守人
どれだけ泣いたのだろうか。
本当はね、こんなことしてもなんにもならないのは知ってる。
でも、何かしないと無理だったの。
何かに怒りをぶつけないと無理だった。
この女神だけが悪いんじゃないのは知ってる。
女神が止めればって思わなくもないけど、でも、それだけこの世界は困っていたんだろうね。
他の世界から女性をもらってこないといけないぐらい。
この世界の女神だもんね。
守るために必死だったんだろうね。
でも、それでも私は納得できなかったんだよ。
だって、私は悪くないんだもの。
納得なんてできるはずないじゃない。
でも、これ以上なにかをしてもどうにもならないじゃない。
諦めてしまったともいいます。
いいんです、私、若者なんで諦めることも大事なんです。
だって、もう無理なんですもん!!
どうもできないんですもん。
「・・・女神様でしたっけ・・・。殴ってごめんなさい。」
「いっいいえ・・・。私が悪いんですし、あなたが怒るのも無理はありません。寧ろ、これぐらいでいいんですか?」
・・・Mなんですか?
女神様・・・。
結構殴ったんですけど・・・。
いや、多分そういうことではないんだと思いますよ。
申し訳なく思ってそう言ってくれてるんだと思うんだけど・・・。
こうね、あれだけ泣いたら冷静になってね、急にそういうことも気になりはじめるんですよね。
「あの、その女神様だけのせいじゃないですし・・。」
「・・・。」
そう言ったら、女神様は目を見開いている。
そして、おもむろに抱きしめれた。
!?うええええええ???
「ちょ!?えっ!??」
「うわああああああん!!なんていい子!!なんていい子なのぉおおお!!女の子なのにいいいい!!」
「うぇ!?」
「女の子はみんな怖いのよ!この世界の子も、この世界に来る子も!」
「ちょ、ちょ!」
「私は!!かわいい女の子が見たかったの!!かわいい女の子をかわいがりたかったのおおおお!!」
「ちょ、女神さまぁ!」
「嗚呼、かわいいかわいいかわいい!!やっぱり女の子ってかわいいわよね!!娘がかわいいです幸せです!!」
ちょっと女神様が怖いのですが!?
すんごくぎゅうぎゅうに抱きしめれてますし。
痛いぐらいなんですが・・・。
「周りの神様達が自慢してくるの超うらやましかったの!ちゃんとうちの子達もかわいいけど、やっぱり女の子は女の子ってだけでかわいいわよー!」
「いや、その。」
「美人もいいけど、やっぱり性格がこう可愛いこって最高よね!宝よ!宝!!もうお母さん、なんでもしちゃう!!」
「え?」
ちょっといつから女神はお母さんになったのかな?
いや、星の母って言うのかな?
うん。
「ミチちゃあああん!お母さんの加護全力でかけちゃう!!」
「うぇ??」
「はい、どうぞ!!」
どうぞって言われて、固まっていれば何故か私の体が光り始めました。
なんじゃこりゃあああ!!!
「ふふふ。ミチちゃんには魔力最大を与え、魔術は日本語で命令すればなんでもできるようにしました!」
「うぇ?」
「そしてー!!どんな、魔法も無効化するような体質にしました!あと毒も!そしてそしてー、どんな言葉でも分かるようにしました!これでさっきまで分からなかったこの国の言葉も分かるし、獣の言葉も分かるよー!」
「・・・何それ・・・チート能力じゃない・・・。」
「そうよー。可愛い可愛いミチちゃんには、お母さん全力の加護をあげちゃいました!」
えっへんと胸をはる女神様。
いや、美人が台無しですよ。
残念な美人です。
「それ、いいんですか?世界バランス的に・・・。」
「あ!大丈夫大丈夫!ミチちゃんは本当はあっちの世界で幸せに暮らすはずだった運命を捨てさせちゃったんだもん。これぐらいして当然でーす!」
「え、あ、はい。」
「こっちの世界でも幸せに暮らしてほしいからね!だからいいんです!」
・・・あんまりよくないじゃないかなーって思いますけど、この世界の神様が許したらもうどうにもできませんよね・・・。
でも、こんなチートな能力を持っているって知られたら・・・こういろんな人から狙われるんんじゃ!!
そんなの嫌!!
そう女神様に訴えると、女神様はにっこりと笑ってくれました。
「大丈夫です!この森は私の本拠地なので、早々普通の人は入ってこれません!しかもこの奥地は特にです!入り口には最強のドラゴンさんに守ってもらってるしね!!ここまでは絶対にこれません!」
「ドラゴン!?」
「えぇ、最初期に作ったドラゴンさんだよー。とっても強いから大丈夫!なのでこの森に住んでさえいれば、心配ないよ!」
「いや、でも食料とか・・・日用品とかを買いに行かなくちゃ・・・。」
「あー、一応用意した家はね、なんでも揃ってるし、欲しい物があれば願えば生み出されるようになってるんだよねー。まぁそれでも、買い物とかしたくなるときもあると思うから、魔力を注いだらどこでもいける扉を付けてるから、そこからすいっと行ってすぐに帰ってきたら大丈夫だよ!!」
にこにこと笑顔で女神様が説明してくれるんだけど・・・それってやばくない。
なんでも願えば手に入るって・・・もうチート過ぎませんかね・・・?
「あ、買い物用のお金もいるだけいってね!あげちゃうよ!」
「え!?それは!!!」
「いいの!だって、私はミチちゃんの人生をめちゃくちゃにしたんだもの!!」
いや、それはそうだけど・・・ここまでしてもらってるのに。
いやしてもらいすぎだよね、これ!!
私何もしてないのに・・・。
「もうもう、いいです!!寧ろしてもらいすぎです!!」
「エー・・・まだまだ足りないぐらいと思うけど・・・。」
「お金はどうにかして稼ぐから大丈夫です!」
「えー・・・。外に働きなんて行ってほしくないんだよな・・・。危ない目に遭ってほしくないから。」
「気を付けますから!!」
なんとかこれ以上されるのは苦しいので、諦めてもらおうと思いいろいろと言うが、女神様は納得しない。
女ってだけで注目されるんですもんね・・・。
静かに外で暮らすことは無理だし、働くなんても難しいって・・・どんな世界だよ・・・。
でも、何もしてないでお金やらなんやらもらうのは・・・ちょっと・・・。
「あ、じゃあ、この森の守人になってよ!」
「え?!」
「ミチちゃんはチートの力を持ってるから基本この世界では誰も敵わないし!」
「え、え???」
「まぁ基本は人なんて来ないけど、たまーに来る人や人じゃないものも居るんだよね・・・。で、その人達がこうちょっと暴れたりさせると困るから、追っ払ってほしいんだよね。」
「んんん???」
「あ、大丈夫!本当にたまーにだし!!基本は入り口で撃退してるんだよね!ドラゴンさんが!でもドラゴンさんだけでってのも辛いときもあるので、それをお手伝いしてほしいんだよね!」
私はこの星の子達に手を挙げられないからねーっと女神様。
まぁ、基本神は見守るだけなんでしょうね。
でも、まあ、それならどうやらチート能力を持ったみたいだし・・・私にもできるかな?
女神様の役に立てるなら恩返しにもなるし・・・。
「どう?やってくれる??」
「えっと・・・私ができるなら・・・やります。」
「わーい!!やった!!!」
再度女神様に抱きつかれ、私はこの森の守人(仮)となったのでした。
・・・本当にできるのかな・・・?