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「ほらなつ、バスタオル」
「ありがとー、なっちゃ、あっ」
「ん? どうした?」
「えへへ、着替え取るの忘れてた」
「…なんのために俺は取りに行かされたば?」
なつにバスタオルを渡すと、なつは思い出したかのように照れ笑いしながらそう言った。だがその一言に俺はちょっとイラッとさせられた。なぜもっと早く言わなかった?
「ハア、わかった。取りに行ってくるから、先に入っとけよ。そこに置いとくから。汗でベタベタなんだろ?」
「ッ!? い、いいよ! それぐらい私が取りに行くよ! なっちゃんにあんまり手間かけされるわけにはいかないし」
「? 別にいいよ。今から昼寝するところだから、あんま部屋ごちゃごちゃされても困るし」
「そんなことしないよ!? って、なっちゃん?!」
荷物を運ばされたせいか、少し疲れが溜まって昼寝がしたくなった俺は、とっとと着替えを渡して横になろうと思い、なつの言うことをほぼほぼ無視し自分の部屋に戻ってなつの着替えを取りに行った。
---「えーっと、Tシャツとズボンと、あとはー…」
俺はなつの着替えを取るため、なつが持ってきたキャリーケースを開け、着替えを取ろうとしていた。とりあえずTシャツとズボンと、あとは…
「………」
そこで俺はとんでもないことに気がついてしまい手を止めた。だからあのときなつは必至に俺を呼び止めようとしたのかと今更ながらに思った。
Tシャツとズボンと、あと取らなければいけないのが、『下着』である。
俺はそこで悩んでいた。ここは普通に取るべきか? それともやっぱりなつに言って自分で取ってもらうべきか?
しかし言ってしまった手前、後には引けなくなっていた。
「…仕方ない、っか」
悩んだ結果、意を決した俺はキャリーケースの中に手を突っ込み、できるだけ見ないように視線を逸らしながら、手探りで下着を探すことにした。
「…これかな?」
手探りで探りながらなつの下着を見つけた俺は見ないように気をつけながら取り出していった。
「けど、これホントに下着かな? 見ないとなんとも言えないんだが」
しかしそれが下着なのか俺には確信が持てなかった。あんまりペタペタ触って確かめるのもあれだし、チラ見程度なら大丈夫か?
「…フー」
心頭滅却し深呼吸した俺は恐る恐る確認してみることにした。
「………」
心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却。
そう何度も自分に暗示をかけるように心の中で呟いていた。
そして俺はなんとか水色の縞模様の下着を取り出し、すぐさまその下着をシャツとズボンの間に挟み、それを持って自分の部屋を出て行った。
---「ほ、ほら、着替え」
「あ、ありがとう」
着替えを取りに行った俺はなつに着替えを渡した。その間、なつの顔を直視することはなかった。なつも俺のことを直視せずに恥ずかしそうに頰を紅潮させ着替えを受け取った。マジで気まずかったな。