第三章 雅の戦い前編
今回と次の話は俺様こと安藤道男から、この小説のキャラクター本城雅に視点が変わります。
19:22。人々や様々なものが動けなくなる停滞現象。発生原因であるリィズァを撃破する為、私達チーム・ガラハッドは地下送電道にいる。
送電道と言ってもケーブルの類はパネルで隠されている。薄暗いけど、人が入ってメンテナンスできるよう広めにできている。
私達は影森司令の指示通り、安藤がビルを出てから十分間の待機をしている。
タワーに向かう安藤がリィズァと会敵したら、停滞攻撃に抵抗できる私だけ現場に向かい合流。能村さんとディートリヒさんは地下送電道を進み、タワーを浸食する否定する者を攻撃。
待機中、私は食事をゼリーで済ませた。安藤のせいで疲れたけど、否定する者が現れたから疲れている場合じゃない。倒す必要がある。
「みっちー、ちゃんと歩けているでしょうか。カッチンコッチンに固まってないといいですけど」
安藤がマグナ・ルズのアップデートに知恵を出したと言う話。腹が立つくらい学力が高いけど、技術開発部に助言できる程あるなんて、影森司令のいつもの悪ふざけであってほしい。思いつきや猿知恵が偶然にも噛み合っただけ。
「雅ちゃん、みっちーのこと心配ですか?」
傍若無人を絵に描いたような安藤の心配なんかしていない。
計羅討凄流古武術を継承するなんて言ったけど、継承者は家を継ぐ、つまり家に入らなければいけない習わしがある。
私は安藤にそんな話していないし、本人は知らずに言っただけ。もし、家に入るとかの話が出たら、因習だし、従わなければいい。
安藤と結婚するなんて、そんなの絶対ありえない。私が計羅討凄流古武術から自由になる為の手段。道具。
「雅ちゃん、顔が赤くないですかー。やっぱり、みっちーと恋愛的な、そういうのがあったんでしょー」
能村さんが話すのは緊張を紛らわそうとしているから。チームメンバーで付き合いは長いけど、私の内面事情に関わる部分もあるし、詳細までは話したくない。
「アイドルをやめて記者になるんですか。それなら社会学系の大学をおすすめします」
「ウッ、やめませんよ。止まった世界をいつもの世界に変えて、明日の午後、バッチリ、ライブに出ます」
ちょっと言い過ぎたかなと思ったけど、大丈夫そう。まだ能村さんはメジャーになっていないみたいだけど、戦いの次の日にお仕事があるなんて芸能人は忙しい。
19:32。アラームが鳴る。エクスカリバーから支給されたスマートフォンには、影森司令からの着信がある。
「本城です」
「雅ちゃん、作戦通り出発で」
「わかりました」
十分の間に安藤が会敵しなかった場合、私達三人は地下送電道を進んでタワーに入り、否定する者とリィズァを撃破する。
後ろからディートリヒさんの呟きが聞こえてくる。能村さんはバリアを張れるので、一番前を歩く私の隣または少し後ろを歩いている。
「私達が着く頃には、みっちーがリィズァを倒していたら、超楽なんですけど、なったりしないかなー」
「集中してください」
「ごめんなさい」
私が能村さんに注意したところで、前から人じゃない足音が聞こえてくる。
「来ます」
「敵」
ディートリヒさんも気が付いた。
現れたのは一言で表すとクモ。足は八本じゃなくて五本で、体は倒れた三角錐。否定する者だから本物よりもかなり大きいし、生き物とは違う異次元の気持ち悪さをしている。
クモ型が五体。その内の三体は床、二体は本物みたいに壁に張り付いている。
スマートフォンにある専用の物理ボタンを押してマグナ・ルズを起動。
着ている服が消滅と同時に戦う為の鎧へと再構築される。全身は黒で覆われ、腕や足、体の各部分を青いエネルギーが流れている。
私の青、ディートリヒさんの緑、能村さんのピンクが薄暗い送電道を照らす。
「魔法で援護を、能村さんはバリアでディートリヒさんを守って」
指示を出しながら距離を詰め、拳をクモ型の体に向かって打つ。
