第三章 雅の戦い後編
引き続き本城雅の視点で物語が進みます。
エレベーターシャフトを中心にタワーを浸食していた茨が消滅を始めて、辺りが光の粒でいっぱいになる。
「影森司令、タワーを浸食する否定する者を撃破」
「ごくろうさん。確認したよ。街も、動き出したね」
良かった。ひとまず停滞現象を食い止める事ができた。
「ぁあ、つかれたー。雅ちゃんの蹴りが強すぎて、バリア壊れるかと思いましたよ」
能村さんがこっちに戻ってくる。疲れてはいるけど、大丈夫そう。
「能村さん、ディートリヒさん、ありがとうございます。助けに戻れず、すいませんでした」
私は頭を下げた。
二人のおかげで地下送電道の壁を排除できたし、茨の柱の防御を突破してコアを破壊する事ができた。エイ型と茨の柱の攻撃が激しい中、助けられず負担をかけさせてしまった。もっと強くなっていれば、と思ってしまう。
「いいよ、いいよ。その分、エクセスの相手をしてたし、弱点だって見つけたんだから、謝る必要ない、ない」
能村さんに気を使わせてしまった。
「打ち上げの話をするにはまだ早いですよ」
私達の話にエクセスが割り込んできた。
エクスカリバーには代行者エクセスの身柄を確保したいと言う方針がある。目的は否定する者の情報。その為、隊員達は常にエクセスの確保も任務に含めて活動している。
私はエクセスを誤って撃破しないよう、破壊力ではなく吹き飛ばすのに長けた奥義を使用した。
「私はまだまだ健在です。計画的には赤字ですけど、ここで優先否定対象をまとめて否定すれば、損失は補填できます」
鞭を伸ばして戦闘態勢になっている。撃破しないように上手く無力化できるか。代行者を名乗るんだから有用な情報は持っている筈。できるだけ早く、否定する者との戦いなんて終わらせたい。
「エクセス、投降しなさい。三対一、数の不利は分かりますよね」
「私は否定する者。代行者エクセス。世界の総意に従い動くまでです」
説得は無駄。無駄だと分かっているけど、言わずにはいられなかった。エクセスは人じゃないけど、人の様に感じてしまう。
「ヘイよぉー、俺ッちもトークに混ぜてくれよ」
大声が響き渡る。上から猛スピードで右腕と左足だけが残った胴体が現れる。速さを否定する者リィズァ。
私達は事前にリィズァの声や姿を確認したら、なるべく分散する事に決めていた。
「悪ィ、悪ィ、ちょっと、ゆっくりしすぎてたわ。ちゃんエクが設計した仲間が否定されちゃっただろ。そいつを取り込んでたんだよ。いやぁ、おかげで超パワーアップしたゼ」
「それは良かったです。リィズァ様、ここにいる優先否定対象達が、リィズァ様による世界の否定を妨害しました。私と一緒に否定しましょう」
リィズァとエクセス。片方は手負いとは言え、同時に戦うなんて最悪な状況。
「ちゃんエクは帰りなよ」
「いえ、まだ戦えます」
まだまだ戦えるとエクセスが鞭を振り回して見せる。こう言うところが人間っぽく感じてしまう。
「ノー、ノー、ノー、分かってないなァ。昨日の俺ッちの活躍を見たろ。今日の俺ッちは、ぜっ、ゼっ、ゼッ、絶好調。俺ッちだけで全否定まちがいなし。ちゃんエクの使命は次の否定に備えてゆっくり休め。わかるゥ?」
「分かりました。リィズァ様」
エクセスがリィズァの命令に従い、空間を裂いて本拠地に帰っていった。
「リィズァが普通にホワイト上司でビックリなんですけど」
能村さんがリィズァに話しかけた。
「ちっ、ちっ、ちっ、ちがうなぁ。俺ッちだけでこの世界を否定したいんだよ」
武功を上げたい。リィズァがエクセスを帰した理由も人間的なものだった。例え姿が人間だとしても邪悪さはあいつの方が上に感じる。
「下らないですね」
「今、なんつッたァ」
私の一言にリィズァが怒、キレた。
「下らないから、下らないって言ったんです」
テレポートしてきたリィズァが殴りかかってくる。私は人間離れした右腕を捕まえ、体勢を崩して床に叩きつける。
「らぁッ」
起き上がって殴りかかってくる。リィズァ波を出す手の平に気を付けながら腕をつかみ、力を利用して体を振り回して床に叩きつける。
「ありえねェ、魔法か、いやそんなワケねェ」
また懲りずにリィズァが殴ってくる。
