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02話 異世界転生

ーー全部思い出した!!

本当に剣と魔法の世界来たなんて!


まるで中世ヨーロッパのような街並みの中。

人々の生活が、魔法や、魔石を使った魔道具により支えられている世界。


地図を広げると、海を隔てて大きな大陸が東西に2つ。


西には人が。

東には人ならざる者が多く住み、大陸間の行き来は船を使って自由に行われている。

それぞれの大陸には十数の国が存在するが、国同士、大陸同士の戦争は絶えない。


そんな世界で、俺は西の大陸の中でも3本の指に入る大国、コンスタン帝国の中流貴族レンド家の三男で、アペイロン・レンドという名前と共に生を授かり、まもなく18歳の成人を迎える予定だった。


そう。

その予定だった。


三男のため、領地の配分を受けることは叶わないだろうと考え、6歳から剣術の道を選択し、15歳には親のツテも使いながら帝国騎士団の養成所へと入所を決めた。


この決断には、両親も大いに喜び賛成をし、自分自身も騎士として生涯を終えることになんら疑問は無かった。


そして、間もなく迎える18歳の成人。

その日より、正式な騎士団への配属先を言い渡される予定であったのだが、その前の最終試験として、貴族が趣味の狩りに行くための護衛を任された。

護衛とは言っても、実際の騎士団の小隊に混じって行うインターンシップのようなものなのだが。


結果としては、運悪く、その護衛中に30匹を超えるの大量のゴブリンの襲撃を受けた。


普段は2、3匹で行動するゴブリンが。

余りの数に誰もがが驚愕したが、流石は歴戦の騎士達。

最終的には、死者が3名出るだけでなんとか済んだ。

命の重さは幾分と軽い。

しかし、その時、ゴブリンから貴族に向けた短剣の一斉投擲を、訳も分からず咄嗟に全身で庇った俺は瀕死の重傷を受けることとなった。


それから生死を彷徨うこと幾日か。

恐らく、ポーションか回復魔法によって徐々に傷が回復したのだろう。

目を覚ましたその時の第一声こそが冒頭のそれである。


ーー前世の記憶が戻りやがった。


そう。

きっかけは、生死を彷徨ったこと。

それにより、俺は全てを思い出した。


前世では、日本という国で証券会社に勤務していたこと。

この世界よりも遥かに栄えた文明の中で、快適に過ごしていたこと。

たっぷりのお湯で浸かる風呂は最高に気持ちがいいこと。

食事はありとあらゆる種類が常に食べられたこと。

死は突然目の前に現れたこと。

異世界への転生を願ったこと。

そして記憶が消され、新たな生を受けたこと。

この世界で、貴族の三男としてこれまでの人生を歩んできたこと。


思い出したのだ。

全ての記憶を。

そして繋がったのだ。

これまでの全てが。


まるで雷が落ちたような。

ビリビリとした衝撃が脳を貫く。


(落ち着け。俺。

こんな衝撃何回もあっただろ。)


前世の記憶を思い出したからこそ、俺は自分に言い聞かせる。

毎日を、数字の砂漠の中で闘ってたのだ。

当時は、想定外なんてものは全て想定内だった。


ゆっくりと。

2回、3回。

深呼吸をする事で気持ちを落ち着ける。


(記憶が戻ったところで、今は何も変わらないか。

身体もまだ痛むし。

それよりも結果だけ見れば、転生は大成功じゃないか。)


ベッドの上でそんなことを考えてにやにやしていた。


(ここは恐らく救護室だろう。

もう少しゆっくりさせてもらおう。)


再び掛け布団の中に潜り込むと、大股で大きな足音が近づいて来ることに気づく。

段々と大きくなるその足音は、そのまま扉の近くになっても止まらずに、扉よりも大きな大柄な男が扉を突き破るかのように部屋を訪れた。


ーーだ、団長、、、


その大男は、俺が任務に参加した騎士団の団長。

慌てて起き上がろうとしたが、団長はそれを制止する。


「そのままで良い。目が覚めたか?」


「はい。お陰様で。」


「身体の方は?」


「まだ、全快ではないですが、2、3日いただければ雑用程度くらいは出来るようになるかと。」


「ふむ。そうか。」


そう答える団長の顔は妙に険しい。


「何かございましたか?」


その表情を見た俺が尋ねる。


「うむ。」


しばらくの沈黙の後、団長は再び口を開く。


「隊長より全て聞いている。

先ずは今回のお前の勇気ある行動を讃えたい。

だがしかし、残念な知らせがある。

お前の父親が昨日亡くなったとのことだ。

今日の朝、早馬がこちらの都に着いた。

すぐに身支度を整えて、帰郷しろ!」


俺は、団長の口から発せられた言葉に再び動揺が走る。


「父上が亡くなったと!?」


思わず出た自分の口調にも驚いたが、団長の話はより衝撃的だ。


「そうだ。いきなりの事だったらしい。

既に馬を手配しているから、すぐに帰郷しろ。

これは命令だ。」


団長は厳しい口調のまま繰り返す。

ここで、厳しい言葉を使うことこそが、この人なりの優しさなのだろう。


「承知致しました。」


そう答えた俺は、すぐに宿舎の相部屋へと戻り、衣類と金銭、剣だけを持って、痛む身体を引きずりながら、都を後にすることとした。


既に宿舎の前に、馬を用意してくれていた事もあり、団長の最初の言葉の30分後には、帝国最大都市ミランカの門の前まで来ていた。


通常であればここから都を出る手続きに1時間程度かかるが、既に門番には騎士団からの連絡があったようで、すぐに都の外へと出る事が出来た。


レンド家の領地であるレンド村までは、のんびり行けば、馬で2日といったところであるが、用意してくれた馬であれば、翌日には着くだろうとの目算。


ーー身体はまだ痛むが。


急いで馬を走らせる道中、頭の中を様々な思い出が駆け巡る。


レンド家の父親は厳しい人だった。

元々は下流の貴族であったが、今の領地を開拓し、農地として様々な作物が取れる土地を作った。

そして、20年前の帝国の大飢饉の際には、領地の食物を都や周辺の領地へと届けた。その活躍が認められ、今の地位を築いたと聞いている。


今では、黒髪のレンド家といえば、帝国内でそれなりの知名度だ。


その様な経験があるからか。

俺や兄姉(きょうだい)にも自分の力で這い上がることを常に考えろと良く言っていた。


2人の妻(正妻と側室)との間に、4人(男3人、女1人)の子供をもうけ、今度、3人目の妻である新しい側室との間に、もう一人が産まれると聞いていた。


手紙によると、食事中に突然倒れてそのまま亡くなったらしい。


(どの世界でも、死が突然現れることは、変わらないんだな。)


様々に思いを馳せながら、馬を進めると、少しづつ故郷の村が近付いてくるのであった。



中々、自分の言葉で書くのは難しいです。

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