7
---「いやー、夏海ちゃん、また大きくなったねー」
「えー?! そんなに変わってないよー!? もー、おじちゃんってば、テキトーなこと言ってー」
「えっ?! そ、そうかな? あはは…」
自分の部屋に戻って昼寝をしていると、いつのまにか日が暮れていた。目を覚ました俺は少々寝ぼけながらもリビングに向かって行った。そろそろ夕飯時だったからだ。
リビングに向かっていると、楽しそうに話しているなつと父さんの声が聞こえてきた。
「夏樹? はっしゃびよい! あんた、今起きたば?!」
「んー…」
リビングに着くとキッチンに居た母さんに俺を見るなり呆れたような声を出した。しかし俺はまだ少し寝ぼけていたから適当に返事をしてテーブルについた。
ちなみに母さんが言っていた『はっしゃびよい』とは意味はよくわからないが呆れたときにとかによく使われている方言だ。とくに母親とかがよく使っている言葉の一つだと思う。現にうちの母さんはよく使っているしな。
「おお夏樹、学校今日までだっけ?」
「ん」
テーブルにつくと今度は父さんに声をかけられた。それも俺は適当に返した。すると父さんは「そうか」と短く呟いた。
「なっちゃん、聞いてよー! おじちゃんってば、『また大きくなったねー』ってテキトーなこと言ってきたんだよ!?」
「父さんは忘れっぽいから、そう見えたんじゃねーの?」
「そ、そうか?」
そして今度はなつが話しかけてきた。さっきのことなど忘れてしまっているかのようだ。
「ほら、夏樹、座ってないで手伝いなさい!」
「…はいはい」
「はいは一回でよろしい!」
そんなやりとりをしていると、母さんが俺に手伝うよう促してきた。寝起きだしめんどくさかったが、反抗する気力もなかったから、仕方なく手伝うことにした。まあ手伝うといっても、あとは運ぶだけだが。
---「んー♡ やっぱ沖縄そば、おいしー♡」
「夏海ちゃん、三枚肉好きだったでしょ? だから、特別に多めに入れておいたから」
「ありがとー、おばちゃん!」
俺が黙々とそばを食べる中、隣のなつは満面の笑みを浮かべながらそばを頬張った。一人だけ量が多いが、いつものことだ。
「夏海ちゃん、今年の夏休みはずっとこっちに居るの? 今年はいつもより早かったから、帰るのも早いのかなと思ったんだけど?」
「えっ? ううん。今年の夏休みはずっとこっちに居るよ!」
「あら? そうなの? あっちで用事とかないの?」
「んー、友達とかに色々誘われたりはしたんだけど、私、こっちに居るのが好きなの。ほら、ここに居れるのって夏休みぐらいでしょ? だから少しでもここに居たいの!」
「夏海ちゃん…」
母さんはなつにあれこれ聞いているとなつの最後の一言で母さんの涙腺が緩みそうになっていた。よっぽど今の一言が嬉しかったのだろう。
「夏海ちゃん、ここはあなたのもう一つの家でもあるのよ。だから夏休みだけとは言わず、いつでも居ていいからね!」
「えへへ、ありがとー、おばちゃん!」
---そんなやりとりがありながらもつつがなく夕飯は終わっていった。