これもさっきと同じように体勢を崩して床に叩きつけた。蛇が獲物に絡みつき地面に倒す様を表した奥義、蛇絡牙崩・猪食。
計羅討凄流古武術には投げ技や組み技、関節技もあり、一部を除いて玄武に属している。
理由は玄武の尻尾の蛇。蛇は獲物に毒牙を突き立て、絡みついて絞め殺す。個体にもよるけど自分より大きな獣も倒してしまう。その様を取り入れた。
リィズァを中心に大きな魔法陣が浮かんだ。
「離れて」
ディートリヒさんに言われた通り、私は魔法陣から距離を取る為に飛び退いた。
巨大な水の球が現れ、リィズァを閉じ込めた。中は高い水圧がかかっているみたいで、体が押し潰されているように見える。
「怒らせないで。リィズァ怖かった」
「ごめんなさい。つい」
ディートリヒさんを怖がらせた結果になったけど、私は遊び感覚で世界を滅ぼそうとするリィズァを許せなかった。だから言ってしまった。
「チっくショウがぁぁぁッ」
リィズァが魔法を打ち破ったから私はすぐ飛び出した。
「止まってろよ」
鉛っぽい閃光。リィズァの手の平から生えた目玉が放つ力。それによって私は動けなくなってしまった。
「お前、マジめんどう」
ディートリヒさんが危ない。昨日みたいに好き放題殴られるのを食い止めたい。リィズァをなんとかしたいけど、指一本さえも動かせない。どうして、アップデートしたんじゃないの。
「オイオイ、ゆっくりすんのはいいけど、壁とかズルくね。ウラウラウラ」
能村さんが張ったバリアをリィズァが叩いているのが聞こえる。早く、早く、私は停滞する力を打ち破ろうと全身に力を入れる。動くんだ。絶対に。
足が前に動いた。指も動いて拳を握れる。
アップデートは嘘じゃなかった。安藤に助けられるのは、なんか癪だけど。
「おっと、こっちを忘れてたゼ」
「させない」
水の壁がリィズァの拳を止めている。
壁が無くなる。私は溜まっていたエネルギー弾をビームにしてリィズァに撃つ。
「アブねッ」
避けられて姿を消した。
リィズァの姿が目の前に現れた。
さっきのテレポートは来るって読めていたけど、今の薙ぎ払ってくる拳は咄嗟に腕で防ぐしかできない。
重い。昨日よりも威力が強くなっていると感じる。怯んでいる場合じゃない。私は受けてない方で突きを放ち、連携に下段を蹴る。
「そうだ。俺ッちも、いっちょためしてみるかぁー」
当たり前のように避けられてしまう。それよりも、リィズァの言葉に嫌な予感がする。
「みんな防御して」
私が言ったと同時にリィズァの姿が消えた。
私達から離れた所にリィズァが現れる。
体をねじらせて腕は剣を振るみたいに構えている。
「ッらぁ」
超速の居合切り。
右腕を薙ぎ払うのと同時に手の平から棘を伸ばして、私達をまとめて斬りつけてくる。
「ゃああっ」
ディートリヒさんが防御に間に合わなかった。私は軌道を読んでかわし、能村さんはバリアで防いでいた。
「ヨっしゃアアアアアア」
私は高速で移動するリィズァにエネルギー弾を撃ちまくる。でも当たらない。
ディートリヒさんがリィズァに殴り飛ばされる。吹っ飛んでも、すぐ追いつかれて追撃のパンチやキックを喰らわされる。
「俺ッち、オマエだーいっきらい。なんか言ってっけど、ナニ言ってっかわかんねーし」
私はディートリヒさんを助ける為に急いだ。エネルギー弾は撃たない。リィズァは短気で臆病、自分が不意を突く側だと思っているから、不意を突かれるのは苦手だと思う。
「魔法超ウゼー。けどよ、なる早でゆっくりさせてやっから安心しろよ」
私はリィズァとディートリヒさんの間に入るよう跳んだ。
首の無い体に拳を打つ。
「ンだテメー」
腕をつかまれた。空いた手でエネルギー弾を撃ったけど、私の体が振り回されてしまい、デタラメなところに飛んだ。
「まとめてポーイ」
投げ飛ばされた私はディートリヒさんにぶつかり、一緒に吹っ飛ばされてしまう。
失敗した。
動きたいけど、受け身を取れなかったから、思うように体を動かせない。
「はい、ストーップ」
私とディートリヒさんにリィズァ波の鉛色が襲う。
動けなくなった。でも力を入れれば、前に動こうとすれば、動ける。
「んじゃ、オヤスミー」
リィズァの手の平が見える。動くんだ、諦めたら死ぬ。次は棘を伸ばしてくる。ここでなんとかしなかったら、誰があいつを倒すの。
