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プロローグ おさらいとこれから

 かつて俺様は考えるだけで宇宙を創る事ができた。気が付けば力を失い、人間、厳密には()然代(タリア)なる人間よりも少し特異な能力を持った存在にまで弱体化してしまった。


 原因は世界を滅ぼすのが使命とのたまう存在、否定する者と大将である全知全能の否定者を滅ぼす時に宇宙を滅ぼして創り直したからだ。


 今は生き残った否定する者に対抗する組織エクスカリバーに所属している。そこで安藤道男と言う名前を貰い人間として学校にも通っている。



 修行するには相応しい広さと無駄を削いだ造りのXRトレーニングルームにいる。


 XRは疑似的に戦場を作り出す。

 試したが、カラクリで再現した幻。茶番に感じたからXRは使わず、広さと無機質さを活かして修行している。


 紺寄りの短めな髪、どちらかと言えば大人びた顔立ちの少女、雅が怒涛の勢いで突きを放ってくる。


 かわそうと思えばかわせるが、今は修行中だ。


 へその下、丹田に力を込めながら、雅の放つ攻撃を全て受け流す。受け流せない攻撃にも怯まず。

前へと進む。


 攻撃を受けても硬い鱗で弾き、突き進む龍とならん奥義。


 計羅討凄(けいらとうせい)(りゅう)古武術(こぶじゅつ)(せい)(りゅう)()(ろく)木星(もくせい)(りゅう)(りん)不退(ふたい)


 俺様はこことは違う別の世界で様々な武術を習得した。向こうでは覇道と呼んでおり、この名で大別している。


 計羅討凄流古武術はこの世界で浸透している空手や柔道とは違う。陰陽と言う占いにおける不吉を取り払わんとする目的でできた覇道だ。


 雅はこの覇道の全てを極めているわけではないが教える事ができる。だから師匠にした。


 俺様は計羅討凄流古武術の中にある四つの中分類、青龍、白虎、朱雀、玄武の中の青龍の技を学んでいる。


 防御を主体とした中分類、玄武の技に似ているが違うらしく、雅曰く相手の攻撃を受けながら攻撃を続ける捨て身の心得だと言っていた。


 拳を胸で受け、前へ進む。

 来ると分かる痛みを我慢し、俺様は前進し続ける。

 それを十五秒。


 打ち出した雅の拳が寸でのところで止まる。

 ピピピピピと終了を告げる音が鳴る。


「そこまで。終わりにしましょう」


「やっと終わったか。これも覇道とは言え、師匠のサンドバッグになるのは殺意が湧くな」


 六十パーセントくらいで加減しているし、急所を避けている事は分かるが、痛いものは痛いのだ。

 俺様にマゾヒズムの趣味は無い。

 興味や検証、攻防での駆け引きを除いて、攻撃は当たらぬに限る。


「そうですね。私としては堂々と安藤を殴れて良いのですが」


「サディストめ。どうりで俺様をバカ、変態、くたばれと罵れる訳だ」


「冗談です。ブラックジョークです。真に受けないでください。それに、安藤の方が色々と歪んでいると思います」


 冗談に聞こえんかったぞ。俺様の行動を雅は社会性と言う物差しで測るからな。覇道の師匠であっても、価値観が合わんのだ。

 とは言えエクスカリバーに入った頃は修道女くらいに堅物だったが、今は角が削れて遊びも多少ありマシになった。


「モチベーションを考えると、派生技の逆鱗龍苛(げきりんりゅうか)は次の次くらいにした方がいいですね」


 逆鱗龍苛。

 名前からして反撃の技だろう。反撃の技なら攻撃できるしいいか。そうでなかったら別の覇道の技で仕返しするとしよう。


「いや、逆鱗龍苛の習得を優先する」


「ダメです。今日の修行はこれで終わりです」


 そうだったな。

 いつもは四時間やるのに、雅が下らん約束を入れているせいで今日は半分の二時間だ。


 修行に熱を入れさせてズルズルと延長させるように仕向けるつもりが、忍耐を強いられる技だから俺様の根が負けてしまった。


「どんな技か見せてくれ。喰らってやってもいいぞ」


「ダメです。サンドバッグは嫌だと言いましたよね」


 雅め。計羅討凄流古武術特有の修行を終えた時に行う、無意味な場を清める儀式を始めようとしている。いつもは俺様にやらせる癖に。本当に終わらせる気だ。


「今日は能村さんの予定が空いているので、勉強を教えるのを優先します」


「勉強なぞノートを取ってれば、なんとかなるだろ」


「今の発言、学生のほとんどを敵に回したと思いますよ」


「それは雅も花瑠も入るのか」


 答えず。


 雅は「(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ぜん)(ぎょう)」と唱えながら地球から見た星の配置を描く様に歩く。面倒な歩き方で。


