シャフター=ホーキンス
【このストーリーに出てくる五大勢力名は、すべて現在の五大勢力名として記載している。現在というのは、ジグ暦207年の、DRL世界(異世界)のことを指す。また、五大勢力のリーダーを筆頭と称し、それ以下の位のものを大臣と称する場合もある。また、勢力下にいた軍師に関しては、軍師として記載する。決して姓名がなかったわけではないが、姓名は省略する。】
当時、世界は荒れていた。5大勢力、ないし神と呼ばれる列強勢力が、弱小国家、コミュニティーをこぞって支配下に入れようとする動きが世界中で激化し、その対象は人間だけでなく、無害なはずの生命体にまで及んだ。
この世界には、不思議な作用が働いており、現在でもその正体ははっきりとわかっていない。しかし、一説には別次元からの影響だとか、パラレルワールドの存在だとか、形而上的な意見がささやかれている。というのも、言葉をしゃべる生命体は、存在する生命体に等しく存在するからだ。
すこし難解かもしれないが、いわば、すべての生命体間でコミュニケーションができるのだ。
この時点で驚きであろう。しかしこれは事実だった。最初にこの地に踏み入った人間、生命体はさぞかし恐怖に陥っただろう。
言葉をしゃべる知的生命体が、同じインフレーションのもとにいたのだから。世界の原義については、解釈が哲学的になりかねないのでこの辺にしておこう。
いわば、ここはただの世界ではないということだ。想像上の世界でもないが、非常に想像的な世界だと言えよう。
ではなぜ、列強は支配下を増やそうとするのか。それは単純明快、支配下につきたくないからだ。支配戦争の起源は、今からおよそ20年ほど前。感情を持つ生命体、正しくはエレンハウゲン連対性の破れのもとに動く生命体、通称ECが、感情を持たない、EHの保存のもとに動く生命体、NECを配下に入れようと考えたことが起源とされている。以降、ECは感情的生命体と呼び、NECは非感情的生命体と呼ぶ。
しかし、当時の状況を振り返る鮮明な資料は存在せず、この世の住民は誰一人としてその真相を知りえない。
唯一知るのは、五代勢力の筆頭5名のみといわれている。支配競争から20年ほどしかたっていないため、いまだに筆頭は現役である。しかし、彼らはその事実を配下には一切伝えないという。伝える必要がないというのもある。
ではどれほどの配下を保有しているのか。当然神といわれるほどなのだから、生半可な数ではない。当たり前であった。およそ1派閥当たり、億~兆ほどの数の配下を保有している。兆は言い過ぎかもしれないが、一国が総力を挙げても勝てないのが必然と言われている。
そして、この5つにわかれた世界は、その境界線上で、戦争という悲惨な現象を起こしながら、ただ時間に従順に成り行きに従うしかなかった。
ここでは、支配競争の起源を暦の0年とし、ジグ暦というこの世界に固有の暦にあわせて年号を形作るとする。
ジグ暦22年―
支配拡大戦争は、ついにその幕を開き、各地で壮絶な戦争が行われた。そして、同時にこの世に産声を上げた一人の人間がいた。シャフターとなずけられたその子供は、ボラント大陸中央付近のミナラカ国で生まれた。
母親であった、ベペンス=ホーキンスはわが子が成長するにつれ違和感を持つようになった。
一見、ほかの人間の子供と何も変わらなそうな無邪気な少女だったが、親と似つかなかったのは唯一髪だった。父親のグリント=ホーキンスもその髪にはあきれた。なんせ、両親は両方金髪であったのに、シャフターは真紅の髪を持ち合わせていた。
遺伝の概念は、この世界にも通用していて、両親は当然自分に似た容姿の子供になると思っていた。5歳になるころには、シャフターは早くも才能を見せ始めた。
いかにも芸術肌な言動、知的好奇心、いずれも両親には似ても似つかぬ才能―
プライマリースクールに入学したときは、常に好成績だった。しかし、一風変わっていた。かなりの偏食であったり、異常な頑固性だったり、とにかく子供にしては一線を画しているような風貌だった。
ジグ暦28年―
ミナラカ国の元首であった、ミナラカが急死した。そのせいか、政権が崩壊。事実上の革命となりうる状況だった。ミナラカ国は5大勢力の一派、セルシオンのもとの配下となっていた。
しかし、近年の争奪戦の激化で、この地が他勢力の攻撃対象になってもなんらおかしいことではなかった。それに国民は反対し、早々の軍国化を目指し、抵抗する意思が芽生えていた。当然そんなことをすれば、国もろとも滅ぶことは間違いなかった。セルシオンは、当時5大勢力の中でも一番強いとされており、支配下にいることは安泰を意味していたからだ。半年ごとに支配下には使者が送られ、政権の状況や忠誠を誓うよう任されている。革命ともなれば、その基盤は揺らぎ、下手したら、セルシオンに喧嘩を売る形ともなりうる。
唯一の国軍も機能しないであろうとされ、まさに絶体絶命のさなかとなった。