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---「ただいまー!!」
「ハア…ハア…くっそおっっも…」
結局荷物を持たされ、ようやく家に到着した俺は玄関に重たい荷物を降ろし腰を降ろした。まさかこんなに重いとは思わなかった。よくこんな重いもんあそこまで持って来れたな夏海。
それに引き換え、なつは解放されたかのように元気よく声を上げていた。くそ、やっぱり持たなければよかったな。
「あら?! 夏海ちゃんじゃない!?」
するとなつの声を聞きつけて、母さんが玄関に歩み寄って来た。そしてなつの姿を見た母さんは驚愕した表情を浮かべていた。
「えへへー、おばちゃん、びっくりしたー?!」
「びっくりしたわよー! もー、夏海ちゃんったらー」
なつは驚愕する母さんの表情を見て嬉しそうな表情を浮かべると、母さんは歳不相応なリアクションをとり出した。正直、そういう母親を見るのは息子として恥ずかしいのだが。
「それにしてもあっちの高校って夏休み早いのね。夏樹のとこは今日だったのよー!?」
「うん、知ってるよ! さっきなっちゃんから聞いた! 私の高校、昨日から夏休みに入ったの!」
「昨日!? なつ、おまえ、夏休み入ってすぐにこっち来たば!?」
「うん、そうだよ」
そんな母さんをよそになつは驚愕の一言を放ってきた。俺は見事にその一言に驚愕させられた。
昨日一学期の終業式が終わって、夏休みの初日、しかも朝早くから飛行機に乗り、高速バスを経由し路線バスに乗ってここまで来たのだ。これだけ聞いてもかなりのハードスケジュールだ。実際はもっと大変だったのかもしれない。
それをあっけらかんとした表情で話すなつを見て驚かずにはいられなかった。
「あらあら、大変だったでしょう? 汗びっしょりだし」
「えへへ、もう汗でベベタベタだよー」
「今、お風呂沸かしてないけど、シャワーだけでも浴びとく?」
「うん、そうするー」
そんな話を聞いた母さんは心配そうになつを見ながらシャワーを浴びるか聞いてきた。それを聞いてなつは自分の胸元を扇ぎながら爽やかな表情で答えた。少し無防備だと思うのだが。
「夏樹ー、その荷物運んだら、夏海ちゃんにバスタオル渡してあげて! 母さん、今から買い物行ってくるから」
「は!? 今昼過ぎだけど!?」
「夏海ちゃん来ちゃったから、色々買いに行かなきゃならないものがあるの! 今日の夕飯もから揚げにしようと思ったけど、そばに変更ね」
「そばって、昨日も食ったじゃねーか」
「今日は三枚肉よ」
「具材変わっただけじゃねーか。しかも昨日はポークで今日は三枚肉って、どっちも豚肉やっし」
「文句言わない! ほら早く! 夏海ちゃん待ってるでしょ!?」
「…わーったよ」
そんな中、俺は母さんと軽く口論になった。2日連続もそばはさすがに飽きる。
しかしいつもどおり、言い負かされた俺は渋々納得し、荷物を自分の部屋に持っていき、そのついでにバスタオルを取りに行った。ってか、なんで俺が全部やらなきゃいけないんだ?