 右足で一歩、両足をそろえて一秒間静止。今度は左足で一歩、また両足をそろえて一秒間静止。腰は落とし、すり足である事。その上で効果の無い呪文を唱えなければならず、これを真面目にしないと修行を始める事も終わる事も雅は許さない。


 花瑠。エクスカリバーで否定する者と戦う者の一人。ほわほわ、ふにゅふにゅ、戦士からは程遠い。

 加えてアイドルと言う観衆に媚びを振りまく偶像でもあるらしい。


 戦いとは縁遠い存在に見えるが、花瑠は超能力を有している。

 超能力。これは人間達が勝手にそう名付けただけで、本来は脳、思考で宇宙の創造や破壊を操作する『宇宙の定理』が呼び名としては正しい。


 花瑠の使える宇宙の定理は一つだが日によって変わる。出力も安定していない。

 勉強と言う教育機関の基準を抜きにしても賢さを感じなかったが、宇宙の定理を使えると言う事は脳が発達している証拠。


 俺様は覇道を極めるだけでなく、宇宙の定理を再び使えるようになる必要がある。


 先の戦い。速さを否定(ペラペラと)する者リィズァ(口うるさい奴)。俺様が人間になる前は光速を超える速さと棘を伸ばすくらいだった。再び姿を見せた時は速度こそ音速止まりだったが、浴びたら動作を停滞させる光を放てるようになっていた。


 奴の能力にはエクスカリバーの装備の限定解除で対処できた。

 滅ぼした勝因は装備に付随していた通信機能を使って、宇宙の深淵で遊んでいる俺様の力を引き出せた事。


 覇道の使い手としては強くなった。これからも強くなる。


 それでも認めたくないが、否定する者の能力は覇道だけで対処できる奴ばかりではない。

 宇宙の定理が必要なのだ。


 花瑠を観察する必要がある。

 雅から計羅討凄流古武術を学ぶように宇宙の定理を学べればいいのだが、花瑠に同じ事を求めるのは難しい。それでも手がかりにはなる筈だ。


 ちょうど雅が場を清める為の儀式を終えた。


「雅、俺様も花瑠の勉強の場に同席しよう」


 俺様を見て訝しんでいるな。


「いったい、何を考えているんですか?」


「邪魔はせん。暇を潰すだけだ」


「私が能村さんに勉強を教えるところを見て、バカにしようなんて考えていませんよね?」


 ちと眉間にしわが寄っているな。


 粗を探してやろうと言う気持ちはある。それよりも、花瑠を観察したいのだ。無理やり居着く事もできるが、一悶着で時間を無駄にしたくはない。

 嘘でも協力すると言っておくか。


「いや、数学と科学ぐらいなら教えてやらん事もない」


 雅め。俺様をまだ睨んでいる。

 まぁ、値踏みしている様に目も動いているから許可は取れる可能性が高い。

 一押しするか。


「なんなら、俺様達が今やっている数学も教えてやろう」


 俺様がそう言うと、雅は睨むのをやめて一瞬嬉しそうにする。またすぐすまし顔に戻るが。


 雅は俺様がテストで学年十位以内に入っている事に腹を立てている。ただ、成績を高めたい向上心はあるからな。万が一でも可能性があるなら飛びつく筈だ。


「………わかりました。邪魔だけはしないでくださいね」


 よし飛びついた。

 師匠と言えど、性質が分かる以上、騙すのはわけないな。


「後で、ちゃんと教えてくださいね」


 念押す様に微笑むか。


「ああ」


 逆鱗龍苛の名前だけ出して学べなかった以上、有耶無耶にしてやるけどな。


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