三角錐がパックリ開いた。
中は口になっていて、刺々したおろし金になっている。噛みつかれたら最悪手を失うだろう。
寸止めの技術を使って腕を引っ込め、拳を開いてエネルギー弾を口の中に向かって放つ。
クモ型が後ろに下がってエネルギー弾を避けた。
私の横をディートリヒさんの魔法でできた水の球が通り、クモ型に当たる。怯んでいるところに追加で二発命中。
一体は消滅しても、床を進んでくる二体と壁の二体が残っている。
「ディートリヒさん、壁のをお願い。能村さんは敵をよく見て」
私はエネルギー弾で床を進むクモ型を牽制する。当たればいいけど、害虫の様な不規則な動きだから簡単じゃない。
クモ型が口を開き飛びかかってくる。噛みつかれるよりも口に足を突っ込み吹き飛ばす。牽制して遅らせた一体にぶつかった。
強力な水流が壁を進む一体を消滅させた。でも、もう一体は対応できない。
「えいっ」
電気が流れる様な空気をビリビリさせる音。能村さんがバリアを張ってクモ型にダメージを与えた。
後ろは大丈夫。
残った一体は引き付けて、エネルギーを溜めて放つエネルギービームで消滅させた。
私達はタワーを目指して進んだ。道のりは長く、近づけば近づく程、否定する者の数が増えていく。
クモ型に加え、刃物状になった腕を左右に三本ずつ生やした人型、機銃っぽいものを背負ったナメクジ型。よく私達が戦う否定する者。
攻撃方法を知っているからと言っても油断はできない。
狭めの通路で複数の人型が攻めてきたら、刃を捌くのに苦労させられる。ナメクジ型は機動力こそ無いけど、攻撃しにくい所に張り付いてエネルギー弾を撃ってくる。しかも割と狙いが正確。
それでも私達は確実に前へ進んでいる。
能村さんは明るくて、さっきの質問攻めはしつこかったけど、チームいや東京支部の空気を良くしてくれるアイドルだと思う。
マグナ・ルズで強化しているけど、日替わりの超能力にきちんと対応している。
さっきもたくさんのナメクジ型の一斉射撃を防いでくれた。気配りもできるから、私やディートリヒさんの死角をカバーしてくれる。
ディートリヒさんは話しかけづらくて、いつも自分の殻に閉じこもっているけど、否定する者との戦いの時は頼りになる。
水の魔法は発動するのに時間がかかるけど、変幻自在。私と能村さんが苦手な中距離や遠距離、複数体への攻撃をしてくれる。防御や回復までできるから本当に心強い。
私は確実に一体を撃破するよう努めている。
エネルギー弾や溜めて放つエネルギービームはあくまでサブ。メインの接近戦で確実に一体を撃破すれば、二人の負担を減らせる。
タワーに近づいてくると、送電道の床や壁、天井にタワーを浸食する茨が伸びていた。
「影森司令、問題発生です。タワーを浸食する茨によって進路が封鎖。排除します」
「分かった。もし、五分以上かかりそうだったら、工作班を送るよ」
茨とは言っても、あくまで形状が茨なだけで人間の腕くらいの太さをしているし、植物とは似ても似つかぬ不気味な錫色をしている。私達の進行や戦闘を妨害するように、茨の一部をしならせて攻撃してくる。
茨の一本や二本なら魔法やバリア、エネルギー弾で対処できるけど、今私達の進行を封鎖している茨は、寄り集まってできた壁だった。
「うーん」
茨の壁に突きや蹴りを連撃する技を喰らわせた。一人通れるくらいの穴は空いたけど、すぐに塞がってしまった。
進むには、ずっと強力な攻撃し続ける必要がある。でも途中で疲れてしまったら、壁となって塞いでくる茨に潰されてしまうので無謀はできない。
案が無いわけではないけど、二人に負担がかかってしまう。私のリミッター解除はリィズァと戦うまでは取っておきたい。でも、こんなところで時間はかけられない。
「はーい、雅ちゃんが壁に穴を空けて、私がスキマを通ってバリアを張って、オリーちゃんの魔法で押しちゃうってのはどうですか」
「賛成。いいかも」