手の平の棘が私に向かって伸びてくる。
死にたくない。
指が動く。腕が動く。だから伸びてくる棘をつかんだ。威力を殺して致命傷を避ける。
「ぁあッ? じゃコイツでいいや」
棘が縮んだ。
ディートリヒさんの方に向かって伸ばした。
動いてと足に力を入れたけど動かせない。どうして、腕は動いたのに。
「ヨっし、これで魔法使いは否定できたな」
ピンク色のツインテールがリィズァの後ろからひょこっと見える。能村さんがバリアを展開して突撃して来る。
「はい、ドーン」
能村さんの突撃をリィズァが上に避けて足で踏みつける。
「ちんちくりん、さっきからそのバリアはなんだぁ?」
「バリアはバリアだもん」
「耐久テストしようぜ」
バリアを張っている能村さんにリィズァ波が浴びせられる。
「おーら、おらラララララララララ、今もゆっくりしてると思うけどよ、ララララララ」
バリアを張った状態で停滞させられている能村さんは、リィズァのおもちゃになってしまった。三百六十度、バリアに棘を打ちまくって、いつ壊れるか弄んでいる。
「んぬぅぅぅ」
「休もうぜ。そうやってがんばっても疲れるだけだって、シャシャシャシャシャ」
この前のディートリヒさんの水の盾がリィズァ波を受けた時、本人が思っているより長く維持する事ができていた。
能村さんはがんばって耐えているから、まだ維持できるとは思う。でも遅かれ早かれ、壊されてしまうのは目に見えている。
助けないと。足が動いた。遅いと怒りが湧いたけど、助けられるならそれでいい。
「まっ、て」
ディートリヒさんの方を見る。リィズァにかなり殴られてダメージを受けたし、無理はして欲しくない。
「魔法は後、一か二、気をつけて」
「ありがとう」
私はリィズァを見る。あいつは能村さんを弄んでいて隙がある。
「ヲン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」
右手で左手を覆って唱えた。陰陽術とは違うけど姿を消す簡易的な呪いをかける。
足音をなるべく消しながら助走し、床を強く踏み込んで一気に跳んだ。
朱雀飛翔でリィズァとの距離を詰めて、背中に強烈な跳び蹴りを喰らわせる。朱雀が空を飛んでいく様を表した奥義、火羅荘天脚。
とりあえず能村さんからリィズァを離す事ができて良かった。
「一番わけわかんねぇのが来たか」
「あなたの無駄口の方が訳分かんない」
「んだトォ」
殴りかかってくる。私がリィズァの右腕をつかもうとしたら、引っ込んでしまった。
「な~るほどぉ~、これがオマエの魔法の正体か~」
私の投げがリィズァに見切られた。武術の心得なんてまるで無いと思っていたのに。
「隙アリ、だゼッ」
調子づいたリィズァが拳と蹴りの連撃を放ってくる。私は回避と防御しつつ反撃を入れている。向こうも有効な一撃を入れさせてくれないから、長く感じる。
私はリィズァの拳を受け流し、腕をつかんで体勢を崩して床に叩きつける。
叩きつけた衝撃がしない。投げた手応えを感じない。
「二回目のビックリだ」
腕を振り回すリィズァの力業によって私は投げられてしまった。
床に叩きつける直前、リィズァは浮遊する事で衝撃を免れていた。躊躇して腕を離さなかった私が悪い。
「ゆっくりビーム」
あの鉛色を回避できなかった。早く停滞を解除しないと。私は全身を強張らせる。
「じゃ、今から『おろし』な」
怪物的な大きい手によって、私の体が床に押さえつけられる。停滞させられているから抵抗もできない。
「スリー、トゥー、ワン、ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ」
私はリィズァに引きずられる。
痛い。あああああああああ。
痛い。停滞させられても熱くて苦しい。抵抗したいけど、高速で引きずられているから力を入れづらい。
マグナ・ルズを装着しているから、すぐ背中等がズタズタに剥ける事はない。露出している頭も防御している状態だから悲惨な事にはなっていない。なっていないと思いたい。
「お次はカベー」
体が壁に叩きつけられる。押し付けられたまま動けない状態は続く。
「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ」
