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俺様は世界を創れるんだが、人間にまで弱体化した  作者: Oっ3
人間になった俺様、黎明編
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第三章 前哨戦

 俺様はエクスカリバーの建物を出た。

 何の変哲もない夜の街並みだ。呼吸もできるし、速い奴の発する電波によって停滞しているとは思えん。


 纏っている黒い装甲を流れる力は赤く錆びている。時折ぼんやりと光るのは奴の発する電波に抵抗している証拠だ。


 走った。停滞させられる世界の中でも体が軽い。


 いくつかビルがある中で、手頃な五階建てを見つけた。


 跳ぶぞ。


 コンクリートの地面を思いっきり蹴り、一気に跳んだ。


 窓が過ぎ去るのが早い。柵も余裕で越えた。屋上の床が少し小さいな。覇道の奥義を使ったから高く跳び過ぎた。

 が、まぁいい。


「リィィズァァッッ!! 俺様はここだ。かかってこい」


 タワーに向かって大声で叫んだ。


 届くか届かないかはどうでもいい。俺様の存在を奴に知らしめる事ができればよい。


 おかしい。


 何度か叫んだが、反応が無い。今の俺様では、五キロ以上先の人間に大声を出しても無意味なのは分かっている。

 だが、否定する者は存在の感知の仕方が特殊だ。位置を攪乱するデバイスを持っていても不意打ちを受けるくらいには。


 どうやら速い奴は俺様を殺すのではなく、世界を停滞させる事を選んだな。

 影森の計算通り世界を止める事ができたのならば、最終的に宇宙は熱死。つまり否定する者の本懐である世界の滅亡を成し遂げられる。


「安藤君、安藤君」


 影森の声が聞こえてくる。テレパシーだな。それに俺様の視界の隅に動く波が映っている。


「どうした、ナイア」


「ナ、ディ、ア。量子テレポート通信を使っているんだから、無駄口禁止」


 俺様が纏う黒い力と影森がいる場所には今、量子的な繋がりがあるようだ。

 この状態なら情報を瞬間移動させる事ができる。つまり停滞する世界でも時間的なズレが無くなる。エネルギーの消費も大きいだろうから多用できないのが難点だな。

「用は?」


「向かって欲しいところがあるんだよね」


「タワーではないのか?」


「カメラに否定する者が映っていたんだよね。もういないかもしんないけど、そこに向かってちょうだい」


 量子テレポート通信以外の情報伝達手段は時間的なズレが大きく生じる。この街を見るカメラが動く物を捉えたとしても、像が遅れに遅れて影森の所に伝わってくる。無駄足になるだろうが、速い奴が来るまでの暇潰しに行ってみるか。



 影森に行けと言われた場所に着いた。ビル街と商店街の間の通りだな。停滞させられている人間達の中に一人だけ、首や腰椎が捻じれて死んでいる者がいる。


 強い力で殴り飛ばされて腰椎が捻じれ、吹き飛ばされて漂っているところを更に殴られて頭蓋の一部が陥没、衝撃で首が折れたってところだな。


 後方から殺気が襲いかかってくる。半歩位置をずらして飛び蹴りを回避し、がら空きになっている胴に肘鉄を喰らわす。


 起こさぬよう百叩きするくらい踏みつけ、最後にかかと落としで雑魚の胴体を両断。光る粒子となって消滅を始めた。


 水銀色の身体は左右に腕があり、太い足一本で支えている。首から上はなく、首元のみ。


「リィズァの劣化コピーって感じだね」


 影森の言う事に受け答えするつもりはないが、そうだな。停滞する世界に適応した否定する者なのだろう。


 奴め。俺様に模造品にも劣る雑魚を送りつけやがって。


 地面を跳ねる速い奴の劣化が二体。俺様に近づいてくる。

 不意打ちの次は二対一か。


 一体が殴りかかってくる。避けず、あえて腕で受け流してみる。黒い力で守っているから問題無いが、かなり重いな。一撃で人間の骨を折っただけの事はある。


 反撃に脇腹の辺りを殴る。


 平気そうだな。黒い力で強化しているし、奴との戦いを見込んで、力を温存しようと加減してしまった。


 向こうの反撃を避けると、手を出してこなかった劣化が宙で回転しながら蹴りを振り下ろしてくる。


 後退してやり過ごす。容易く舗装を陥没させる強力な蹴りだな。


 水銀色の拳の連撃が襲いかかる。これは避けるか、防御するしかないな。その上、もう一体が俺様の背後を取ってくる。

 挟み撃ちで襲ってくる拳。狭い中を回避し、当たったとしても最小限に抑える。


 同士討ちになりそうだが、奴らは連携が取れている。その上、無駄に膝の可動域は広く、体幹も優れているから、様々な角度に反れる事で直撃しないようにしている。


 俺様は攻撃の隙間を縫って脱し、反撃に転ばそうと劣化の足を蹴る。

 転ばぬか。太い足は見かけ倒しではないな。


 後退する為に俺様は地面を蹴って跳んだ。


 来たか。俺様を逃がすまいと劣化コピー共が距離を詰めてくる。


 覇道(はどう)森羅(しんら)一体流(いったいりゅう)(らい)(こう)終奏譴(ついそうけん)奥義(おうぎ)閃迅(せんじん)


 雷の如く速い突きでコピーの腹部を貫く。


 覇道(はどう)(じゅう)操流(そうりゅう)孤高(ここう)(たか)奥義(おうぎ)陰鷹暗爪撃(いんようあんそうげき)