能村さんの提案にディートリヒさんも前向き。バリアと魔法でどれだけ消耗するか分からないけど、立ち止まってもいられない。
「分かりました。私が入り口を確保します」
これから大技を放つ。肩の力を抜いてリラックスしながら深呼吸をする。
私は静かで力強い白虎の様な構え。虎踞ノ(の)構えから一気に床を踏み込み、茨の壁に肩や肘、体側を使った体当たり。虎颪ノ(の)激鎚。
衝撃を与えた茨の壁に突きと蹴りをたくさん打ち込む。白虎が暴れる様を表した奥義、烈虎苛爪撃。
一人通れるくらいの穴が空いたから、攻撃をやめてすぐ能村さんに入ってもらう。
「えぇいッ」
能村さんの張ったバリアが壁になろうと塞がる茨を押しやる。
「お願いします」
「おしてー」
私達の合図に答えたディートリヒさんが、青い魔法陣を宙に浮かべる。私が空けた穴くらいの大きな魔法陣から水が激流となって溢れ出す。
溢れ出した激流がバリアを張った能村さんを押しこむ。
私はディートリヒさんの側で状況を見つつ警戒する。激流の維持は厳しそうだけど、勢いは衰えていない。
一番大変なのは能村さん。茨を押しのけ、押し流す激流に耐える程の強固なバリアを維持しないとならない。私達から遠ざかるし、何が待ち受けているか分からない。
「一階に行けそうなとこに着いたよ」
能村さんから通信が入ると、ディートリヒさんが魔法をやめた。二人から疲労が伝わってくる。
進まないと。茨が塞がろうと蠢いているのが分かる。
「行きましょう。ディートリヒさん」
「ええ………」
「できるだけ急いでよ。ゴールはなんとか確保するから」
私はなるべくディートリヒさんに合わせて進んだ。「おいてかないで」や「ごめんなさい」と呟く力はあるけど速くはない。妨害してくる茨にも対応しないといけないから、先に着いている能村さんを待たせてしまった。
私達は体力の回復を優先して、ゆっくりとタワー内部を進んだ。
施設内は、茨等の否定する者独特の質感によって浸食されていた。一度だけど、タワーに行った事があるから、今の惨状がより許せなかった。
目標地点は一階中央のエレベーターホール。解析部は、そこにリィズァ波を増幅させる否定する者がいると見ている。
単独行動をしている安藤が、リィズァと会敵したという連絡は来ていない。
つまり私達は、エクセスと配下の否定する者達、リィズァ波を増幅させる存在、リィズァと戦わなければいけなくなる。
気が重い。それでも、私は否定する者と戦うと誓った。戦いに勝って、本来あるべき日常を過ごす。その一歩。
一階中央エレベーターホールに入った。私が知っているエレベーターホールよりも広大になっていて、天井も高くなっている。
タワーの中央部分にあるエレベーターシャフトは、錫色の茨が集まってできた巨大な柱に変貌していた。上の部分は太く膨らんでいて、きっと茨の本体か、リィズァそのものに関係のあるものが隠されているのだと思う。
「優先否定対象達。これはリィズァ様からの慈悲です」
見上げると、薄い円盤のような物の上に乗った人型がいる。
エクセス。軍服を真似た三角帽やマントを身に着けた人間みたいな姿をしているけど、肌は赤銅色で瞳は金色、髪は青白い等、人間とは大きく異なっている。
「大人しくゆっくりしていれば、苦しまずに否定されます。なので、ここから回れ右してお家に帰ってください」
彼女、声や姿が女性っぽいから。彼女は独特な言い回しをするけど、否定する者の実質的な指揮官。人類、新然代にとっての脅威。
「帰るのはそっちですよ。エクセス。止まったことないから慈悲とか言えるんですよ。動きたくても動けないって、すっごい、イライラするんですよ」
能村さんの言う通り。リィズァ波によって止められると、動きたくても動けず、言葉を発する事もできない。なのに、気持ちだけは動いている。もどかしさは尋常じゃない。
「一番の解決策は諦める事です。さぁ、ゆっくりしましょう」
笑ったエクセスのギザギザした歯が見える。
