第三章 俺様とアイドル(1)
俺様は前の否定する者の動向が引っかかり、詳細を見る為に影森がいる司令室に入った。
「お願いします。私達にとって大事な時期なんです」
物がほとんど無い司令室に六人いる。影森、雅、オリヴィア、花瑠。
見知らぬ二人は花瑠のアイドル仲間だ。
「気持ちは分かるけどねー」
「それなら」
影森に食い下がる少女。俺様の救助に疑義を唱えた奴だな。
偶像になろうとするだけあって見た目は悪くない。人を腑抜けにさせる可愛らしさよりも、下から見上げなくてはならない麗しさ、か。
「とは言ってもなぁ」
「ジャマーを貸してください。貸せないのなら、自宅待機じゃなくてここに泊まらせてください。もちろん立ち入り禁止には行かないし、守秘義務もちゃんとします。家賃や経費は、私達に決定権が無いので、事務所と協議でお願いします」
影森に案を提示する少女。否定する者や状況に臆していた奴だな。
灰汁が強いな。美醜で言えば、偶像の素質はある。雰囲気、声質、服装が、俺様でも独特だなと感じる。ひねくれ者って奴だ。多数から支持されると言うよりは少数だろう。
花瑠達は偶像としての活動をしたいらしい。
エクスカリバーは否定する者の異質な動きから、花瑠を除いた二人を保護対象にして行動に制限をかけている。その上、偶像活動を支える立場にいたふじは負傷で不在だ。
「いやぁ、いわゆるジャマー。あれって一人一人に合わせたオーダーメイド品だから、今すぐ貸すねって貸せるもんじゃないんですよ」
アイドル共いや世間的には、否定する者から存在を攪乱するデバイス、万能の道具だと思っているだろうが、持っている俺様が襲われたからな。
口には出さんが。
「なるほど。私達だってエクスカリバーさんの判断は分かっているんです。命あってですからね。でも、私達は普通の人間。否定する者からしたら特に狙う理由無いじゃないですか。それに、はるちんと一緒にいても襲われなかったんですから、今まで通り活動できるハズです」
は、るちん。
花瑠のあだ名か。理解するのに二秒かかったぞ。
「エクスカリバーさん的にはジャマーは貸せない。それは納得します。でも、自宅待機で学業もお仕事もNGにするなら、ここに泊まらせてください。それもダメなら、安全なとこなんて無いじゃないですか。これじゃ、私達もはいそうですかって納得できませんね」
この世界において経済活動は生命活動と同義だ。灰汁が強い奴の言うとおりなら、エクスカリバーの方針に納得できる訳がない。
「否定する者による被害は深刻かもしれませんが、少しでも日常に戻れるようにする事は重要だと思います。私達を応援してくれている人がいます。今回の被害を受けた方がいるかもしれません。少しでも傷を癒せたらと考えています」
今度は、どちらかと言ったら麗しい奴が発言した。
否定する者によって社会が受けた心的動揺を減じたい、か。聖人ぶって大した建前だな。
花瑠と灰汁が強い奴、で、どちらかと言ったら麗しい奴。この三人でアイドルの集合をしている。
リーダーはあの偽善者で間違いない。
「でも、君達も襲われて、しかもマネージャーが大怪我したじゃない。それなのにお仕事しちゃうの?」
「やります」
即答。その上、力が籠っていて覚悟を感じる。
「藤川さんが負傷した事はとても大きいですが、負けずに活動をして欲しいと言ってくれています」
あの男がそんな事を言ったかどうかの真偽は分からん。
「反対です。活動を自粛してください。万が一とは言え否定する者に狙われているかもしれないんです。エクスカリバーはボディガードではありません。否定する者から多くの人々を守る為の組織です」
いかにも組織人らしい雅の発言だ。
「自重した方がいい。否定する者が見ている」
オリヴィアが雅の発言に便乗する。襲撃される時は五次元先から殺気が伝わってくるが、覗かれている感じはしないな。魔法で探知できるようにしているのか。まぁいい。
しかし妙だな。黙らせようと思えば黙らせられるのに、影森は組織の決定を押し通そうとはせず、弱々しく装っている。
しかも俺様を何度も見てくる。
影森め。奴らの活動を反対する気は無いな。俺様が動かないか待っている。
アイドル共は偶像活動をしたい。だが、エクスカリバーは、否定する者に襲撃されるかもしれないとみている。新然代である花瑠が守るだろうが心許ない。俺様が活動に協力すれば、後は影森が円滑に進むよう計らう。
「俺様が花瑠達の護衛をやろう」
「ほんとうですか?!」
「本当ですか?!」
「マジ」
協力が必要なアイドル共の驚き。
花瑠からは驚愕、リーダーからは感謝、灰汁が強いのからは嫌悪を感じる。
「安藤」
雅が俺様に近づき小声で話しかけてくる。
「否定する者に狙われているんですよ。彼女達を巻き込まないでください」
「最近襲われてないぞ」
「そうかもしれませんけど」
師弟故、一緒にいる時間が長いからな。言い返せないのが証明だ。
代行者もとい否定する者の作戦が分からぬ以上、罠に飛び込むつもりで動いた方がいい。
「よし。花瑠ちゃんと安藤君がいるから、守りはオッケーでしょ。じゃあ、後はお姉さんがイイ感じに上と事務所に話を通しておくから、安心してね☆」
「影森司令」
雅が影森の決定を覆そうとしているが無駄だ。元々、アイドル共の活動を容認するつもりだからな。
護衛に手を挙げたが、好きで協力するのではない。
芸能って奴は好かん。混沌と見せかけた秩序の垂れ流し、基準が曖昧で感性頼りで優劣が決まる芸事、色恋と虚飾が渦巻く、下らん世界だ。
影森がホログラフィーの鍵盤を嬉々と叩いて、手続きを進めている。
護衛つまりアイドル共の世話人。かなり面倒くさくて殺意が湧くものだと記憶している。影森め、俺様が芸能で苦労するところを陰でほくそ笑むつもりだな。
大量の面倒を差し引いてアイドル共の護衛をする理由。花瑠の観察、超能力もとい宇宙の定理を習得する手がかりを見つける為。
なるべく早くつかみたいところだ。