 わざと背後を見せて誘い込む。殴りかかってきたコピーを後ろ回し蹴りで屠る。爪を隠し、隙を見せて獲物を狩る技だ。


 否定する者はいない。五次元先から襲撃してくる気配もない。影森に何か情報は無いかと聞きたいが、どうやって聞けばいい。

 また俺様の視界の隅に動く波が出てきた。発信できているのか。


「ナイア」


「なぁ~にぃ」


 気の抜ける受け答えだな。


「次、商店街の方に行って」


 無駄口は無しか。急いで商店街の方に向かった。あそこは人間が多いからな。

 本来、弱き者は死ぬのだ。とは言え師匠もとい雅の守りたいに沿っておくか。それに、異物である否定する者が世界を害するのは気に入らん。



 着いた。商店街の入り口の方、財布から紙幣を出している最中の女がいた。微かに手が動いているな。

 その女を殺そうと殴りかかるコピーに向かって、俺様はおもいっきりカボチャを投げる。


 不意打ちになったな。怯んでいる隙に距離を詰め、強めの拳を三発入れ、膝蹴りでトドメを刺した。


 あの劣化は停滞する世界で微かにでも動く生物を殺すようだ。


 一体。俺様に気付き、飛び跳ねて近づいてくる。

 牽制に荷物の入ったカゴを投げる。


 俺様の黒い力は雅の様に光弾やビームを撃てるのだが、錬金術師に削除させた。その代わり攻撃力や防御力、運動機能の向上に特化させた。


 劣化の周りには人間が多い。しかも、デバイスをいじろうと指を緩慢に動かしているのが一人いる。このままでは確実に一人殺され、その周りも巻き添えを食うだろう。


 覇道(はどう)(じゅう)操流(そうりゅう)(ふん)(げき)せし(ぞう)奥義(おうぎ)怒踏印(どとういん)


 俺様は大勢の中心に飛び込んだ。象が地面に脚を振り下ろして起きる衝撃。周囲にある人や物は勢いよく吹き飛んだ。


「ちょっ?! 安藤君。マズイよ。やり過ぎ。市民がドーンって吹っ飛んでる」


 文句を言うな、影森。停滞する世界でまともに動けるのは俺様と劣化、速い奴くらいなものだ。どかすなら力業しかあるまい。


 漂っている看板をつかんで、体勢を立て直そうとしている劣化に叩きつける。

 三回くらいで壊れたが、追い打ちに拳で腹を突き、回し蹴りで倒れた。


 周りにある店に吹っ飛んだ人間は怪我するだろうな。死ぬよりマシだ。屋根の方に吹っ飛んだ人間は落下するまで時間がかかる。後で地上に下ろしてやろう。


 三百メートル先。劣化が二体。俺様は走る。


 向こうも気付いたか。速い奴もそうだが、どんな感覚器官をしているのだ。

 劣化共が腕を広げたぞ。体を回転させた。グルグル、回転が速くなっていく。竜巻にでもなったつもりか。


 いや、まずい。動けない人間を巻き込むぞ。しかも、さっきみたいに固まっていない。つくづく面倒だな。


 覇道(はどう)(じゅう)操流(そうりゅう)()()鍬形(くわがた)奥義(おうぎ)修羅三千投(しゅらさんぜんなげ)


 停滞する世界で対象を大きく吹き飛ばす打撃をすれば、さっきやった衝撃による吹き飛ばしよりも、死ぬ可能性が格段に高くなる。


 俺様は動けない人間を次々と投げ飛ばした。開いている店の入り口、天井の方、後ろ。劣化から遠ざかればどこでもよい。


「ハァ」


 黒い力あるとは言え、一息の内に六人を投げ飛ばすのはくたびれる。

 だから、竜巻の如く回転する劣化の体当たりをもろに受ける。


「グォッ」


 吹っ飛ばされたところにもう一つの竜巻が俺様を襲う。

 痛かったが負傷していない。このままだと天井にぶつかるな。


 天井か。


 俺様は体勢を操り覇道の奥義で天井を蹴り、竜巻となった劣化共に向かって跳んだ。


 覇道(はどう)森羅(しんら)一体流(いったいりゅう)旋風(つむじ)()(がま)奥義・()(らん)(どう)


 俺様は連続で回し蹴りをする。向こうが竜巻なら黒い力を纏った俺様は黒い竜巻だ。


 蹴りが劣化コピーの腕を引き裂く。次は胴体。存在は光る粒となって消えた。

 もう一体も同じだ。


 商店街での戦いが終わり。俺様は吹き飛ばした人間達を怪我しない位置に調整した。面倒な上に先を急ぎたかったが、人を守らんとする雅の弟子である以上、義理は通してやろう。



 商店街を出た後、影森から高校の周辺や住宅街、通りにも劣化コピーがいると聞いた。初めて見た時から商店街まで戦った分を合わせて十二体倒した。


 死者をゼロにはできなかった。


 今、停滞する世界で戦えるのは俺様ただ一人。劣化コピーの数は六体、それが分散している。微かに動いているつまり殺される可能性が高い人間は、二十人に一人くらいと意外に多い。つまり守り切れん。


 十二体目の劣化コピーを倒したところで、停滞していた車が動き出した。危うく轢かれそうになったが、そこは跳んで避けた。

 流れている赤い力が光っていない。


「安藤君。リィズァ波が止まったけど、三人がリィズァとエンゲージ」


 俺様は急いでタワーに向かった。

 最短経路を選び、黒い力による身体能力向上を以てしても、着くのに時間がかかってしまった。


 タワーを浸食していた否定する者の茨は消滅していた。三人が速い奴の発する電波を増幅する器官を壊したのが分かる。


 中に入った。建物は浸食による影響であちこちボロボロになっている。

 広い場所に出た。戦うならここしかない。


 オリヴィアと花瑠が倒れていた。黒い力が消えているとは、かなりの負傷だな。


 雅。


 雅の心臓が水銀色の棘に刺し貫かれていた。



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