「諦めません」
すぐ動けるよう私は構えた。
「たった三人で、私達否定する者に勝てるとでも」
エクセスの上や周囲を飛び回るエイ、羽と尻尾の生えた円盤がエイに見えるからエイ型。それが九匹。茨の柱を壊すのが、より一筋縄ではいかなさそうなのが分かった。
「邪魔」
私達の前に大きな青い魔法陣が浮かぶと、水の激流が現れ、エクセスやエイ型を襲う。遅れた一体を除いて、ほとんど回避されてしまったけど、巨大な茨の柱に命中する。
茨の柱は健在。ディートリヒさんの強力な魔法にも耐えるとなると、破壊する方法を考えないとならない。
「ステージ3。ディッズル達、優先否定対象、特に水使いを否定してください」
飛び回る全てのエイ型がエクセスの指揮に従いビームを撃ってくる。
「地下と同じ戦い方で対応します」
私達はフォーメーションを組んだ。立ち位置は私が先頭で、能村さんが真ん中、ディートリヒさんが一番後ろ。
降ってくるビームの集中砲火。だいたいは外れるか、ディートリヒさんに当たるとしても、能村さんのバリアが防いでくれる。私に当たったとしても、多少の攻撃なら耐えられる。
私はとにかくエイ型にエネルギー弾を撃って、攻撃させないように努める。
戦いはこちらの方が有利だと、エクセスは浮遊する円盤に乗って高みの見物をしている。
私の目の前に大きな魔法陣が浮かび、たくさんの水の球が現れ一斉に飛んだ。
「回避」
ディートリヒさんの魔法の方がエクセスの指示よりも早い。面になって飛んだ水の球が複数のエイ型を撃破する。
「バリエーションBを実行」
二体のエイ型が私達に尻尾を向けると、左右の翼が捻じれて円錐状に変形。ドリルの様に高速回転しながら突進してくる。
「私が防ぐ」
「手出し無用」
バリアの防御力ならエイ型の厄介な攻撃を防ぐ事はできる。でも能村さんにばかり負担はかけられない。
高速回転するエイ型が迫ってくる。私は腰を落として、玄武の様にしっかり防御に備えた。肘を使ってドリルの先端をいなして軌道を逸らす。玄武の技である鉄甲鉄亀で二体の突進を弾いた。
鞭。私の手にエクセスの武器が絡まる。まずい。
私は強制的に浮かされ、大きく吹き飛ばされる。二人と分断させられてしまった。
ダメージ自体は平気。それよりも早く二人のところに戻らないと。でも、円盤に乗ったエクセスが私の前に立ちはだかる。
「これより先、私が相手します」
私は初手にエネルギー弾を撃つ。エクセスの鞭に切られた。
私を切り刻もうと振るってくる鞭。かわすか弾くかできるけど、エクセスに近づけない。
エネルギー弾とビームは直線的だから回避される恐れがある。跳んで距離を詰めて攻撃するのは、円盤があるから逃げられる可能性が高い。
「降伏しなさい。楽に否定しますよ。特級否定対象不在、いたとしても我々否定する者の優勢は変わらず。使命を全うできる可能性は百パーセント」
「根拠の無い数字、無駄口。リィズァが感染ったの」
「根拠はあります」
鞭とは違う大きな風切り音。気付いたけど、死角から太い茨が殴りかかってくる。
後退してやり過ごす。巨大な茨の柱の防衛、攻撃、どうでもいい。直撃したら、マグナ・ルズを身に着けていても、かなりのダメージを負うのは間違いない。
「キャーッ」
能村さんのバリアが壊された。
四本の茨による殴打のせい。防御が壊されても、ディートリヒさんがすかさず水で作った盾で凌いでいる。エイ型だってまだ残っている。ただでさえじり貧なのに、このままだと二人が。
「どうしたんですか? まさか、水使いとバリアが気になって上手く戦えないんですか?」
私も状況は悪い。茨が五本とエクセスの鞭が襲ってくる。回避に徹しているけど、攻め手にあぐねる。
薙ぎ払う茨の上に乗り走る。私を落とそうとグネグネ動くけど、日頃の修行のおかげでバランス感覚を養っているから、どうにか走り続けられる。
襲ってくる茨と鞭。攻撃が激しくてなかなか二人と合流できない。
