23話 2つの呼び出し
次の日から、大忙しの毎日となった。
朝の9時に屋敷の門の鍵を開けて、マグガーラを筆頭にした職人連中を敷地内に入れる。
資材の運び込みがある日には、指定された場所まで自分で取りに行って敷地に運び込んだ。
午前中は、改修工事の監視をしつつアインスと庭で模擬戦を。
アインスの戦闘技術を向上させる事が半分と、残り半分は、職人達に俺の力を見せる事で、シガルの息のかかった奴への牽制の意味があった。
(日雇いの職人も含めて、20人近く居るんだ。1人くらいは混ざってるんだろう。)
昼食を済ませた後は、ポーション屋の老婆セーラの店でポーション作りを学ぶ。
薬草は、俺とアインスが【不死の森】へと取りに行った。
その際にギルドで依頼を受け取って、適度にギルドポイントも貯めていく。
ちなみにポーションの作り方だが、ポーションは大きな鍋に大量の薬草を入れて、いっぱいの水に1時間浸した後、蓋をして弱火にかけてじっくり煮詰めていく。
この時、どのような種類の薬草を組み合わせるかで、ポーションの効能が変わる。
傷の回復や解毒、解熱、火傷の回復など様々だ。
(前世の薬がこっちの薬草か。)
弱火で3時間程煮詰めた後、火を消して24時間自然に冷ます。
完全に冷めたのを確認すると、鍋から薬草を取り出して、今度は鍋に魔石を入れる。
この時、どの魔物の魔石を入れるかで、今度はポーションの効果が変わってくる。
どうやら、薬草の組み合わせに合わせて魔石の種類を選択しないと、全く効果が無くなる事もあるらしい。
一般的に、セーラを含む殆どの店では、ゴブリン程度の魔石を使っているが、中には、貴族御用達の店で、ハニーベア級の魔石を使って作っている所もあるそうだ。
そのポーションに、どれ程の効果があるかはわからないが、噂では瀕死の状態にあった者が一瞬で全治する程の効果らしい。
魔石を入れた鍋に再び蓋をすると、1時間程度火にかける。
入れた魔石が溶け出してきたのを確認した後、魔石を1つ鍋に追加して入れる。
それを何度か繰り返すと、やがて鍋の水に色が着き始め、トロみを帯びた状態になる。
そうなれば、再び火を消して24時間かけて自然に冷ます。
蓋を開ければ、鍋に7割程度入ったポーションの出来上がりである。
それを柄杓で一杯づつ瓶に入れると売り物の完成だ。
ちなみに婆さんの店では、傷の回復と火傷に効果があるポーションを作っており、1本銅貨30枚で売っている。
(結構いい商売だな。)
前世の薬と同じで、最初に薬草の組み合わせとそれに相対する魔石の種類の発見が大変であるが、一度オリジナルの組み合わせを発見出来れば、後は左団扇だ。
そうして、ポーションの作り方を学んだ後は、街で食材を買って、18時の鐘までに屋敷に戻る。
18時の鐘と同時に、その日の作業が終了するので、職人達を送り出して夕食にする。
その内、街で食事を済ませたマグガーラが酒を買って戻って来るので、その後に門を閉めて鎖をかける。
何度かマグガーラも食事に誘ったが、断られた。
自分の作品を見ながら、酒を飲むのが一番好きらしい。
そんな生活が早いもので2週間を過ぎようとしていた。
その間に、アインスの剣の腕は上達してきたし、職人連中にも顔見知りが増えた。
マグガーラが当初に言ってた通り、来週辺りから屋敷の中で寝泊りも出来そうだった。
また、ポーション屋のセーラからは、薬草と魔石の組み合わせをドンドン教えてもらっていた。
俺を見ると孫の様な気持ちになるのか、恐らく門外不出のポーションを原料としたハイポーションの作り方まで教えてもらい、その精製にも成功した。
そんなある日。
冒険者ギルドからの呼び出しに応じて向かうと、早速ギルド長の執務室へと通される。
「ゼロ。よく来た。」
「フォレストロトの件ですね?」
「そうだ。まぁ座れ。
随分時間がかかったが、鑑定の結果3つ全てが、本物であると認められた。」
「ありがとうございます。」
「それぞれ、持ち込んだ順にNO.151、152、153としてナンバリングがなされた。
お前には第1発見者として全てに4分の1の権利が認められている。
また、通常はフォレストロトの上に生えている木はギルドが回収するが、今回はお前が回収したので、これもお前に所有権がある。
どうするか考えているか?」
「それぞれのフォレストロトや木の特徴は判明しているんですか?」
「それについては、俺ですら知らない。
知っているのは、国の一部の人間だけだろう。」
「わかりました。NO.151は実物の4分の1を。木に関しても今の家の改修に使います。
NO.152と153については、相当する金銭を。
木に関してはギルドに渡しても良いです。」
「ほう。それは有難い話だが、木をギルドに渡す条件は?」
「Cランクに昇格するまでのギルドポイントをください。」
「ふむ。Cランクまでのギルドポイントか。狙いは?」
「Cランクに上がれば、貴族からの指名依頼の対象になります。
すなわち、貴族達の目に触れる機会が増えるのではないかと思ってます。
目立ち続ける事が、自分の身を守る事にも繋がるかと。」
「シガルの事か?」
「はい。殺すだけなら容易ですが、、、」
「まぁ、止めておけ。奴はこの街の内部にまで根深く関わっている。
お前の言いたい事はわかった。
その話は、こっちにとってもメリットが多い。Cランクまで上げてやろう。
そのかわり、1つだけ条件がある。」
「条件?」
「ああ。お前がCランクになれば、冒険者になってから僅か2ヶ月足らず。
この国最速でCランクまで駆け上がった冒険者となる。
当然良く思わない奴もいるだろう。」
「まぁ、そうですよね。」
「そこで、お前に良い話だ。最近【不死の森】で、ある魔物が森の奥の山から、森の手前側にまで降りて来ている。」
(知らないな。)
「知らないだろ?
まだ、報告が2件程度だからな。ギルドの方で情報を止めている。
魔物の名前はオーロラコング。」
オーロラコング。
その名前に覚えがある。
ゴリラの様な見た目と7メートル程の強靭な身体。
特徴は、その身体と同じ程の大きさの両腕である。
「いくつかの、Bランクパーティに依頼をして、複数パーティで討伐して貰う予定だったが、先にお前に情報をやる。
1人で倒してみろ。それがCランクへの条件だ。」
「わかりました。やりましょう。
ちなみに、フォレストロトの報酬などはどこで受け取れば?」
「実は今日、グラーム家から使者が来た。
この街の領主であり、当主であるグラーム・ロンダ様がお前と会いたいらしい。
明朝、お前の屋敷の前に使者をよこすそうだから、準備しておけ。」
「どのような要件で?」
「知らん。ただ、何となく想像はつくだろう?
もう少し、小綺麗な服を準備しておく事だな。
後、今日の晩飯は良い物食っておけ。
これが最期になる可能性もあるからな。」
ギルド長はそう言うと、笑っていた。
(遂に、領主とご対面か。)
高揚した気持ちをポケットに押し込んで、ギルドを後にする。
お時間いただきありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。




