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〜プロローグ〜
久しぶりのレッドムーンに視線を向けながら、風に吹かれるままに箒を操る。長く伸びた髪がゆらゆらと靡いて少しだけ邪魔だ。どこへ行くわけでもなく、ただふわふわと風に任せ飛んでいく。私はそんな自由な時間がたまらなく好きだった。自分に降りかかっている不幸や家のこと、逃げたいこと全部気にしなくてもいいちっぽけな幸せが大好きだ。
「ずっとこんな時間が続けばいいのに…」
独りごちた言葉は風が連れて行って、遠くの方まで行ってしまった。
ふと、下を見やる。
大きな城が月に照らされ、赤く燃えているような印象を受ける。何故か、少し気になって城の方へ降りていく。
きっと、このとき降りていかなければ、気にならなければ、下を見なければ、私は彼女とは出逢わなかったかもしれない。あのバカとあんな会話しなかったかもしれない。話せないあいつにお話を聞かせてやることなんてなかったかもしれない。
そう思うと人と人の繋がりは奇妙だね。
君もそうは思わないかい?