赤い光が茨の柱の上の方から見える。私はそこにエネルギービームを撃つ。
エクセスがビームに向かって鞭を伸ばす。私が乗っている茨と更に二本が引っ込んだ。
引っ込むのが速いから落ちる事を選んだ。私の撃ったビームは茨に防がれた。
もしかして、今までは茨が集まって防御していたけど、攻撃に回ると防御が薄くなって、上の方に隠されたコアみたいなものが露出するんだと思う。
「ナイス、ビーム。エレベーターシャフトの上の方、リィズァ波を増幅する奴のコアで間違いないよ」
影森司令からの通信で確信になった。問題は攻撃させて防御を薄くさせる事ができるか。
鞭が襲ってくる。攻撃の激しさが増している。たぶん茨の柱の弱点を知られたから焦っているんだと思う。
私の肩口から胴体を切り裂こうとする鞭。この一撃をつかむ。
安藤はエクセスの鞭を素手でつかんでいたけど、マグナ・ルズがあっても手が痛い。でも大丈夫。エクセスの不意を突いた今、一気に引っ張る。
エクセスの腹部に強烈な膝蹴り、羅楯甲打を喰らわせる。
「ッはぁ」
エクセスの乗っていた円盤が、私を斬り裂こうと高速回転しながら迫ってくる。だから追撃せず後退した。
更に茨の一撃が私とエクセスを分断させる。
茨が上に引っ込み、私とエクセスは体勢を立て直していた。
私は鞭による縦横無尽の攻撃をかいくぐりながら、回避されるのを承知でエネルギー弾を撃つ。
エクセスは円盤に頼って避けつつ後退した。私は構わず距離を詰める。次の動きはたぶん。
「しつこい」
「逃がさない」
私は上へ逃げるエクセスに合わせて、床を蹴って跳んだ。
私の身体能力にマグナ・ルズの強化があれば、飛んで逃げるエクセスの円盤をつかまえられる。
退避したエクセスに構わず、私は主人の所に戻ろうとする円盤を力ずくで登るようにしながら、膝蹴りを叩き込んだ。
グニャッと動かなくなったそれをサッカーボールみたいに蹴り飛ばす。
当たった。私はすぐエクセスを追い詰めようと走る。
私を殺そうと槍の様に伸びる鞭。半身でかわして突き進み。エクセスの懐、そこに掌底を叩きこんだ。青龍の咆哮を表した奥義、檄龍咆哮掌。
エクセスは壁の方で倒れている。
状況を確認する。
能村さんがバリアを張って叩きつけて攻撃する茨を防ぎ、ディートリヒさんは魔法の準備をしている。エイ型は一体も飛んでいないから、私がエクセスの相手をしている間に撃破したんだ。
青い魔法陣が宙に浮かび、水が激流となって溢れ出す。攻撃に回っていた茨を何本か引きちぎり、防御ごとコアを破壊しようとしている。
水の勢いは次第に弱まっていき、露と消えてしまう。よく見ると、防いでいた茨からは赤い光が漏れている。あと一押し、強烈なのを叩きこめば防御を崩す事ができる。
「能村さん、バリアを張ってください。私があの弱っているところに蹴り飛ばします」
「おっ、オッケー」
安藤みたいな作戦だけど、私のエネルギービームでは火力不足。持続的で強いダメージを与えられる方法は、能村さんのバリアしか思いつかない。
能村さんが宙を浮いてバリアを張っている。マグナ・ルズで強化した超能力により、ほんの少しの間、宙に浮かぶ事ができる。
「優しくしてね」
「ごめんなさい」
私は能村さんの張ったバリアをぶっ壊すつもりで蹴った。虎剛嵐衝脚、乗せられるだけの力を乗せて放つ強烈な蹴り。こうでもしないと、茨の柱の上部には届かない。
バリアを張った能村さんが防御の薄くなったところにぶつかった。
押し返す力と防ごうとする力がバチバチ拮抗している。がんばって能村さん。
赤い光と悲鳴。人の様な、怨霊とかそういう人ならざる者だった。能村さんが茨の柱の防御を壊してくれた。
赤く光るコアが露出している。すかさずエネルギービームを撃つ。
ディートリヒさんも私と同じ事を考えていたようで、水の槍を放っていた。
二つの攻撃がコアに命中し、さっきよりも激しい閃光とうるさい悲鳴が轟く。




