でこの広い一本道をゆっくりと進んでいたのだから。

ましてや、馬車にはシガルの紋章。

それなりの積荷が用意されている事は明らかだ。


「盗賊か。」


「そのようですね。」


「怖いか?」


「ゼロ様が居ますから。何も。」


「そうか。ちょっと待っといてくれ。」


「はい。」


そう言って馬車を降りると、身に付けた装飾品が輝く盗賊の頭と思わしき男が口を開く。


「お前だけか?女が居るなら早く出せよ?それから積荷もさっさと降ろしてこい。」


カンッ!


威嚇をするように持っている剣を、地面に叩きつけながら吠える。

(物は持ち主を選べないとは言え、可哀想に。)


俺の口角が上がったのが見えたのか。

その男は更に激昂する。


「おい!テメェ!目ぇ見えてんのか!?5秒以内に答えろ!」


ふと、御者の方を見ると、馬の手綱を握ったまま震えている。


(さてと。どうしようか。)


正直に言うとこの大勢の盗賊達に囲まれた事を、俺は心の底から喜んでいた。

なぜなら、ローレンの魂を継承してからというものの、余りにも膨大な魔法の知識と、魔力が備わったので、早速その力を試してみたいと思っていたところに、求めていた機会が絶好の形で現れたからだ。


(魔法はイメージで9割が決まるそうだ。)


先ほどまでの燃えるような夕焼けは、水平線の下に潜り込んで行き、1日の中で最も美しいと言われる時間へと姿を変えていく。


今日は天気も良かった。


未だ残す遠方の青色に、消えゆく赤色が混ざった空は、薄紫の彩を添えていた。


匂いがする。

夜が近づいている。

暗闇が。1日の終わりが。色の終着点が。

すぐそこまで近づいている。



「ゲート。」


その呟きと同時に何かが周囲を走る。

それは単に通り抜けるだけでは無い。

それに触れた男たちの腰から上が、一瞬で消え失せていく。


「ああ?」


1人残った男が呆然と立ち尽くしながら、間抜けな声を上げた。

周りをキョロキョロしながら、腰を抜かしていた。


今回俺がイメージしたのは、空間魔法のゲートを巨大な魔物の開いた口の様に走らせるという事。

それにより、まるで魔物が獲物を口に含むかの様に、盗賊達の腰から上だけを、次々にゲートの中に放り込んだのだ。


(なるほど。)


得られた結果が俺の好奇心を揺さぶる。

不思議なもので、腰から上が無くなった無数の足が、その場に立ち尽くしていた。


(この段階では、まだ死んでないのか。)


興味深く観察した後、次の言葉を発する。


「閉じろ。」


その瞬間、一斉に腰から無数の鮮血が噴き出した。


(ここで、こうなる訳だ。)


噴水の様に勢い良く跳ねた血液が、上下左右に暴れ回ると、次々に膝から崩れ落ちていく。

そして、ゲートから大量の上半身を出すと、それは、山の様に一箇所に積み上げられた。



1人残った、いや1人残した男に近寄る。


「ふぅ。ふぅ。」


男は下を向いたまま、深呼吸を何度もしていた。


「ゲート。」


再び放った言葉の後、今度は残った男を丸々入れる。

男はひたすら下を向いて、何かを呟いている様だった。



1分程待って、男を出すと不思議な顔をして俺を見る。


「に、逃してくれますか?」


「何が見えた?」


「なっ、何が?見えた?」


「正直に言え。」


「あ、あんたが何か呟いた後に目の前が真っ暗になったと思ったら、また、ここに居る!!」


(ゲートの中の意識は無いって事か。)


「他には無いのか?」


「わからん!何も!本当に何も!わからん!!」


(嘘は言ってないか?)

今度は、試しに右手だけをゲートに入れてみる。


「ひっ!?」


「右手の感覚はあるか?」


「なっ、俺の右手!?どこ??右手どこ??何だ!?」


「右手の感覚はあるか?」


「返せ!右手!なんだ!どこ言った!?」


(なるほど。)


「おい!!聞いてるのか!!おい!!」


「ありがとう。色々分かったよ。ところで、お前は盗賊なのか?」


「ち、違うんだ。身体の悪い弟が居て。そいつの為に。仕方なくさ!!仕方なく盗賊をしてるんだ!治療費が!!」


「そういう事言われると困るんだよな。」


「本当なんだ!!本当にその治療費の為に!仕方が無いんだ!国が何の保障もしてくれないから!」


「ふー。」


「信じてくれ!頼むから!!俺の命はどうなっても良い!!せめて弟だけは!!」


「また、背負う物が増えるなぁ。」


「良いのか?」


そう言って嬉しそうにあげた顔を鬼の手で叩き潰す。


ベチャッ!



「そういう背景を言われると気が滅入るんだよな。まぁ、それも背負ってやるけど、、、」



ふと視線が気になり、目線を馬車に戻すと、御者はまだその場で震えたままだった。


(演技派だな。)


潰した死体を、お仲間のところに持っていくと、

盗賊の死体から、盗れる物は全て盗った。


(帰ってギルドに渡すか。)


それぞれが誰かの大切な何かだと考えると、1つでも持ち主やその家族の元へと向かう事を祈る。


世知辛い世の中だから。

1人くらいこんな考え方をしても良いだろう。

きっとアインスも賛成してくれるはずだから。


その後、一気に鬼火で燃やすと、虹色の魂が各々の方向へと散らばっていく。

それぞれが、それぞれの帰る場所へと向かう。


(今日はここで野営だな。)


ゲートの中から野営のセットを出すと、アインスを呼んだ。



(これも予想の範囲内か。)



いつも読んでいただきありがとうございます!!


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