14話 フォレストロト
トントンッ、トントントンッ。
何度も何度も繰り返して鳴らされる扉の音が、二日酔いの俺を起こす。
(アインスか?相変わらず早いな。)
ふらふらとしながら扉を開けると、そこには銀髪のアインスが凛とした姿で扉の前に立っていた。
「おはようございます。ゼロ様。部屋を移られたのですね。昨日はご馳走様でした。」
「ああ。おはよう。アインスは元気そうだな。俺は頭が痛いよ。」
そう答えると、クスッと笑ったアインスを部屋の中に入れて、ソファに座るように促す。
「準備をするから少し待ってくれ。そういえば、昨日の事なんだけど、良ければここで話してくれないか?」
「出来れば【不死の森】でお話出来ればと思います。」
「【不死の森】で?、、、わかった。準備するよ。」
急いで準備をし、二日酔いでふらふらしながらも、アインスと共にギルドに顔を出すと、レミアが引き続き俺を待っていた。
「おはようございます。本日もよろしくお願いします、、、と言いたいところですが何やら顔色が優れませんね?」
「すみません。昨日の疲れで。」
(2日続けての二日酔いのせいとは言えないよな。)
「流石のゼロ様もハニーベアを相手にすれば、疲れが出ましたか。今日は依頼に来られている方も居ませんので、1日お休みをされますか?」
「はい。ありがとうございます。それなら今日は【不死の森】で少し探索をして来てもよろしいでしょうか?」
「それは結構ですが、、、お身体は大丈夫そうですか?」
「はい。問題ありません。」
レミアに許可を貰うと、昨日に引き続きアインスと共に【不死の森】へと向かった。
平原との境目辺りは相変わらず人が多かったので、森の中の奥深くへ入り、人気が無くなったところでアインスが喋り始めた。
「ゼロ様はフォレストロトをご存知ですか?」
「ん?何だそれは?」
アインスによると、【不死の森】に無数に乱立する木の中から、ごく稀に中身の色が違う木が見つかるそうだ。
その木の根元、真下の地中には、様々な用途に使用できる鉱物が埋まっており、それがフォレストロトと呼ばれているらしい。
フォレストロトは、それぞれに特徴があり、1つとして同じ物は無い。
見つけられた順にナンバリングがされて、売買の際にもナンバリングで呼ばれている。
剣や防具、家や日常品などのありとあらゆる用途に使用が出来、何百年も前に発見された最初のフォレストロトである「NO.1」から創られた剣が、未だにとある国で使用され続けている程の強度を誇るそうだ。
当然、売却すればかなりの金額になる。
(コンスタン帝国に居た時には、全く聞かなかったがな。他の国は、上流階級しか知らないという事か。)
フォレストロトがどのようにして生まれるのかは、未だ不明であるが、一説によると魂の宿り木の真下にあると言われている。
実際にどの木の中に入っているのかは、外から判別する事は不可能なので、一本一本倒してみなければ見つける事は出来ない。
一時期、国を挙げて大規模な伐採を行う計画があったが、その時の参加者に多数の被害が出たため、それ以来は行われていないそうだ。
大抵見つかるのは、【不死の森】で木樵達が伐採作業をしている時や、冒険者達が探索をしている最中なのだが、それも数年に1回あるか無いか。
見つかった際には、他国への流出や争いが起こらない様にするため、最初にギルドへの報告が必須となり、第一発見者にはセルカ王国が4分の1の報酬を認めている。
残りの4分の3は国が取得する事になっているそうだ。
(外交にも使われているんだろうな。)
見つかった鉱物によっては、金貨1,000枚の値段をつける事もあり、正しく冒険者達や街の人たちにとっては、宝クジの様なものなのである。
そこまで、説明を受けてアインスの言いたかった事がわかった。
「そうか。俺が【不死の森】で魂を継承しているなら、その宿り木の根元からフォレストロトを発見できる可能性があるということか。」
「お察しの通りです。」
「だが、なぜそれがわかった?」
「それは私のスキルによるものです。そして今奴隷になっている事とも関係しております。」
そう言った彼女の顔は険しかった。
今はそれ以上は踏み込まない方が良いと思い、ゼンのいた場所を探すことにした。
「確かこの辺だと思うんだが。」
1時間以上歩いているが、中々見つからない。
良く似た景色に近付いて来たので、そのまま歩みを進めると、拓けた場所に1本の細い木が現れた。
それは、ゼンの宿り木であった大木のある場所と同じ光景であったが、細い木の前には恰幅の良い中年の男がポツンと立っていた。
「おっさんだから違うな。」
そう俺が呟くと、そのおっさんが驚く。
「お前儂が見えとるのか!?」
「ああ。見えてる。この辺に居たゼンって奴を知らないか?」
「何と!?儂の声も聞こえるのか!?」
「ああ。それよりゼンを知らないか?」
「頼む!!お願いがある。」
「嫌だよ。ゼンは知らないんだな?」
「シガルの野郎をぶっ殺してくれ!!」
「シガル?」
(なんか聞いたことあるな。)
「アインス。シガルって知ってるか?」
「はい。シガル様はグランの街最大の奴隷商であり私の主人でもあります。ところでどなたとお話されているのですか?」
「ああ。アインスは見えないのか。そこにおっさんが立ってるんだよ。わかった。ありがとう。」
「何と失礼な奴だ!しかし、許してやろう。儂の話を聞いてくれ!」
「まぁ、また来るよ!」
「おい!待て!!お前にとっても良い話だ!」
「ちょっと先を急いでるんでね。必ずまた来るよ!」
「必ずだな?必ずだぞ!!」
そう叫ぶおっさんを置いて、アインスと共に再び森を歩いた。
更に30分程歩き回ると、ようやく見た風景に繋がり、ゼンの宿り木までたどり着いたが、そこには、変わらず大木がそびえ立っていた。
「いつ見ても凄いな。」
「これがそうですか?」
「ああ。早速切ってみるか。」
「この木をですか?」
「ああ。伸びろ。鬼月。」
その瞬間一本の長い刀が、大人10人が手を繋いでも周囲の長さに届かないだろう大木へと向かい、根元の辺りをすり抜けると、反対側へと大きな呻き声を上げてあっさりと倒れていった。
大木の切り株は、真っ赤な色をしており、ゼンの鎧を彷彿させた。
「やっぱり魂の宿り木という説は正しかったか。」
振り返ってアインスに確認をすると、アインスは目を見開いて驚いていた。
「凄い。ほんの一瞬で。これも鬼の力ですか?」
「ああ。正確にはゼンの力だが。」
そう言って、そのまま鬼の手で切り株を引っこ抜き、地面を掘り返す事2時間。
ようやく引っ張り出せたフォレストロトはルビーの様に赤色に透き通っていた。
「綺麗だ。」
「本当に綺麗ですね。そして大きい。」
「アインスのお手柄だな。」
そう言うと、アインスは少し嬉しそうにはにかんだ。
「流石に少し疲れたよ。」
(重機も無いこの世界で、これを掘り出すのはもはや公共工事だな。)
改めて鬼の力を実感しながら、俺はそんな事を思っていた。
読んでいただいた方、評価していただいた方、本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願い致します。