壁に引きずられる。
痛い。腕に力を入れないと、力を入れてエネルギー弾を撃たないと。
屈辱的だ。人で『おろし』をする悪趣味を倒したい。
「ズズズズ、ギャッ」
リィズァが引っ張られる。あいつの左足に水の縄が巻き付いている。ディートリヒさんの魔法に助けられた。
無駄にはしない。捕まってはいるけど腕に力が入る。私はエネルギー弾をリィズァに撃つ。
「ガッ」
拘束が弱まる。畳みかけるようにリィズァの腕を蹴る。
「ちくショー」
リィズァがテレポートした。自由になった私は落ちる。
「邪魔ァッッ」
「キャアアアアアアア」
超高速の飛び蹴りがバリアを破壊した。能村さんを踏みつけている。無事なの。
「ハズレかよー」
ふざけた事を言って、能村さんを酷い目に遭わせて、許さない。
能村さんはディートリヒさんを守る為にバリアを張っていた。リィズァは棘を伸ばす為に距離を取っている。
無駄にデカい腕を伸ばした。
「やめろ」
エネルギービームを撃つ。
「当たんネーヨーだ」
避けられてしまった。
不格好な着地だけど、足を動かさないと、次エネルギー弾を撃てるようになるまでに距離を詰めないと。
棘が伸びている。伸ばすな。
一発。棘にエネルギー弾を撃つ。
伸ばすな。間に合って。
棘がディートリヒさんを貫いた。
「ハハハハ、否定、否定、いっちょあがりィィィィィィ」
忌まわしい勝ちどきがうるさい。私のせいだけど。
「残るはオ・マ・エだけだな。がんばるなんて無駄だゼ。ゆっくりしなよ。仲間もゆっくりしてるんだ。俺ッちが「安らか」ッて奴をよ。プレゼントしてやるぜ」
あいつがこっちに来た。
「いいかぁ、無駄にがんばろうとすんなヨ。オマエは俺ッちに追いつけない。俺ッちは速さを否定する者リィズァ。無駄にガンバった人間二人みたいになりたくないだろ。ナぁ」
二人を嘲る声。
「うるさい」
絶対あいつを黙らせてやる。
「ゆっくりしな」
右手を見せた。手の平の目が私を見ている。停滞攻撃が襲いかかる。
自分の中心をイメージして力を入れる。マグナ・ルズから限界を超えてはいけないと、警告の苦痛が襲いかかる。
引きずられた時よりも痛い。
けど、それがなに。
邪魔をするな。私はそれを意地でねじ伏せる。
「烈」
戦勝の呪いを発すると共にリミッターを解除する。
あいつの伸ばした棘を避け、鳩尾を殴る。
「ぐァッ」
リィズァの情けない声。こんなんじゃ足りない。私は二人が受けた分の報いを受けさせてやろうと、殴り、蹴りまくる。
青い力は赤へと変わり、力がみなぎっている。出し惜しみした分、リミッターを解除していられる時間を一瞬たりとも無駄にはできない。
「させっかよォ」
テレポート。気付いた時には背中を蹴られた。怯んでいる私をリィズァ波で止めようとしてくる。
棘を伸ばしてくるから、私はバク宙で回避しカウンターに裏拳を放つ。
「ハァ、マジかよ」
「こっちの台詞」
私の裏拳をリィズァは僅かに体をずらす事で回避していた。
打撃の応酬になった。ダメージを受けているけど、喰らわしているから平気。
私とリィズァの速さは互角。差があるとしたらテレポートの有無や時間制限の有無。だとしても勝てばいいだけの話。
「オイオイ、なんでそんなにがんばんだよ。もっと早くガンバレばよかったんじゃネ?」
痛いところを突いてきた。解除後のリスクを恐れて出し惜しみした。能村さんとディートリヒさんが犠牲になったのは私のせいだ。
「カタキ討ちって奴か、そんな事になんの意味がある。否定する者にはないゼ。これは立派な使命だからよ。それに、ゆっくりしている奴はゆっくりしたまま。つまりオマエの速さは無意味。わかるカァ?」
あいつにだけは言われたくない。
「くたばれ」
リィズァがテレポートで逃げ出した。
「ハハハハハハハハハハ、オジョちゃんコチラ、てのなるほうへ」
逃げたなら追えばいい。私にはそれだけの速さがある。
「雅ちゃん、二人は生きているよ」
影森司令から通信が入る。本当なの。
「バイタル的にギリギリだけどね。勝たなきゃいけないのは一緒なんだけど、冷静に」
私はリィズァを追うのをやめた。テレポートで距離を取られて、無駄に消耗するなら止まった方がいいかもしれない。あいつは止まっていても殺しに来る筈。
