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RESISTANCE  作者: Gee-Field
3/9

平和とは

 シャフターの育った家庭は決して裕福ではなかった。所得は平均以下で、時に借金と本気で向き合いかねない事態にも陥った。金銭面は、自分で働いて工面するほかなかった。この世界には、経済に関する考え方はあまり重要視されていない。どちらかというと、支配下の数イコール経済力だからだ。実質、国の中に居れば、最低限度のサービスは受けることができる。       

 しかし、難点もある。国が保証してくれるのは十八歳までだ。それ以降は、国からの支援は減額され、国内においては小規模な経済圏ができており、そこで働いてゆくしかなかった。この仕組みは、基本的に5大勢力との折り合いにより成り立っている。だから、ジュエはかなり制限された自由しか享受できない。ジュエを出て、実質的に神に従事するとそれなりの報酬がもらえるが、それは戦争の激化につながるだけだ。

 とはいっても、この世の中、平和を目指すもの武器を取らねば生きていけないのも事実だ。天下泰平を目指すというなら、筆頭一人くらい倒せる実力がなければ無理である。しかし、相手は億の軍勢。しかも1体1体が人間とはかけ離れた肉体を持つ生き物。到底かなう相手ではない。基本的に戦争というのは非感情生命体同士で行われるものがほとんどだ。人間などの感情生命体は奥で指揮を執る。これがオーソドックスな戦いだった。 

 つまりは、支配下を増やさなければならなかった。膨大な量の。例えばジュエの国民を従えたとしても、彼らに抵抗できるのは1日限りだろう。想像以上に分厚い壁だった。つまり、前面衝突は避けなければならない。見つからずに忍び込んで、目的だけを遂行するような、精鋭が必要と考えた。


天下泰平


 そんな言葉がふと頭をよぎった。決して平和バカになっているわけではないと自分に言い聞かせた。こんなことを考えていること自体異常だ。どうしていいかわからないうえ、社会的に敵対する方向へ足を踏み入れる。

 それは勇気とは一つ違う感覚だった。まるで背徳のような…しかし自身では内在する正義を確かに感じている。しかし同時にそれが大罪だということも感じている。心理状態が不安定になりそうだった。いつ発狂してもおかしくはなかった。

血のような真紅の頭髪を強く憎んだ。

「なんで…こんな…」

 両親は現在ジュエの首都に住んでおり、別居していた。

 子供のころの思い出がふとよみがえる。従順でいい子だったらしいことを思い出す。近所の友人には得意げにストーリーを展開し、自分色に道を染めたこともある。いたずらしたこともあった。万引きはよくないとは言うが、本当によくない、程度で、何回も万引きをした。今振り返ってみるとそんな一面もあった。

 しかし逆もあった。友人を救ったこともあった。それも何度も。いま彼らが何を思っているのかは計り知れないが少なくともよく思っていることを祈った。

戦争はいわば喧嘩みたいなものなのかもしれない。そう考えたりもした。

超え方が分からない壁が何層にもわたり眼前に迫りくる。悪夢も見た。日々戦地から帰ってくる人間の顔を見ると、生き生きとしていて、何が問題なの?と問われていると様な感覚にも陥った。

問題は明確にある。しかし誰も気づこうとしない。あえて気づこうとしないのだ。

ふとこう思った。

「これって…私だけなのかな…」

素朴かつ核心にも思えた。

 同志はかならずいると思ったのだ。この世の中ひろしといえど、同じような価値観を持つ人間は自分以外にも必ずいると確信した。


 ボラント大陸は世界で3番に巨大な大陸で、そのおよその面積をセルシオンという名の神が支配している。セルシオンなどの神は、自らの支配影響下にある巨大な都市に対し、ランクを付けており最重要指定都市、重要指定都市、戦略的指定都市の3段階にレベルで割り振っている。中でも一番巨大な都市である、セシルトニアン(Seciltonian)は最重要指定都市となっており、偶然かミナラカはその南方数十キロの位置に存在する。すなわち、ミナラカ国は、小国でありながら、神の重要拠点にほど近い位置にあるのだ。セルシオンは、年に何回も、セシルトニアン、ヘルベス(Helbes)、ソワレスキ(Sowaleski)の3都市を巡回しており、この3都市が最重要拠点でもある。

 シャフターはそのセシルトニアンに向かった。セシルトニアンは小規模な都市で、ボラント大陸南部の要所とされる。なぜシャフターがこの地を選んだのかというと、わかりやすい理由としては、NECの洗脳度が低く、量も豊かだからである。

 基本的にシャフターなどの感情生命体は非感情生命体を配下につけて、感情生命体と渡り合う。これは何度も紹介している戦争のキーカードだからだ。


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