22話 リフォーム発注
再び街の中心に戻り、職人ギルドに入って、受付へと向かう。
「よう。兄ちゃん。今日の要件は?」
カウンターに座った筋骨隆々が話しかけてくる。
いつもの冒険者ギルドでは、気性の荒い者が多いからか、レミアを含めて、受付に綺麗な女性が並んでいるが、ここは様子が違った。
岩のようにゴロッと並んでいるのは誰も彼もが職人連中。
中でも俺の目の前にいる奴は、ゴツゴツとした様が際立っていた。
「依頼を出したくて尋ねました。」
「有り難いねぇ。どういう要件だ?」
「知り合いから屋敷を受け継いだのですが、あちこち痛んでおりまして。
その改修と中の清掃を依頼したいんです。
トッドって商人をご存知ですか?昔その方が住んでいた屋敷なんですが、、、」
「トッドかぁ、、、知ってるぞ。
気の良い奴だった。アイツから良く奴隷を借りたもんさ。
ポックリ逝っちまいやがって。そうか。兄ちゃんがあの立派な屋敷を、、、」
「そうです。引き継いだんです。」
「あれを改修ねぇ。ちなみに、予算はいくらくらいで考えてるんだ?」
「金貨60枚を上限に考えてます。」
「ほう、、、悪く無いな。それなりの予算は考えてる訳だ。
それより、兄ちゃんが街で噂の鬼の一族の奴だろ?」
「一族では無いですが、鬼の力は使えます。」
「いや、隠さなくて良い。
俺は別に東の大陸出身でも偏見は無ぇからよ。」
「いや、本当に違うんですが。」
「ところで兄ちゃん。俺もこの間街でお前さんを見たんだが、あのでっかい鬼の手?あれは凄いなぁ、、、
お前さへ良ければ資材を自分で運ばねぇか?
そしたら、その分だけ修繕に金をかけられる。」
「なるほど。それは良い提案ですね。」
「だろ?それともう1つあるんだが、
今度、強い魔物を獲ったら職人ギルドに分けてくれねぇか?
俺たちは普段魔物とかああ言った物を滅多に口に出来ねぇんだよ。」
「良いですけど。何か僕にメリットってあるんですか?」
「金貨60枚でほぼ全面改修してやるよ。
魔物の件は、ハニーベア10匹分くらいかぁ?まぁ、出来栄えを見て考えてくれりゃあ良い。」
ガハハハッと岩石が笑う。
(凄い自信だな。)
「すごい自信で結構ですが、魔物の件は出来栄えを見て判断しますから。」
俺が思ったのと同時に、後ろのアインスが筋骨隆々に向かって言った。
「ふんっ。お嬢ちゃん。この兄ちゃんに惚れてるなぁ?」
「なっ!?」
「まぁ、何にせよ出来栄えを見て考えてくれりゃあ良いさ。」
「わかりました。じゃあ、それでお願い致します。」
その後、場所を受付からテーブルに変えて、おっさんと工事の詳細を詰めていく。
シガルの事も考えると、見ず知らずの職人達を全面的に信頼する訳にもいかない。
(息のかかった奴が、どこに潜んでいるかもわからないしな。)
どのようにして工事を進めて行くかだが、岩石からの提案で、明日に突貫工事で屋敷のすぐ横に簡単な掘っ立て小屋を作ってくれる事になった。
屋敷の改修期間中はそこで寝泊りを行うことで、不審者の侵入などに警戒出来る。
また、現場の責任者として目の前のおっさんも、改修期間中はその場で寝泊りをするという事で、少しは安心した。
明後日に改修箇所の調査を行い、明々後日から実際に動き出すとの事だ。
「工期はどれくらいかかりそうですか?」
「1ヶ月〜2ヶ月くらいだろうな。但し、屋敷での寝泊りはもっと早くから出来るようにするから安心しろ。」
最終的に、明日から改修が終わるまでの期間。
俺が朝の9時の鐘までに屋敷の門の鍵を開けておき、資材の運び込みがある場合には、指定された場所まで取りに行く事で合意した。
「前金で金貨40枚貰いたいが、いつまでなら払える?」
「それなら、今払いますよ。」
そう言って、トッドの残した封のされた金貨を4本用意する。
「じゃあ、ここにサインしてくれ。」
そう言って渡されたメモ用紙の様な契約書。
〜契約書
内容:建物の修繕、清掃
金額:金貨60枚(内、40枚支払済)
〜
「随分と簡単な契約書なんですね、、、」
「馬鹿やろう!!これは形式上の紙切れだぁ。
俺達職人は信頼を命よりも大切にしているんだ。
安心して任せろよ。」
「、、、わかりました。サインしましょう。」
(最悪はモメてでも。)
万が一の場合は、職人ギルドの全員を敵に回してでも、闘う事を考えて。
「ゼロ様。本当に良いんですか?こんなに早く決めてしまって、、、」
「ああ。構わない。
信頼して良いんですよね?
職人ギルド長のマグガーラさん。」
「ほう。知ってたか、、、やるじゃねぇか。
嬢ちゃん!安心しな。お前の惚れた相手は間違っちゃ無ぇぜ。」
「なっ!?」
マグガーラがガハハハッと豪快に笑う。
「じゃあ、明日からよろしくお願いします。」
そう伝えて、職人ギルドを後にした。
その後、宿に戻って女将さんと話すと、1日だけなら無料でそのまま泊まって良いと言ってくれたので、その言葉に甘える事にした。
宿の食堂で簡単な昼食をとった後、引っ越しに向けて雑貨屋や服屋を回っていた。
アインスの新しい服や、生活用品など、身の回りの品を次々に購入して揃えていると、見かけた老婆が歩いている。
「何されてるんですか?」
俺の掛け声に老婆が振り向く。
「あら、ゼロさん。先日は、本当にありがとうございました。お陰様で注文が入っていた分は何とかお客様にお渡しする事が出来ました。」
そう。この婆さんはプロボノ活動中に薬草の採取を依頼してきたあのポーション屋の老婆であった。
「いえいえ。無事に済んだなら良かったです。それより今日は何をされてるんですか?」
「実は、もう店は閉めようと思ってね。今日はその準備を。」
「そうなんですか?」
「私1人じゃポーションを作るのも難しいからねぇ。」
哀しそうな皺の波を走らせて笑う。
そこで、俺はある事を思いついた。
「薬草をこれからも俺が【不死の森】で採って来ますよ。その変わり、俺たちにポーションの作り方を教えてくれませんか?」
「えっ!?」
呆気に取られた婆さんは口を開いたままだった。
「良いアイデアですね!」
アインスが重ねるように言うと、更に俺が重ねる。
「よし!そうしましょう!今日薬草をある程度採って来ますので、明日から伺いますね。お店の場所は?」
「お、、、お店は、この通りにあります。でも、、、」
「じゃあ、明日からお願いします。」
「お願い致します。」
そう言って2人で頭を下げると、婆さんも吊られて頭を下げていた。
(少し強引だが、俺にとってもこれは利益になるしな。)
そう言うと早速【不死の森】へと向かった。
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