「もっとゆっくりさせてやろうか」
突っ込んできたリィズァが手を床に着け、強烈な旋風となった蹴りを繰り出してくる。
大技だけど投げずに防御する。
「オッ、オッ、疲れたか、疲れたか、まぁしょうがネェよ。楽にしてやっからよ。ガードをやめようゼ。楽になるぞ」
調子に乗った連撃も防御に徹する。
リミッター解除を攻撃に回さず防御に使うのは贅沢な気もするけど、昨日よりも消耗が軽い。アップデートされているのが実感できる。
受けるダメージは玄武の奥義、剣槍流亀で最小限に抑えている。
「諦めろ」
リィズァの焦った突き。これをつかんで体ごと一気に床へと叩きつける。
「ハァッ?!」
倒したまま抑え込み、突きを放つ。龍の爪を表した奥義、龍爪。
手応えが無くなり姿が消えた。リィズァにテレポートを使わせた。
「ヘェーイッ」
後ろにリィズァが現れて私の後頭部を殴ってくる。
首を横に傾けて拳をかわし、腕をつかんで体勢を振り回すように崩して投げ飛ばす。大海に大渦を起こす玄武の様を表した奥義、旋武激流渦。
私は追い打ちにリィズァを殴りまくる。白虎が仇なすものを爪で何度も引き裂く様を表した奥義、白虎激爪連。
十。
十三。
十五。
十七。
十九。
二十発目を殴る前にリィズァがテレポートで逃げた。
「打ち止めダ」
リィズァの反撃の蹴り。私はそこにいない。
朱雀飛翔でリィズァが現れる場所よりも高く跳んでいた。
私は下にいるリィズァに連続で蹴りを放つ。空を舞う朱雀が艶やかだった様を表した奥義、朱雀炎艶舞。
「クソッ」
私がある程度蹴るとリィズァは姿を消した。
今度は正面から殴りかかってくる。それを横へと捌き、前に踏み込みリィズァの体に強烈な頭突き、武頭玄転朦をお見舞いする。
「イッデェ、いデェよぉ」
後退したリィズァが呻いている。安藤にも使ったこの技はリーチこそ短いけど、当たれば強烈なダメージと昏迷を与えられる。
隙だらけのリィズァの懐に掌底を叩き込んだ。気力を込めた渾身の一撃と同時にエネルギービームを撃つ。
激龍浄滅閃。
大きく吹き飛ばした。
「ぁア、ざけんなよ。ザケンナヨォォォォォォォォォォッッッッッッ」
リィズァはまだ生きている。昨日だったら撃破できていたかもしれない。
「オマエを否定してや」
とんでもない速さ。
「ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッッ!!」
今までよりもリィズァが速い。
私に近づかず翻弄する様に動き回り、右手から棘を伸ばしてくる。バリアを張っている能村さんを弄んだ時の超高速版。
舞う朱雀。
おもむくままに。
世を照らし。
煌びやかさに。
ただ息をのむ。
私は彩火雀麗舞で避け続けている。
時間はあまり残されていない。無駄にエネルギー弾は撃たず、あいつが私の範囲に入るまで辛抱する。
「チョコマカすんな。ゆっくりしろ」
しびれを切らしたリィズァがテレポートした。
大きな殺気が背後に現れる。
私はリミッター解除して出せる限界以上の速さと、隠密の体捌きでリィズァの背後に回り込んだ。
「ザしゅっ」
腕を振るとともに棘を伸ばす。たぶん私の残像をリィズァが居合切りした。
計羅討凄流古武術の中で殺しに特化した奥義。最も不吉で命をも落とす方位をそのまま技名にしている。
暗剣殺。
私は手刀を作り心臓を貫く。
腕が動かない。
背中に届かない。
どうして。
「ザ~ンネン」
私は見られていた。
リィズァ波を出す目玉が右手の平じゃなくて背中に生えている。
停滞に抗おうとしたけど力が入らない。それどころか力が抜けていく。
時間切れ。
「俺ッちは速さを否定する者リィズァ。オマエの速さを否定した」
あいつが私に右手を向けてきた。
「いや危なかったゼ。否定されるってオモッタけど、俺ッちはパワーアップしてるからよ」
右手に目玉が生えてきて私を見ている。悔しい。
「ッハッハッハッハッハ、ま、オマエはよくガンバッタよ」
リィズァの首元にある口が見下す様に笑っている。
くたばれ。
「おやすみ」
棘が伸びる。
力が入らない。
伸びてくる。
動いて。
私の胸を棘が貫いた。
ごめんなさい。
お読み頂きありがとうございます。次からは安藤道男の視点になります。




