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魂を側に感じたら〜異世界上場会社を目指して〜  作者: 楽 我食
2 冒険者

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20/106

20話 奴隷商シガル

街に戻ると、急いで依頼主達の家を回ることにした。


鬼の手の両手いっぱいに掴んだ大漁のアームクラブには、街中の誰もが振り返る。


ーー異様だよな。


アインスの案内を頼りに、1人につき2杯のアームクラブを手渡していき、受領のサインを貰う。


反応は様々で、概ね喜んでくれたが、ハニーベア並みの魔物を期待していた人は少しがっかりした様な表情も見受けられた。


ちなみに、小さい子がいる家には、倍の4杯を手渡した。


✳︎


街中をグルッと一周し、およそ200名程の依頼主にアインスと手分けして渡して行くと、あれだけ獲れたアームクラブはすっかり無くなってしまい、アインスはがっかりした様子だった。


「まぁ、また食べれるさ。」


「本当ですか?

あの獲りたての味は忘れられないですよ、、、」


そんなことを話していると、15時の鐘が鳴り響く。

街の外れに居たので、どれだけ急いでも20分程度の遅刻が予想された。


「ゼロ様急ぎましょう。」


「そうだな。あまり待たせてもあれだしな。

ただ、1件だけ店に寄ってから行きたい。」


「お店ですか、、、?

承知しました。」



疑問は持ちながらでも、承知はしてくれる。

アインスの言葉に素直に甘え、店に寄った後、急ぎ足でギルドに向かう。

比較的急いだが、結局、30分以上遅れてギルドの前に着いた。


ーーもう来てるか。


既にギルドの前には、豪華絢爛の大きな馬車がどーんっと聳えている。


(わざわざ街の中の移動にご苦労なことで。)


人混みをかき分けて、レミアが慌てて近寄って来る。


「遅いです!

シガル様がお待ちですので、すぐに執務室へ!」


そう言って案内されたギルド長の執務室に入ると、そこには鏡餅のようにまん丸で段々と太った男が、これでもかと宝石を全身に携えてソファに座っていた。


「ゼロ!遅いぞ!

シガル殿がお待ちだ!!」


部屋に入った俺に怒号が飛ぶ。


「申し訳ございませんでした。

【不死の森】に取りに行っていた物がございまして。」


「とにかく座れ!」


「はい。遅れて申し訳ございませんでした。

私は冒険者のゼロと申します。

シガル様。

今日はどのようなご用件でお越しいただいたのでしょうか?」


シガルの眉毛がピクリと跳ね上がる。


「いえ、最近噂になっているゼロさんという冒険者を見たいと思いましてね。

何やら随分な功績を短期間で上げられてるそうで。」


「いえ、まだまだです、、、

しかし、先日から隣のアインスが僕のもとで働いてくれる事になりましたので、随分助かっております。」


そう言って、後ろに立つアインスの左手を右手で掴んで契約の紋章をシガルに見せる。


シガルの眉毛が小刻みにバウンドする。


「そうですか。アインスさんという方が。

私は奴隷商をやってますので、そのアインスさんという方よりももっと優秀な奴隷をいくらでも抱えておりますので、ご入り用の際にはいつでもご相談下さい。」


(商人の意地か。

横取りされたとは言えないよな。)


「はい。

しばらくは無いと思いますが、そのような機会があれば相談させていただきます。」


「いつでもお声かけ下さい。

まぁ、最近物騒な事も多いので、ゼロさん。

"くれぐれ"もお気をつけください。

今日はほんの挨拶でしたので。」


そう言うと、後ろに控えていた護衛の内、2人がシガルに肩を貸して立ち上がらせる。


「いえ、こちらこそ。

本日はありがとうございました。

折角来ていただいたので、手土産と思ったのですが。

シガル様は珍しい物がお好きとの事で。」


「ほう。流石は期待の冒険者殿!

その辺の流儀は良く分かってらっしゃる。

で、一体何でしょう?」


眼光が鋭く光る。

先程とは違う商人の目付き。


「アインス。貸してくれ。」


床に置いていた布に包まれた物をアインスが俺に手渡す。


「どうぞ。」


「ここで開けさせていただいても?」


「勿論結構です。」


「誰かこれを。」


そう言われた護衛の1人がソファの間のテーブルに置かれた布をゆっくりとほどく。


はらりっ。


「ひっ!?」


布が捲られると、護衛の1人は情けない声をあげ、シガルの顔はキュッと引き締まった。


「先日、【不死の森】で、珍しいオークを発見しましてね。

いきなり襲われたので、殺してしまったのですが、折角なのでその首を酒に漬けたものです。」


シガルの顔には段々と曇りが覆って行く。

瓶の底には抜け落ちた目玉が沈んで、その場に漂う空気を見つめていた。


「最近は物騒な事が多いそうですから、シガル様も十分にお気をつけください。」


「ああ、、、ありがとう。

お前達帰る準備を。

ゼロさんからの土産は丁重に持って帰るように。」


そう言って、護衛達と共に部屋を出て行こうとするシガルへ向けて口を開く。


「ギルド長。新しいフォレストロトです。

これで証明になりますかね?」


空気が固まる音がした。

唯一、俺とシガルだけが真っ直ぐに目線を交差させる。


「2日続けてだと?

