104話 進める準備
ブックマークありがとうございます^ ^
「お久しぶりです。
レックスさん。」
「おう。
久しぶりだな。
落ち着いたか?」
「ええ。
まぁ、、、」
「隣が噂の?」
「はい。
ドゥーエです。」
「嘘から出た実。
強力な味方を手に入れた訳だ。」
「ハハッ。
そうですね。」
「それで、、、今日はどんな用件だ?」
「ありがとうございます。
実は、、、」
広場で新しく従業員を迎えた俺は、それぞれに銀貨を5枚づつ握らせて自分の生活用品を買って来るよう命じた。
そして、獣人族の男であるバームには代表として金貨を1枚渡し、全員でありったけの食料品や飲料、美味しそうな料理を買うことも合わせて伝えていた。
これから始めることにどれほどの時間がかかるかも分からなかったため、蓄えを持っておきたいということと、従業員達に自分で考えて買い物をするという経験値を蓄えて欲しかったということもある。
そして、残った俺とドゥーエが向かった先は、商人ギルド長レックスのもと。
相変わらずの鋭い眼光は、常に自分が値踏みされているかのような緊張感を持たせる。
「実は今日レックスさんに会いに来た理由は2つあります。」
「ほう。何だ?」
「はい。
1つ目はシガルの商会の権利のことです。」
俺はシガルの権利を6割持っていることに対してこのまま持っておいた方が良いのか、誰かに譲ってしまった方が良いのか。
素直な意見を商人ギルド長に聞きたかった。
「ははっ。
正直な奴だ。
俺に渡した方が良いと言われたら渡すのか?
まぁ、はっきり言って俺が持っている情報によると、今のところほとんど価値は無いだろうな。
あるのはせいぜい売れ残った奴隷くらいか?
商人ギルドへの登録料も毎年納めないといけないしな。」
「なるほど。」
「その辺りは自分で判断しな。
お前もこの世界で生きて行くんだろ?
強いだけじゃすぐ死ぬぞ。」
シガルと対峙をする前。
俺はこのレックスへと会いに行き、シガルの商会の権利を譲り受けたのだが、その時に将来の展望を少し話していた。
「わかりました。
ちなみに、俺が新しく商会を作って、この国の商人ギルドに登録することは出来ますか?」
「今は、難しいだろうな、、、」
(そりゃあそうか。)
「では、個人的な取引はいかがでしょうか?」
「それなら良いんじゃないか?
と言うより、冒険者ギルドもそうだと思うが、特に登録をしていない者が、一見的に品物を持ち込むことは良くある話だろ。」
「わかりました。」
(十分だな。)
「そういえば、冒険者ギルドが活動していないとか?」
「あの戦争で、あれだけの冒険者が死んだんだ。
とてもじゃないが、依頼を受けれるような体制は整ってないさ。
他の国の冒険者達も気味悪がって来やしない。
あいつら、ゲンを担ぎだがるからな。」
「なるほど。」
「せいぜい戦争に行ってなかった冒険者がギルドを通した指名依頼を受けてるくらいじゃないか?
それだってどれ程ギルドを通してるかどうか。
まぁ、お前が戻って来たのは本来なら大きいんだろうが、喜んでいるのはせいぜい商人達くらいだろ。」
(商人こそ国境は無いか、、、)
「俺への指名依頼は無さそうですね。
色々とありがとうございます。
後はもう一つ。
こちらはお願いになるんですが。」
「何だ?」
レックスがぴくりとした反応をしたのは、俺のお願いという言葉によるものか。
「レックスさんは、衣類を中心に商いをされているとか。」
「それが?」
俺は懐から1枚の紙を取り出す。
「こういったデザインの服を作って貰えないでしょうか?
もしくは職人さんをご紹介いただいても?」
「ん?
これは、、、」
レックスが興味深そうに眺めたその紙は、アインスとミアとの旅の中で、突然の襲撃から身を守るための何か頑丈な服が欲しいという思いつきから生まれた物だ。
そこで真っ先に思い浮かべたのは、前世の世界で映画などでよく見た軍服。
辿る記憶のイメージをミアに伝えると、それを頼りにミアが紙に描いてくれたのであった。
「面白いデザインだな。
素材はどうするんだ?」
「まだ未定というか、用意できるかこれから聞きに行く予定です。」
「わかった。
これが新しい商売か?」
「いえ、そんなつもりはありません。
これは私用です。
衣類品の販売は難しそうですから。」
本音であったが、よく考えると自分の商売と被らないかどうかをレックスが確認したのかも知れない。
「まぁ、せいぜい頑張れよ。」
「ありがとうございました。」
✳︎
レックスへの依頼を済ませて広場に戻るが、従業員達の買い物はまだ終えていないようで、そっちはドゥーエに任せて、俺は一人で歩き出す。
ーー気になることがある。
向かった先はセーラのポーション屋。
これほど古かったか?と感じさせる久しぶりの外観は、多少のバイアスが掛かっているからだろうか。
扉は固く閉められていたので、何度かノックを試してみたが全く反応は無い。
だが、僅かに建物の中から感じる人の気配に、何らかの事情を感じざるを得なかった。
(人通りが無い時間にまた来るか。)
戻った広場、既に従業員達も全員が買い物を終えて戻って来ていた。
大量に購入された食料品を始めとする様々な物品をゲートに一気に仕舞い込んで、従業員達を労うと、驚いた表情から尊敬の眼差しまで反応は様々だった。
その全てを熱心に向けられたものだから、鼻高々になりながら俺たちの屋敷へと戻ることとした。
いつもありがとうございます。
引き続きよろしくお願いいたします。




