石見日和 パーソナルスペースとプール開き
ガラッ
1人の女生徒が保健室に入ってくる。
「やあ、いらっしゃい。どうしたのかな?」
入ってくる生徒に誠史郎が近づこうとすると
「近づかないで!!」
生徒が誠史郎を拒む。
北斗もきょとんと2人を見る。
「・・別に・・1人で歩けるわよ。カウンセラーと話がしたいの」
「僕だけど大丈夫かな2年生さん?名前は?」
「岩見日和・・」
「一体、何があったのかな?石見さん」
「体育の時間が不快なんだけどプールの時間はみんなすぐに集まるからもっと不快なの」
「体育の授業が嫌いなの?」
「嫌だけど我慢はできるわ」
「普通の授業は机が均等にスペースが取られているけど、
みんながバラバラに集まる体育の授業が嫌な感じ?」
誠史郎が確認してみる。
「どんな感じ?去年はどうしたの?」
「ギリギリのところまで我慢してあとは補習扱いにしてもらってマラソンをしたわ」
「今年はしないの?」
「なんか特別扱いっぽくてのが嫌なのよ。悔しいの」
『ふうん周りに対して余裕がないねえ。自分の思い通りにしたいという思いが強い』
「じゃあ入るしかないんじゃないの?」
「え?」
意外な回答に日和は驚く。
「多分、君の場合は自分の落ち着く空間が人よりちょっと狭いんだよ。
親しい人は近づけるけど新しい人がむやみに近づくと不快になるんだ。
だから本当は授業も嫌いではないけど、クラスメイトには興味ないだろう?
それでは友達も増えないし、ボーイフレンドも出来ないよ?」
「なに?話がずれているわ!プールの話をしにきたのよ!」
日和が声を荒げる。
「だから一匹狼もいいけど友達を作っていこうよって事。
そうすれば自然と人との行動範囲が広がっていく」
「主旨がずれているわ」
日和は納得しない。
「でも仲良しさん作ろうよ~?2年はクラス替えないんだしさ」
飄々とした笑顔の誠史郎。
納得いかない回答にイラつく日和。
「あのね、石見さんはパーソナルスペースと言って他人が自分のエリアに入ってくるのを
嫌がる範囲が少し狭いかな?」
「まあ、男性よりも女性の方が多いから気にすることじゃないんだけど、拒絶するのは
プールだけじゃないよ?クラスメイトを意識する事を減らしていかないとね?」
ガラッ
「誠ちゃんいる~?」
桜子が元気よく保健室にやってきた。
「ほらパーソナルスペースの広い子がやってきたよ?」
誠史郎が桜子を指さす。
「なに~誠ちゃん呼んだ?」
パタパタと桜子が近づいてくる。
近づいてくる桜子に不快感を示し、
「なんか来たけど、無駄な時間だったわ。納得のいく回答もなかったし」
桜子とすれ違うように日和は誠史郎を見ないまま保健室を出て行った。
「桜井先生。彼女は?」
「ああ、ちょっとパーソナルスペースの狭い子ですね」
「授業は机の並びが等間隔でしょ?でもプールとかは女子ってかたまりやすいですからね。
その分パーソナルスペースが狭まって不快感を覚えるんですよ」
「彼女に友人がいるかちょっと心配だなあ・・・」
「なんか嫌われちゃったから、面談してくれるかなあ~?」
「自分で嫌わせさせておいて、何を言っているんですか」
北斗が呆れる。
「う~ん。ああいうタイプは弊害が出やすいんだよね~。カウンセリングに過度の回答も求めているし」
「パーソナルスペースはね、自分で広げなきゃダメなんですよ。本当に」
「ん。真面目に面談しますかねえ」
「じゃあ、さっきは真面目ではなかったのですか?」
バシン!!
またいつもの日誌がとぶ。