まさか、、、いや、あり得ない。

いや、、、そんな。」


「木はまた門番に預けてます。

これも鑑定に2週間かかるでしょう。

ただ、その結果がわかる頃には、誰が本当のことを言っているのかがわかるんじゃないでしょうか? 」


「数年に1つ見つかる物が、この1週間で3つだと!?嘘としか、、、いや、違うか。

それか、、、うーん。」



10分程経った後、取り乱したギルド長が落ち着くと、シガル達の一行も足早に去って行った。


3人になった執務室でギルド長が息を吐く。


「ふー。面倒毎ばかりを。

お前のプロボノ活動は今日で終わりだ。」


「本当ですか?」


「ああ。まず、鬼の件は調査を終了とする。

あれ以来鬼の目撃情報が無いことや、お前の取り組みを見た上で問題ないと判断した。

後で、報酬を受け取れ。」


「ありがとうございます!」


「それから、既に街中の者がお前の事を受け入れ始めている。

知らないだろうが、今日のお前のアームクラブを見た者が次から次へとギルドに押し寄せている。ギルドとしてもある程度の成果を得たため、今日でプロボノ活動は終了とする。」


「ありがとうございます!!」


「まぁ、シガルが明日から寄越そうとしていた奴隷がどうにもきな臭いという理由もあったがな。」


こうして、僅か1週間足らずで俺のプロボノ活動は終了した。


(色んな街の人に出会えて面白かったな。)


そんな呑気な感想を抱いて。


報酬の受け取り口に向かうと、【Quest:鬼退治】の報酬の金貨1枚と、今日のプロボノの銀貨2枚。

更にプロボノ終了に伴う功績として、銀貨10枚を受け取った。

ギルドカードを渡すと、ギルドポイントが2,303PT、そして、Dランクと記されたギルドカードが返ってきた。


「おめでとうございます!

2,000PTを超えましたので、Dランクに昇格です。

それにしてもゼロ様は異例の速さですね!」


レミアは興奮気味だ。


「ギルド内の職員でもその話でもちきりです。

普通は早い方で5年程度かかるのですが、、、

次は、5,000PTでいよいよCランクですので!

引き続き頑張って下さいね!!」


やはり評価を受けたりするのは嬉しいもので、その後、街の中で頼まれていた荷物運びや資材の積み込みなどをさくさくと終わらせて、プロボノ活動の終了とともに、頼まれていた全ての仕事を終了させた。


(明日から宿代がかかるから、早めに動かないとな。)


ここまでの収支


収入

今までの貯金:銀貨20枚

長男カッタドからの支援:金貨1枚、銀貨94枚、銅貨12枚

Quest:ゴブリンの間引き:銅貨15枚

プロボノ1日目:銀貨2枚

プロボノ2日目:銀貨2枚

ハニーベアの報酬:銀貨85枚

プロボノ3日目:銀貨2枚

プロボノ4日目:銀貨2枚

プロボノ5日目:銀貨2枚

プロボノ終了:銀貨10枚

Quest:鬼退治:金貨1枚


計:金貨2枚、銀貨219枚、銅貨27枚

日本円換算 4,192,700円


支出

レンド村からの移動費:銀貨13枚、銅貨37枚

移動中の水、食料:銀貨2枚

街へ入る許可証:銀貨4枚

グラン1日目宿泊費:銅貨10枚

ギルドの宿の夕食:銅貨15枚

プロボノ1日目のランチ:銅貨22枚

オークの串肉:銅貨12枚

18年振りの酒場:大銅貨7枚、銅貨5枚

プロボノ2日目の水:銅貨3枚

フォレストロト発見後の夕食:銀貨5枚

ペン、インク、紙:銀貨3枚

神殿へのお布施:銀貨10枚

アインスを雇った日の夕食:大銅貨4枚、銅貨6枚

金属製の網:銀貨4枚

酒瓶:大銅貨5枚

ギルドの宿の夕食:銅貨37枚


計:銀貨41枚、大銅貨16枚、銅貨147枚

日本円換算:440,700円


現在の所持金:金貨2枚、銀貨174枚、大銅貨5枚、銅貨70枚

日本円換算:3,752,000円



読んでいただいた方貴重なお時間ありがとうございます。

最後の収支は自分の備忘録のためです。

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